登録日:2018/08/13 Mon 20:23:59
更新日:2024/07/12 Fri 04:32:18
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基本的に
ゲームに登場するすべての機体は
カトキハジメデザイン。
よって工業製品らしいソリッドなラインと、ロボット物らしい濃厚なキャラクター性を巧みに両立させたカトキチックなフォルムは全機に共通している。
長期にわたって展開されてきたシリーズの例にもれず設定はかなり変遷しているが、基本的に全てをプロデューサーの瓦重郎氏が考えているので、多くの人の手が入ってきたガンダムなどに比べると整合性は取れている方。
【特徴】
というリアル系ロボットとは切っても切り離せない疑問に対し、
と直球で答えてしまった特異なロボット。
そう、バーチャロイド(以下VR)が人型という非効率な構造をとっているのは、単純に「カッコイイから」、より正しく言えば「客ウケがいいから」なのである。
もっともこの場合の客とはプレイヤーのことではなく、バーチャロンの作品世界である「電脳暦(VC)」において、VRの主戦場である「限定戦争」を楽しむ視聴者たちのこと。
電脳暦において「
戦争」の代わりに存在する、
商業行為にして
政治行為にして
祭事行為。
電脳暦とは社会全体を物理・情報のネットワークが覆い尽くし、土地や民族、宗教や政治理念といった従来の主権国家の枠組みが失われた近未来である。
そして旧来の国家に替わり、ネットワーク上における人々の支持・参加を力とした各種企業が台頭し、かつての国家の役割を代替して「企業国家」と呼ばれるようになった。
企業論理が全てを支配する電脳暦では、必然的にあらゆることが商業ベースで判断されるようになり、莫大なコストを浪費しながら得る所の少ない物理的な「戦争」も、「コスパが悪い」として否定されることになった。
しかしだからと言って、普通の人々がいきなり聖人になれるわけもない。
行き場を失った人々の闘争本能、進歩した分閉塞した社会への逼塞感、利害調整ツールや消費市場を求める企業の思惑などは複雑に絡み合い、「じゃあコスパがいい戦争ならいいよね?」という斜め下の発想に到達した。
これが「限定戦争」と呼ばれるシステムで、
- 個人や集団の間で、交渉では解決できない対立を解消するために使われる
- 殺し合いである
という点においては旧時代の戦争と変わりないが、
- 戦闘を視聴者へと公開(放映)することで各種利益を生む、エンターテイメントビジネスとしての性質を持っている
- 一般社会とは隔絶された専門のエリアで、戦闘を請け負う専門の代理人集団が、ルールやレギュレーションに従って行う
という点において明確に異なる。
常に
「視聴者」の存在を意識しなければならない限定戦争においては、
単純に相手に勝てばそれでいいというものではない。
むしろプロレスがそうであるように、
視覚的な興奮要素、
ドラマ性、
カタルシス、
ゆで理論などといったエンターテイメント性こそが強く要求される。
対立企業との力関係を決着する実力行使と
興行としての儲けを天秤にかけ、収支決算でプラスを出す事が求められるようになったのだ
こうした需要に答えて生まれたのが人型兵器VRであり、この「ショービジネスの商用ツールである」という点で他作品のロボットとは大きく異なる。
【構造】
モビルスーツの様なはっきりとした性能諸元は初代(OMG)を除き公開されていないが、おおむね10m~20mぐらいの大きさ。リアルロボットとしては標準サイズといったところだろうか。
遠隔操縦も可能だが、様々な理由から有人機として運用されることが多く、殆どは単座(1人乗り)。
機体の中枢となるのはコクピットブロック及びその背後に存在する
「Vコンバータ」と呼ばれる箱型の装置。OMGでは
灰サターン、オラタン5.2では白サターン。オラタン5.4-5.56では
ドリキャス、フォース以降は謎の箱になっている四角いアレのことである。
このVコンバータは月面の先史文明遺跡「ムーン・ゲート」から発掘されたオーバーテクノロジーを転用したユニットで、
- VRの機体そのものを構築する(後述)
- 中核であるVディスクを介してパイロットの精神とVRをリンクさせ、操縦を補助する
- ゲート・フィールドという不可視の異空間を形成し、その斥力で推進する
