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ネクロマンシー

登録日:2018/07/15 Sun 22:48:06
更新日:2024/10/14 Mon 01:14:26
所要時間:約 11 分で読めます





ネクロマンシー/Necromancerとはnecro-「死者の」とmancy-「予言、占い」からなる複合語。
元々は古代ギリシア語のネクロスとマンテイアに由来し、現在の英語として成立したのは17世紀頃。
本来は死者の霊を呼び出して占いを行う交霊術を意味する語でシャーマニズムとの関連が深い。
転じて魔法使いや黒魔術全般を指し示す事もある。
交霊術は旧約聖書においてもカナン人の死者に詢う占いとして戒められており、現代における邪法・外法と言ったイメージに大きく影響を与えている。

ネクロマンシーを行う事を生業とする職業をネクロマンサー/Necromancerと呼ぶ。
指輪物語における初期の日本語訳では「死人占い師」と訳されていたが現代では屍霊術師や死霊術師と書かれる事が多い。

19世紀中ごろの心霊ブームにおいて交霊術がChannelingなどと呼ばれた歴史的な経緯から、
現代では原義の死人を通じた占い・予言の側面は殆ど失われており、
創作における死体や死霊を使役する魔術・技術をネクロマンシーと呼ぶ傾向にある。


◇概要

死んだ人間に会いたい、というのはいつの時代どの国であっても変わらぬ人類の願望である。
たとえそれが邪法の類であったとしても 、故人に再会する方法があるとすれば頼りたくなるのが人情というもの。
ネクロマンシーはそんな人類の普遍的な望みを叶えるため自然発生した存在であると言える。

ファンタジーにおけるネクロマンシーは、霊的存在としての生命を存続させることがとりあえずの目的になっている。
彼らが行う術が単純な「蘇生」と決定的に異なるのは、蘇った故人は「生前とは全く異なる何か」になってしまっていることだろう。
故人を完全に蘇らせるのは、イエス・キリストの「復活」に見られるようなの御業に限られており、人の手ではそれを完全再現することは不可能なのだ。
というより、ネクロマンサーは死んだ人間を生前の姿で完全に復活させる、ということにはあまりこだわりがない。

なぜなら彼らの最終的な目的は、「生命を霊的存在としてより高みに到達させること」であるからだ。
単純な生命体としての進化ではなく、その精神・魂をより霊的に高次の存在へと作り変えていくのが彼らの目的なのである
彼らが行う蘇生は、下僕として扱う低級なアンデッドモンスターの作成を除けば、精神・能力の維持が主たる目的になっている。
極論すれば、自我と生前培った能力・記憶などさえ維持出来れば肉体など彼らには不要なのである。
ネクロマンサーの手による「蘇生」は、聖職者の手による奇跡の再現、科学者による新たな生命の創造といった手法とはその前提条件からしてまるで別物なのだ。

そんな彼らの直接的な目標は多くが「自身を永遠不滅の存在にすること」である。
これは彼らにとって自らの研究の実践であり、またより永く深く研究を続けていくために必要な手段でもある。
なのでネクロマンシーを究めるものの多くが、リッチやヴァンパイア、あるいは純粋な霊体・精神体など高次のアンデッドと化している。

生命の摂理を無視した邪法であるが故に、その属性は間違いなく闇属性
フィクション内で扱われる場合も、ポジティブな扱いを受けることはほとんどない。
「無数のアンデッドを自在に使役する強力な魔法使い」として登場することが大多数である。
ただ、一方で「邪法も使い方次第」という捉えられ方をして味方サイドで活躍するネクロマンサーもいないことはない。


◇歴史上見られる有名なネクロマンシー

◆西行法師

日本のネクロマンサー代表。
野原に散らばった骨を集めて人造人間を作ってみた、というすごい逸話の持ち主。
ただ、出来上がった人間は魂の入っていない人間もどきでしかなかったため、西行は二度と人間を作ろうとはしなかったという。
こちらに詳しく書かれている。

降霊術

日本風に言うなら一種のこっくりさん。
死体を操る、というよりは死霊を呼び出して様々なことを尋ねると言った方が近い。
どちらかというと占いの類であり、キリスト教的観点から何度も禁止されているが、それでも人気は衰えなかった。

◆イタコ

日本における降霊術。故人の霊を宿して語ることができる。

◆反魂香

中国の故事に伝わる伝説の香。
焚くとその煙の中に故人の姿が見えると言う。
江戸時代にはかなり知られていたようで、多くの落語や浄瑠璃の題材になった。

ゾンビ

ブードゥーに伝わる正しい「生ける屍」の作り方。
正確には対象を仮死状態かつ精神虚脱状態にして、自由に言うことを聞かせる方法…らしい。

◆キョンシー

中国のゾンビ。額に貼られた札により、作成者の言うことを何でも聞く。


◇フィクションに見られるネクロマンサーたち

◆サウロン(指輪物語)

冥王。
奪われた一つの指輪を取り戻す為に蘇った時、正体を隠すために死人占い師/Necromancerと名乗っていた。
悪霊や霊魂を従える能力を持つ。

◆ニバス・オブデロード(タクティクスオウガ)

