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目次

概要

Ver. 5.0

C# はこれまでも一貫して、「言語自体(コンパイラー)に多くのことをさせ過ぎない」、 「可能な限りフレームワーク側(クラス ライブラリ側)に実装を任せる」という方針で機能追加を行っています。 例えば、foreach や LINQ の実装がその例ですが、以下のように、コンパイラーの仕事はメソッド呼び出しへの変換になります。

  • foreach」は、enumrable/enumerator パターンに沿って実装されたクラスなら何でも列挙可能。

    • 単純に、GetEnumerator メソッドや MoveNext, Current などの呼び出しに置き換えられる。
  • LINQ「クエリ式」は、Select や Where という名前のメソッドを持っていれば何でも問い合わせ可能。

非同期メソッドも同様の方針を取っていて、 本項で説明するようなパターンに沿ったクラスなら、なんでも await の対象にできます。

サンプル

Awaitable パターン

await の対象にできるのは、 以下のような Awaitable パターンを実装したクラスです。 (インターフェイスなどの実装も不要で、いわゆる「ダックタイピング」的。)

// 同名のメソッドを持っていれば型は問わない。
class Awatable
{
    public Awaiter GetAwaiter() { }
}

// 同上、同名のメソッドを持っていれば型は問わない。
struct Awaiter
{
    public bool IsCompleted { get; }
    public void OnCompleted(Action continuation) { }
    public T GetResult() { }
}

await 可能な型は、上記の Awaitable クラスのように、Awaiter を返す GetAwaiter メソッド(あるいは拡張メソッドでも OK)を持つ必要があります。 Awaiter は、以下のようなプロパティ/メソッドを持つ必要があります。

  • bool IsCompleted プロパティ

    • タスクが完了していれば true を返します。 この場合、後述のOnCompletedメソッドで「継続」呼び出しするのではなく、 即座に続きの処理を行います。
  • void OnCompleted メソッド

    • タスクが未完(IsCompletedが false)な場合、 引数で与えた continuation を「継続」登録(例えば Task<T>.ContinueWith に渡す)します。
  • T GetResult()

    • タスクの結果を取り出します。

    • 非同期処理の結果が戻り値を持つ場合 (例えば、 タスクがいわゆる「先物」(ジェネリック版の Task<T> など)の場合)、 結果の値を返します。

    • 非同期処理の結果が戻り値なし(void)の場合、 GetResult メソッドの戻り値も void で、 単にタスクの完了を待ちます。

    • タスク内で例外が発生していた場合、GetResult でその例外を受け取れます(スレッド間の例外の伝搬)。

Task クラスなどに直接 IsCompleted/OnCompleted/GetRusult を持たせるのではなく、 GetAwaiter を挟むことで拡張性を持たせています。 GetAwaiter は拡張メソッドでもいいので、独自実装で挙動を変えるということもしやすくなっています。

サンプル

(参考: サンプルの AwaiterPatternSample プロジェクト。)

実装例を挙げてみましょう。 せっかくの非同期呼び出しを同期化(処理が終わるまでブロッキング)するという、使い道のない実装ですが、 シンプルなのでサンプルとしては分かりやすいと思います。

public class BlockingAwaitable<T>
{
    private BlockingAwaiter<T> _awaiter;

    public BlockingAwaitable(Task<T> task) { _awaiter = new BlockingAwaiter<T>(task); }

    public BlockingAwaiter<T> GetAwaiter() { return _awaiter; }
}

public class BlockingAwaiter<T>
{
    private Task<T> _task;

    public BlockingAwaiter(Task<T> task) { _task = task; }

    public bool IsCompleted { get { return true; } }

    public void OnCompleted(Action continuation) { }

    public T GetResult()
    {
        _task.Wait();
        return _task.Result;
    }
}

public static class BlockingAwaitableExtensions
{
    public static BlockingAwaitable<T> ToBlocking<T>(this Task<T> task)
    {
        return new BlockingAwaitable<T>(task);
    }
}

以下のように利用します。

varresult = await task.ToBlocking();

状態機械生成

それでは、この awaitable/awaiter が実際にどのように利用されているのかを見てみましょう。 仕組みとしては、「イテレーター」と似ていて、 一種の状態機械(state machine)の生成となっています。

イテレーターの場合には、yield return の部分が以下のようなコードに置き換えられます。

state = State1; // 次に復帰するときのための状態の記録
Current = x;    // 戻り値を Current に保持
return true;    // いったん処理終了
case State1:    // 次に呼ばれたときに続きから処理するためのラベル

処理はいったん中断し、次に呼ばれたときには state の値に応じた switch や goto によって、 続きの処理を再開します。

非同期メソッドの場合には、await の部分が以下のようなコードに置き換えられます。

state = State1;                  // 次に復帰するときのための状態の記録
var task = RunAsync();
var awaiter = task.GetAwaiter();
if (!awaiter.IsCompleted)
{
    awaiter.OnCompleted(a);      // タスクが未完の場合だけ、継続登録して一度 return
    return;
}
case State1:                     // 次に呼ばれたときに続きから処理するためのラベル
var y = awaiter.GetReslt();      // タスクの結果を受け取り
awaiter = default(T);            // ガベージ コレクションが働きやすくなるように null 代入