- ゲート・フィールドによってVRの動作に伴う機体・パイロットへの慣性を緩和したり、慣性を制御して普通の物体ではありえないような運動をさせる
- 慣性制御機構の援用で、外部からの攻撃をはじき返す「Vアーマー」を形成する(第二世代VRのみ)
- 「電脳虚数空間(CIS)」と呼ばれる異空間を使った長距離ワープ「定位リバース・コンバート」を制御する(第三世代VRのみ)
などといった様々な機能を司る。
VRが人のようになめらかで自然な動きをしたり、かと思えば音速を超える速度で地上をジグザグに走り回ったりできるのは全てこのVコンバータのおかげであり、まさしくVRのコアと呼べるユニットである。
- 魔法のステッキ
- 火炎放射器
- ボム(爆弾)
- ナパーム(火柱を連鎖生成するボム)
- 浮遊機雷
- ドリル
などといった訳の分からないものを主武装とする機体まで存在する。
またVR戦において最も人気が高いのは、何といっても人型であることを活かした近距離白兵戦である為、殆どのVRは近距離戦用の武装を搭載している。
こちらも
実体剣やビーム剣、
トンファーに
杖、
槍に
刀に
大鎌にドリルと個性豊かなラインナップを誇る。
【製造方法】
VRのユニークな点は、その製造方法にもある。
戦車や航空機のような通常兵器と異なり、VRはVコンバータを介して電子データを物質化する、「
リバース・コンバート」によって建造されている。
Vコンバータの基礎となるのは、「Vディスク」と呼ばれる一枚のデータディスク。
このディスクはDVDやブルーレイのようなディスクと基本構造は同じだが、表面に塗布されているのが磁性体ではなく「Vクリスタル質」と呼ばれる特殊素材となっている。
このVクリスタル質とは、月面で発見された非人類起原の遺跡「ムーン・ゲート」から採掘される未知の材質で、その名の通り遺跡の中核である巨大な結晶「Vクリスタル」と同様の組成を持つ。
VRのコアとなるこのVクリスタルは、先史文明由来のオーバーテクノロジーのまさしく結晶であり、VRという兵器の特性は全てこの物質に由来していると言っても過言ではない。
この流れを具体的に並べると、
1.まずはVコンバータ用のVディスクを、人間の精神を介してフォーマット(マインド・フォーマット)する
2.フォーマットされたVディスクに、製造する機体の構造情報をデータとして書き込む
3.そのVディスクを収めるVコンバータと、それに繋がったコクピットを普通に建造する
4.Vコンバータを作動状態に置き、高い負荷をかけることでディスク内のデータが物質化され、VRが出現する(リバース・コンバート)
という感じになる。3Dプリンタみたい
こう書くと「え?じゃあコクピットとVコンバータ以外は実質タダで作れるってこと?」と思われるかもしれないが、リバース・コンバート時にはVコンバータを高負荷状態に置くために相当なエネルギーコスト、平たく言えば莫大な電気代が必要になる。
加えてマインド・フォーマットとリバース・コンバートに関しては、一定確率で「失敗」してしまうことがあり、これが製品としての歩留まりを下げてお値段をさらに上げている。
さらにリバースコンバート時においては、書き込まれたデータの質と量が上がるほどに「失敗」の可能性が上がる。
この為技術が未熟だった第一世代機(OMGの時代のVR)では、武装を含めた機体全てをコンバートさせるのは難しく、機体の基礎構造のみをコンバートして、武装などの外装パーツは普通に製造したものをあとから取り付けていたらしい。
そしてこれらの理由から、「VRをディスクに戻して再コンバートすることで修理費ゼロ!」とか「再コンバートすることで弾薬を補充!」等と言ったセコイことは難しい(不可能ではないが、リスク・コスト的に見合わない)。
ちなみに
ドリームキャスト版オラトリオ・タングラムのOPがこのリバース・コンバートによる機体を製造しているシーンとなっている。どういう物か一目でわかるだろう。
【強さ】
前述したとおりVRは本来客ウケを狙って作られた兵器ではあるが、しかしだからといって実戦兵器として弱いということはない。
というか
- マッハを超える速度で地上を走り回る
- 同サイズの生物を圧倒的に上回る俊敏さを持つ
- 数十メートルの跳躍を行い、短時間の飛翔も行う
- 戦車砲サイズの砲や艦対艦級ミサイルのランチャーを自在に振り回す
- それらの攻撃にある程度に耐える防御力を持っている