「NルートのNはニバス先生のN」
ガルガスタン所属のネクロマンサー。戦闘ではネクロマンシーは一切使わず、サモンダークネスでひたすらアンデッドを呼んでくる。
一応ガルガスタン所属ではあるが、本人は屍霊術の研究ができ新鮮な死体が提供されれば戦争の行く末には欠片も興味がない。
ルートによっては実は一度もエンカウントせずに最後まで行けるが、Nルートでは実質メインキャラ級の活躍を見せる。
息子をも平然とネクロマンシーの素材にするその狂った探求心の行き着く先は、 自らをもアンデッドと化して永遠の研究を行うこと であった。

ユークリウッド・ヘルサイズ(これはゾンビですか?)

ヒロインであり全ての元凶。
主人公をゾンビとして復活させた張本人。
……実は「ネクロマンサー」というのは彼女の能力のほんの一端に過ぎず、その真の能力は かなりヤバイ ものだったりする。

アラン/仮面ライダーネクロム(仮面ライダーゴースト)

ネクロマンサーな仮面ライダー
敵怪人である「眼魔」を自在に操る能力を持つモチーフ通りのキャラクター。

◆イカルゴ(HUNTER×HUNTER)

キメラアントの一体。
操作系念能力「死体と遊ぶな子供達(リビングデッドドールズ)」により、死体に寄生して自在に操ることができる。
死体の生前の肉体的特性や念能力も自在に操れるなど、操作系能力の中でもかなり強力な部類。
ただし、腐敗を防いだりする効果はなく、損傷が一定限度を超えると操れなくなる。

ネフェルピトー(〃)

同じくキメラアントの一体。
特質系念能力者で、治療人形「玩具修理者(ドクタープライス)」で死体を修復し、さらに傀儡人形で自在にコントロールすることができる。
イカルゴのそれと比べると、死体の戦闘能力は低い代わりに同時に操れる数が非常に多い。

ルナ(shadowverse)

シャドウバースのリーダーの一人で、クラスはネクロマンサー。
両親の死をきっかけに生命観が歪み「友達は死んでいなければいけない」という異常な思考に囚われていた。
クラスとしての特徴は、墓場に落ちた「お友だち」が増えれば増えるほどより強力な効果を発揮できるようになる「ネクロマンス」。まさに死体を最大限利用するネクロマンサーの本領である。
立ち回りそのものは「ひたすら墓地にカードを落としていき、数が貯まったらネクロマンス持ちのカードが強化」と比較的シンプルなので、初心者向けのリーダーの一人とされる。

前田・利家(境界線上のホライゾン)

「前田利家」ら前田一族と傭兵王「ヴァレンシュタイン」の役割を継ぐ「襲名者」。
利家の「長寿」と傭兵王の「暗殺」を両立させるため自ら霊体化しており、専用霊魂展開術(ネクロマンス)「加賀百万G(カガミリオネンガイスト)」で、金を代償に骸骨軍団や幽霊船を召喚使役(傭兵契約)する。
金さえあれば恐ろしいほどの大群や巨人骨をその場で用意でき、この他にも「残念を残した死者を霊体化する」・「再現した死者のデータを使って意志を持つパワードスーツを創る」等高度な死霊術を使う。

おキヌちゃん(GS美神 極楽大作戦!!)

初登場からしばらくは幽霊だったが物語中盤で生き返った。
無数の悪霊に狙われた際に、霊を操る事が出来るネクロマンサーの笛を使いこなして除霊した事により、ネクロマンサーの能力に目覚めた。

ゲッコー・モリア(ONE PIECE)

世界政府公認の七人の海賊たち王下七武海の一人。
超人系悪魔の実カゲカゲの実の能力者で、他人から奪い取った影を死体に入れる事でゾンビを作り出し使役する事が可能。

ジゼル・ジュエル(BLEACH)

星十字騎士団所属の女性チーム「バンビーズ」の一員。
ただし、外見は女性だが実際の性別は男性
自らの血を浴びせた相手をゾンビ化し意のままに操る能力を持つ。

長門(NARUTO‐ナルト‐)

雨隠れの里の里長で作中登場する敵組織・の表向きのリーダー。
長期間輪廻眼を行使し続けた影響で肉体は衰弱し、登場した時点で既に自分で行動することもままならなくなってしまっている。
その為、輪廻眼の力を用いて作り上げた死体傀儡ペイン六道を遠隔操作し使役している。

薬師カブト(〃)

音隠れの里に所属する忍者
第四次忍界大戦において『穢土転生の術』を用いて過去に名を馳せた死者達を復活させ使役した。
他にもカブトの師である大蛇丸も穢土転生の術を使用している。
また作中では使用しなかったが、穢土転生の術の開発者である二代目火影千手扉間もこの術を使用可能。

冥王ゴルゴナ(ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章)