このコードはラムダ式で囲われていて、 (BeginAwait の引数となっている)Action 型の変数 a に代入されているものと思ってください。 結果として、タスクの継続として自分自身が呼ばれ、state に応じた switch や goto によって続きの処理が行われます。

ちなみに、awaitable/awaiter を介さない単純な実装に展開するなら、以下のようになります。 (実際には、await は Task クラス以外にも使えますし、単純に ContinueWith を呼ぶより少しだけ複雑な処理(後述の SynchronizationContext を利用)を行っています。)

state = State1;                  // 次に復帰するときのための状態の記録
var task = AnotherTaskAsync();
if (!task.IsCompleted)
{
    // 他のタスクの完了待ちに入って、いったん処理中止
    task.ContinueWith(a);
    return;
}
// ただし、タスクがすでに完了済みだったら処理続行
case State1:                     // 次に呼ばれたときに続きから処理するためのラベル
var y = task.Result;             // タスクの結果を受け取り
サンプル

(参考: サンプルの PseudoAsync プロジェクト。)

例えば、以下のような非同期メソッドを考えてみましょう。 要は、複数の URL から文字列をダウンロードしてきて表示するプログラムです(ShowTitle の実装については割愛)。

private static async void RunTaskAsync(params string[] uriList)
{
    var client = new WebClient();

    foreach (var uri in uriList)
    {
        var html = await client.DownloadStringTaskAsync(uri);
        ShowTitle(html);
    }
}

非同期メソッドがイテレーターと似たようなコード生成をしているということは、 イテレーターを使って似たようなことができなくもないです。 上記の例は、イテレーターを使って書くと以下のようになります。

private static void RunPseudoAsync(params string[] uriList)
{
    AsyncHelper(RunIterator(uriList));
}

private static IEnumerable<Task> RunIterator(params string[] uriList)
{
    var client = new WebClient();

    foreach (var uri in uriList)
    {
        //↓ここから
        var task = client.DownloadStringTaskAsync(uri);
        if (!task.IsCompleted)
        {
            yield return task;
        }
        var html = task.Result;
        //↑ここまでが await 相当の処理

        ShowTitle(html);
    }

    yield return null;
}

private static void AsyncHelper(IEnumerable<Task> asyncTask)
{
    var e = asyncTask.GetEnumerator();

    Action a = null;

    a = () =>
    {
        if (e.MoveNext() && e.Current != null)
        {
            e.Current.ContinueWith(t => a());
        }
    };

    a();
}

さらに、イテレーター相当の処理も展開すると以下のようになります。

private static void RunAsyncInside(IEnumerable<string> uriList)
{
    Action a = null;
    var e = uriList.GetEnumerator();
    int state = 0;
    WebClient client = null;
    Task<string> task = null;

    a = () =>
    {
        switch(state)
        {
            case 0: goto State0;
            case 1: goto State1;
        }

        State0:
        client = new WebClient();

        // goto の都合上、ループは if goto とか if return に置き換わる。
        if (!e.MoveNext()) return;

        //↓ここから
        state = 1;
        task = client.DownloadStringTaskAsync(e.Current);
        if (!task.IsCompleted)
        {
            task.ContinueWith(t => a);
            return;
        }
        State1:
        var html = task.Result;
        //↑ここまでが await 相当の処理

        ShowTitle(html);
    };

    a();
}

catch句、finally句内でのawait

Ver. 6

C# 6からは、catch句、finally句内にもawaitを書けるようになりました。

これの展開は結構面倒で、ここまでで説明してきたような単純な置き替えルールではできません。追加で、以下のようなことをしています。

  • すべての例外を無差別にcatch
  • catch句内、finally句内相当の処理を実行
  • 例外を再throw

最後の例外の再throwが曲者で、例外のスタック トレースを保ったまま例外をthrowし直すのは結構難しかったりします(.NET Frameworkの内部的な機能(internalなメソッド)を使わないとできなかったりします)。

同期コンテキスト

(書きかけ)

(参考: サンプルの SynchronizationContextSample プロジェクト。)

GUI アプリの場合、UI を更新できるのは UI スレッドだけ。 非同期処理の結果を UI スレッドに返す必要あり。 参考: 「[雑記] GUI と非同期処理

・ディスパッチャーを呼ぶ仕組み
WPF とか Silverlight の場合、継続がディスパッチャー経由で呼ばれる。
SynchronizationContext.Post 経由。

(標準提供の TaskAwaiter がこういう挙動してる。
  気に入らなければ Awaiter の自作で回避可能。)

詰まるところ、いくら await しても UI スレッドに処理戻ってくる。
当然、そこで重たい処理したら UI フリーズするので注意。
(一番向いてる処理は、IO 待ち)


・もし、重たい処理が必要なら

await Task.Run(() =>
{
    // 重たい処理
    // ここは別スレッドで動いてる
}

// SynchronizationContext 経由で UI スレッドに戻る

// UI スレッドで実行しないといけない処理

と書く。

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