という殆ど反則的な兵器であり、
歩兵や戦車といった従来戦力を圧倒的に上回る強さを持っている。
ただこうしたVRの飛びぬけた性能は前述の通り月由来のオーバーテクノロジーによるものであり、原理的にはその技術を転用してVRを上回る通常兵器を作るのは不可能ではない。
とはいえVクリスタルから始まるオーバーテクノロジーの研究は、本来人型兵器の制御ソフトとして作られたM.S.B.Sを用いて進められてきたものであり、他の分野へ応用することが難しい。
膨大な研究費をつぎ込めば可能かもしれないが、しかしそこまでして開発にこぎつけたところで視聴者からの人気がVRを越えることはまず考えられない。
コスパがすべてに優先される電脳暦において、それが実現する可能性は低いと言わざるを得ない。
またコスパ最優先と言う電脳暦の原則は、VR自身の性能にも反映されている。
旧来の戦争では、「同じ重さの金塊より高い」
B-2などにみられるように、
「性能>コスパ」とされることも珍しくないのだが、VRにおいては常に
「性能<コスパ」が徹底されている。
よって一般に流通している商用VRの性能は、実は技術的な限界よりかなり下の方に位置している。
例えていうなら
「V2アサルトバスターを作る技術がありながら、コスパがいいという理由でジェガンを作り続けている」ような状態なのである。
なので「商用」という枠を外れてコスパという制限から解き放たれた時、その性能は凄まじい上がりっぷりを見せる。
特にVRのコアであるVコンバータ、及びVクリスタル質はコスト増大に伴う性能向上がダイレクトに反映される部位であり、ここに金をかける(=高品質のVクリスタル質を使う)ことで性能は爆発的に向上する。
これは高品質なVクリスタル質を使うことで、VRの「実存強度」が大きく上昇するため。
実存強度とは、物質化されたデータであるVRの「物質としての存在精度」を表すパラメータで、これが高いVRほどスペックをフルに発揮することができ、それが低いVRに比べて全ての面で優位に立てる。
商用ではないVR、例えば「白虹騎士団」の対シャドウVRや「特捜機動部隊MARZ」の捜査官用VRなどに使われているVコンバータは商用機に比べ数十倍~数百倍のコストがかけられており、その分性能も桁違いになっている。
【パイロット】
殆どのVRは、Mind Sift Battle System、略して「M.S.B.S」と称されるOSによって制御される。
これは人間の精神によって機械をコントロールするためのデバイスで、パイロットはM.S.B.Sを介してVコンバータとリンクすることでVRを動かす。
ヒトには全身に200を超える数の関節があり、複数の関節が無意識で連動することで複雑な動きを成し遂げているが、これと同じ巨大ロボットの制御を手動でやろうというのは
あまりに無謀。
しかしVRはパイロットがM.S.B.Sによって
機体の基礎動作を感覚的に制御することが可能となっているため、意識的に行わねばならない操縦動作は最小限に抑えられている。
具体的にいうとアーケードのバーチャロン同様、
2本のスティックと複数のトリガー、補助的なスイッチをいくつか程度で戦闘動作の殆どをこなせるようになっているらしい。M.S.B.Sパねぇ。
ただし非人類起原のオーバーテクノロジーを流用しているVRにはブラックボックス的な欠陥がいくつかあり、その内の一つである「バーチャロン現象」はパイロットにとって非常に危険なものとなっている。
前述の通りVRの機能の源はコンバータ内のVクリスタル質であり、パイロットはM.S.B.Sを介してこれとリンクすることでVRを動かしている。
これは「周囲の人間の精神と交感し、結晶内でこれをエミュレート(模倣)する」というVクリスタルの性質を利用したものだが、これが行き過ぎると、その人間の精神がクリスタルへ「持っていかれて」しまうのである。
これは軽度なら数分の間(持っていかれている間)の記憶喪失程度で済むが、重度の場合は精神がクリスタルに閉じ込められたまま二度と戻ってこれなくなり、精神を失った肉体が廃人と化してしまう。
これはVRパイロットにとって極めて物騒な職業病で、M.S.B.Sには一応この現象へのセーフティ機構があるが、完全に防止できるようなものではない。
この現象に対する耐性は個人差が非常に大きく、「バーチャロン・ポジティブ値」として数値化されており、基本的にVRパイロットはこの数値が高い人間でなければなることができない。