大魔王異魔神の配下の四大魔王の一人。
アンタレスの力を借りて死者を自在に蘇らせ使役する事ができる。
これは単純に蘇生するだけでなく、わざと皮膚を作らなかったり、傷を受ければその部分から魔物が増殖するようにしたりと、死者の肉体に自在に手を加えたうえでの蘇生も可能。
作中では部下のモンスターを殺害しゾンビ化し使役したり、魔王バラモスを復活させ使役した。

ジェロニモン(ウルトラマンシリーズ)

原作『ウルトラマン』では怪獣を蘇生させたが、
漫画『ウルトラマンSTORY 0』では人間の死体を自在に操る能力を、
漫画『ウルトラマン超闘士激伝』では自ら鎧に憑依し持ち主の生前の能力を再現する能力を見せた。

シャーマンキングの登場人物のほぼ全員。


◆死人使いグロブ(ラングリッサーシリーズ)

魔族の支配地ヴェルゼリアの、闇の王子ボーゼル配下の三魔将の一人。
ミハリ・クシゼキキ・イヨカナ・ハグジソラム!と詠唱すると死者を復活させ操れる。
死にたてや肉体が残っていればそのまま、肉体が残っていなければ霊体として使役できる。三魔将の同僚さえも操ってみせた。
将というだけあって一度に蘇生できる数が非常に多く、総力戦であっても一度に全て復活させることさえできる。そしてそれらは主人公達の[[経験値]]稼ぎに使われた
その地の怨念だけを集めて凝縮し怨霊という強力な霊を呼び出したりもしたが、こうした特別製は蘇生ができない様子。
調子に乗って蘇生させ続けて弾切れに気付かないなど、将としても詰めの甘い部分がある。

モモンガ/アインズ・ウール・ゴウン(オーバーロード)

ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルド長にしてナザリック大墳墓の支配者。
1日に決まった数だけアンデッドを生みだす事が出来る。
中位アンデット作成で1日24体まで作り置きできるデス・ナイトですら1体で一国の全軍に匹敵する武力を持つ。
切り札である上位アンデッド作成と暗黒儀式習熟の併用で最大Lv90程度のアンデッドを1日2体まで作成可能。

◆ハーマン・スミス(killer7)

人知を越えた“笑う顔”をも駆逐出来る力を持つ、神に近い力を持つ殺し屋集団キラー7ことスミス同盟の大将。
自身も“神殺し”と言われる世界最強の殺し屋であるが、何よりも驚異的な能力が自身に適合する相手を粒子化させて自身の中に取り込める能力であり、スミス同盟はそうやってハーマンの中に多層人格として取り込まれた者達である。
よって、現実世界に存在しているのは脱け殻となったハーマンと、ハーマンの忠実なる僕にして千里眼を持つ政府との仲介役のガルシアン・スミスのみであり、それ以外の人物は必要に於いて仮初めの姿で呼び出される過去の死者達となっている。
とはいえ、同盟に加えられた時点でハーマンやガルシアンと同じく超常の存在となっている模様。

◆アリス(アシュラブレード/アシュラバスター)

「ワガママ死霊使い」のロリ。
その必殺技においては骸骨や頭蓋骨を召喚して戦う。
1作目の方がネクロマンサー的な技は多いが、2作目でも骸骨との同時攻撃などの特徴がある。

◆マーラ(カオスブレイカー)

スケルトンやゾンビを召喚して戦うダークエルフのネクロマンサー。

◆ヴェイン(カオスコード)

「格闘スタイル:無銘」となっているが、剣術と亡者の召喚を併用する特異な戦い方の剣士。
「黄泉誘委也」や「咎滅暗黒也」などの技では骸骨の腕を召喚してくる。
技名がテラ厨二。

◆虫の王マニマルコ(The Elder Scrollsシリーズ)

タムリエル史上初とされる魔術の力のみで完全な不死化を成し遂げた、後の世でも最も強力で邪悪な死霊術師の一人とされる存在。
死人を蘇生し操る「虫の杖」、これを被る者に近付く者から生気を吸い取り与える「血虫の兜」、本物の頭蓋骨を加工して作られ闇の魔力を大きくブーストする「死霊術師のアミュレット」という3つの邪悪なアイテムに加えて、触れられたら最後、一瞬でゾンビに変えられ手駒とされてしまう邪術「スラルタッチ」を操り、アンデッドや彼を崇拝する死霊術師らの軍勢を率いていた。
後にある人物の自己犠牲と、その加護を受けた一人の英雄により軍勢諸共完全に滅ぼされるが、それでも彼の領域に至ろうとする違法な死霊術師*1は世紀を跨ごうとも後を絶たない辺り、マニマルコの意思は今も尚生き続けていると言えるだろう。

追記・修正は死体を自在に操りながらお願いします。


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最終更新:2024年10月14日 01:14

*1 そもそもTesシリーズの死霊術とは本来死体の長期保存や、生ける者が到底入り込めぬ危険地帯への作業に元死刑囚等の死体を利用して行わせる等が正しいとされる利用法。それでも死者を操るという論理的にマズい事には変わらない為、どの地域でも死霊術は基本的にグレーゾーン〜使用禁止