またバーチャロン・ポジティブ値が高いパイロットは、単にバーチャロン現象に強いだけではなく、Vコンバータと深くリンクすることでVRの実存強度をより高め、VR自体の性能を引き上げることもできる。
ただし深くリンクするとその分バーチャロン現象に囚われるリスクも高まるため、その高さは必ずしも利点ばかりではない。
またポジティブ値が高い人間がバーチャロン現象を起こしてしまった場合、VRに
危険な変異をもたらし、周辺に被害を及ぼすこともある(
「シャドウ現象」)。
【歴史】
実用化以前(OMGより前)
VRの原型となったのは、地球圏最大手の企業国家の「ダイナテック&ノヴァ社(DN社)」がVC70年代に「eXperimental Master Unit(XMU)プロジェクト」で開発していた「マスターユニット」と呼ばれる大型の人型ロボットである。
これは「本物の人間の様な動きができて、かつ巨大で迫力のある人型ロボット兵器を作ろう!」という趣旨の計画で、
限定戦争における「やはり人間同士の殺し合いこそ至高!」という需要と「あ、でもグロいのはNG」という忌避感の双方を満たせるプロジェクトとして大いに期待されていた。
同プロジェクトは多大なコストを投じて進められ、人間の精神によってダイレクトに機体を操作するソフトウェア「M.S.B.S」、個性豊かたな10種類の試作マスターユニット、それにふさわしい各種武装など、少なくない成果を生み出した。
しかし数年後、最終的に「残念ながら現在の技術水準では、商品コンセプトを満たすレベルの大型ロボットを作るのは不可能である」という結論に達し、そのまま凍結されてしまっていた。
このマスターユニットが再び日の目を見たのはそれから数年後のVC84年、月面で非人類起原の遺跡「ムーン・ゲート」が発見されてからのこと。
このあたりの経緯は
この辺に詳しいが、DN社はムーン・ゲートに眠る先史文明のオーバーテクノロジーを利用するため、遺跡の中核である「Vクリスタル」の研究プラント
「0プラント」を設立。
Vクリスタルとそこから繋がる異空間「CIS」の利用を実用化するべく
「(第一次)Vプロジェクト」の名称で大規模な研究開発をスタートさせた。
0プラントではVクリスタルの特性である生物(人間)との精神交換作用に着目し、機械と人間の精神をつなげるデバイスである「M.S.B.S」を使ってその研究を進めていった。
XMUプロジェクトの遺産であるM.S.B.Sは基本的にマスターユニットの操作に特化したものであったため、その実験には死蔵されていた試作マスターユニット群もまた頻繁に流用されることになった。
この為オーバーテクノロジー利用とM.S.B.S、ついでにマスターユニットは相互に関連する形で完成度を高めていくことになり、最終的にこの3者は容易に分かちがたいものとなってしまったのである。
膨大な予算と人員を投じて進められたVプロジェクトだが、しかし約20年もの時間をかけても決定的な成果をあげれずにいた為、失望した上層部によってその規模は縮小されていった。
その為VC92年に0プラントが「リバース・コンバート」現象を発見した際にも、これを実用化しようにも予算が下りないという状況になっており、0プラントとしてはどうしても利益へと直結する「商品」を開発せざるを得なくなった。
そこで研究の副産物としてマスターユニットの性能向上につながる様々な技術が実用化されていたため、0プラントではこの技術をフィードバックしてマスターユニットを強化、「戦闘バーチャロイド」として限定戦争市場への投入を訴えたのである。
ちなみに「バーチャロイド」というのは本来Vプロジェクトの中心となった先史文明の巨大人型ロボットを指す名称で、初期のVプロジェクトはこのバーチャロイドを再生、ないし復元することを主眼としていた。
そして0プラントはリバースコンバート現象が発見された時点で「我々の技術はようやくバーチャロイドの水準に並んだ」という自負を込め、実験用に使われていたマスターユニットに「バーチャロイド」の名を継承させたのである。
なんとか上層部の許可を取り付けた0プラントは、底をつきかけた予算の中から開発費を絞り出して
「XMU-04-C(後のテムジン)」「XMU-05-B(後のライデン)」の二機種を実用化、極秘裏に限定戦争へ投入した。
不十分な予算と希薄なバックアップ下で投入された二機種の稼働率は酷いものだったが、しかしそのわずかな稼働機が示した戦果は上層部の予想をはるかに上回っていた。
その性能はかつてXMUプロジェクトが目指した
「人間の様に動き、視聴者を魅了するダイナミズムに溢れた巨大人型ロボット」の条件を完璧に満たしていたのである。
この成果に驚いたDN社は再び方針を変更し、0プラントへの追加予算を承認、「第二次Vプロジェクト」として戦闘VRの大規模実用化へと歩み出すことになった。
地球圏の各地にはVRの製造・開発を行うための9つの巨大なプラントが建造され、そこで開発・建造されたVRが、DN社直下の限定戦争部隊「DNA」によって極秘運用テストを重ねられていった。
第一世代VR(OMG時代)
第二次Vプロジェクトにおいて、VRの一般公開、並びに限定戦争への一斉デビューはVCa0年と定められた。
(電脳暦は16進数でカウントされる。つまり99年の後は9a年、9b年、9c年と続き、9f年の次がa0年となる)
だが公開を間近に控えたVC9f年12月31日、DN社の大株主にしてプロジェクトの統括責任者であった「アンベルIV」の不可解な裏切りによって全てが崩れ去る。
彼はVプロジェクトを支える9つのプラントを外部に一斉売却し、辞表(と言う名のポエム)を提出してDN社を去ってしまったのだ。
これによって、DN社は秘匿していたVRの情報を盛大にフラゲされてしまい、またVRを管理していた全プラントを喪失したことで、契約済みだった多数の限定戦争契約が全て履行不能になってしまった。
これらの契約違反によってDN社は天文学的な負債を抱え込み、「オペレーション・ムーンゲート」(初代バーチャロンに描かれた一連の戦闘)によって即日倒産の危機こそ回避したものの、最終的にはa0年内に倒産してしまった。
この時期、つまり第二次Vプロジェクト開始からDN社の倒産までの約9年間に作られた最初期の戦闘VRを「第一世代VR」と総称する。
9年間もの時間と膨大なコストをかけた割にその進歩は緩やかで、最初期の機体にあたる「MBV-04-Gテムジン」と、最後期の
「SRV-14-Aフェイ・イェン」を比較しても、両者にそれほどの性能差・機能差は見られない。
これは一つにはDN社の大企業病極まった非効率的運営体制のせいだが、それよりもVR開発の本家である0プラントがプロジェクト途中で解散させられてしまったことが大きいだろう。
しかしそれでも
- 主力機であるMBV(Main Battle Virtuaroid)、火力支援を担うSAV(Support Attack Virtuaroid)の2機種構成を基本とする運用
- MBVとSAVの機能を併せ持った重戦闘型のHBV(Heavy Battle Virtuaroid)、偵察・管制を担うTRV(Tactical Reconnaissance Virtuaroid)などの実用化
- 視聴者ウケを意識した格闘戦の重視と、そのための格闘戦装備の標準搭載
など、後の時代にスタンダードとして残った要素もないわけではない。
第二世代VR(オラタン時代)
DN社の倒産後、旧第8プラントにあたる「FR-08 フレッシュ・リフォー」は、旧DN社系列の企業を次々と傘下に置き、かつてのDN社を思わせる大企業国家を再生した。
しかしFR-08の総帥であるトリストラム・リフォーは、
- 巨大人型ロボットという形態自体が不合理であり、いわばキワモノに過ぎない
- VRが投入されるべき限定戦争という市場そのものの将来性が微妙
- バーチャロン現象やVRのシャドウ化など、危険すぎる欠陥が未解決のままである
などといった理由からVR事業に否定的で、地球圏唯一のVR保有軍事組織であったDNAに大規模なリストラを行い、傘下の各プラントにもVRの開発・生産に対して厳しい制限を課した。
この制限はVR事業を一時的に衰退させることになったが、最終的にはむしろその進化を促進させることになる。
かねてよりFR-08の強引な手法は各方面から反感を買っていたが、一部の企業ではVR事業にNGが出されたことでそれが加速し、明確な叛意を持ってこれに背こうとする動きが現れたのである。
特に「TV-02 トランスヴァール」、「TSCドランメン」、「SM-06 サッチェル・マウス」などの大プラントではこれが顕著で、彼らはFR-08の禁令を極秘裏に、しかしはっきりと無視してVRの研究開発を継続する。
そしてVCa2年初頭、完成した「
RVR-30 アファームド・ジ・アタッカー」などの新型VRは、彼らが共同設立した実働部隊
「RNA」に用いられ、DNAのVR部隊に襲撃をかけた。
圧倒的な性能差でDNAのVR部隊を粉砕したこれらの新型VRを、FR-08は
「第二世代VR」と名付ける。
第二世代VRは第一世代に比べて全ての性能が飛躍的に向上しているが、そのカギはVRの中核たるVコンバータの出力上昇にある。
前述の通りVコンバータの出力向上はイコールVRの実存強度の向上であり、火力・防御力・機動性とあらゆる性能の強化に直結するのだ。
そしてVコンバータの有り余る出力を活かし、高出力化したゲート・フィールドの斥力によって敵弾を無効化、あるいは減衰させる新防御機構「Vアーマー」が標準搭載され、防御力はさらに向上した。
また運動制御プログラムの発展も顕著で、機体自体の運動性が上がったことと相まって、以前には不可能だった高速走行中の方向転換(バーティカルターン)、空中での水平移動(空中ダッシュ)などの運動が可能になっている。
しかしある意味で最も重要なのは、RNAによって戦闘VRの効果的な運用法が編み出されたことだった。
それまでVR運用を独占的に行ってきたDNAだったが、その教義はまったくの未成熟であり、「つまりMBVが戦車でSAVが自走砲ってことだろ?」という単純な差し替え用法に固執していた。
だがこの戦術はVRという兵器の特性を全く活かしきれておらず、戦術面で非効率なだけではなく、視聴者へのアピール度という点でも散々だった。
これに対してRNAは最初からVRを主力とした軍事組織であり、その圧倒的な機動性と打撃力を活かした運用教義を既に構築していた。
5機1組の高速戦闘フォーメーション「フレックス5」を基本としつつ、MBVやSAVといった枠にとらわれず個々のVRの特性を十分に生かした戦術は非常に強力で、同程度の戦力で構成されたDNAのVR部隊に対して圧倒的な優勢を誇った。
そしてRNAの洗練されたVR戦術は、単純な戦術的優位だけではなく、DNAのチグハグなVR戦で「VRってなんか思ってたほどおもしろくないね」と思っていた視聴者に強烈なインパクトを与え、戦闘VRの価値を決定的に確立したのである。
この結果はVRに投資価値を見出していなかったトリストラム・リフォーをも動かし、FR-08は傘下の各プラントにVR開発を解禁、DNAに新開発した第二世代VRを次々と配備し始めた。
数年後に開催された大戦役キャンペーン
「オラトリオ・タングラム」時には既にDNAとRNAの両サイドで第二世代VRが主力となっており、地球圏の各地で熾烈な戦いを繰り広げることになる。
第三世代VR(フォース/マーズ)
地球圏でオラトリオ・タングラムが盛況を呈する中、限定戦争関連の一部企業や集団は地球圏の外、火星へと向かう動きを見せていた。
その出自や理由は様々だったが、彼らは共通して「VR事業の関連者」であり、火星圏でもVRによる限定戦争市場を作ろうとしていた。
しかし火星には月のムーンゲートや地球の南米遺跡と同様、巨大なVクリスタル「マーズ・クリスタル」が存在しており、しかもこれは月や地球のクリスタルに比べて遥かに活性度が高かった。
このため火星圏ではマーズ・クリスタルから発生する攻性侵食波が充満しており、これが既存のVRのVコンバータに干渉してその機能を阻害、活動不能に追い込んだのである。
一応テムジン707をはじめとした、Vコンバータの強化機構(707の場合は背部のマインド・ブースター)を持つ一部のVRだけは活動不能となることだけはなんとか避けられたが、大幅な機能低下は免れなかった。
またなんとか前線にとどまれたとはいえ、火星に派遣された際は結局現地生まれのネイティブ第3世代VRに完敗したため、最終的には第3世代対応のテムジン747に置き換えられている。
とまあそんなわけで、火星圏では従来の第二世代型VRに代わり、この環境に耐えて活動できる「火星圏対応型」のVRが配備されることになった。これが「第三世代型VR」である。
第三世代型VRの最大の特徴は、当然ながらマーズ・クリスタルの攻性侵食波をはねのける火星圏対応機構である。
この機構のカギとなるのは3種のクリスタル(ムーン・クリスタルとアース・クリスタルとマーズ・クリスタル)質を多層化してVディスクに用いたハイブリッドVコンバータで、動作の安定性において従来型のコンバータを大きく上回っていた。
第三世代型VRはこれに加えて機体各所に攻勢侵食波に対するフィルタリング機構を持ち、これによって火星圏においても安定した活動を可能としている。
またこのハイブリッドVコンバータには、もう一つ重要な機能がある。
それは「定位リバース・コンバート」と呼ばれる機構で、物質化したVRを異空間、つまりCISを介することで任意の地点に瞬間的に移動させるという、まあぶっちゃけワープのこと。
VR単体のエネルギーでは準備時間、移動距離などにかなりの制限があるが、専用の補助機構を持つ母艦などの支援を受ければ、火星-地球間ぐらいの距離を一瞬でワープすることも可能となっている。
これら第三世代型VRの技術を確立したのはSM-06の
アイザーマン博士で、そのハイブリッドVコンバータをMV-03、TV-02などが相次いで採用したことで標準規格となった。
さらに当初は火星圏のみで運用されていた第三世代VRだが、VCa6年にアイザーマン博士が行ったある実験のせいで、地球圏でも第二世代型VRからの移行を余儀なくされた。
アイザーマン博士は当時木星圏~地球圏をつなぐ超長距離定位リバース・コンバート輸送システム「ペネトレーター」の実用化を行っており、その動作を安定させるため、ターミナルとなった地球圏にマーズ・クリスタルの攻性侵食波エミュレータを持ち込んだのである。
これによって地球圏にまで火星由来の攻性侵食波が充満することになり、従来型の第二世代型VRが使用不可能となってしまったのだった。
また同じころ、木星圏では「戦闘結晶構造体」と呼ばれる謎の敵対存在と、それに対抗すべく結成された打撃艦隊「フォース」の苛烈な戦闘が繰り広げられていた。
そして木星圏でもやはり火星圏同様に活性度の高い「ジュピター・クリスタル」が存在したため、この影響下でも活動できる第三世代型VRが主力として配備されることになる。
そして火星や木星といった過酷な地での戦闘に耐える第三世代型VRのために、「TLCS(Twin Link converter System)」という新たなシステムが実用化された。
これはオリジナルVRの一体「エンジェラン/アイス・ドール」の協力によって実用化されたもので、VR2機のVコンバータを同調動作させて実存力を共有させ、二機が同時に倒れない限り戦い続けられるという生存性向上システムである。
とまあ地球圏だけにとどまらず火星や木星のような辺境にまで普及した第三世代VRだが、実は単純スペックでいうなら第二世代VRに劣っていたりする。
フィルタリングを施したコンバータは攻性侵食波への耐性と引き換えに出力が低下しており、その分実存力がさがって走・攻・守全ての性能で負けているのだ。
またコンバータの出力低下のため、Vアーマーを展開する余力もなくなっている。
ただし第二世代VRが優位に立てるというのは「その性能をフルに発揮できる状態なら」という前提つきの話で、地球圏にまでマーズ・クリスタルの攻性侵食波が満ちている現状では机上の空論ではある。
オリジナルバーチャロイド(???)
これは通常の意味でのバーチャロイドではなく、
「本来の」バーチャロイドを指すカテゴリ。
つまり限定戦争用の戦闘ロボットではなく、0プラントが当初目指していた
「Vクリスタルを利用して、CIS空間を自在に往還するロボット」のことである。
0プラントが解散される以前、その研究の中心人物であった
プラジナー博士によって創出されたが、その技術はいまだ誰も再現することに成功していない。
「アイス・ドール/エンジェラン」
「ファイユーヴ/フェイ・イェン」
「アプリコット・ジャム/ガラヤカ」
の3柱が存在し、それぞれが17歳・14歳・11歳の少女の人格を持っており、自律意思で行動する。
基本構造としては一般的なVRのそれと大差ないが、
Vコンバータの性能があらゆる面で桁違いで、自分のデータを書き換えてリバースコンバートを行い、
人間の少女と全く同じ姿を取ることもできる。
※ バーチャロン・ポジティブ値が高い方以外の追記:修正はバーチャロン現象に取り込まれる可能性があるので注意しましょう
- とあるコラボ系VRの方は、コラボ先をよく知ってる人に追記してもらいたいんやな -- 名無しさん (2018-08-13 20:25:24)
- バーチャロンというゲームの性質上、プレイ時間の大半は自機の背中を見ることになるので、そちらにも力を入れてデザインしたとどこかのインタビューで読んだことがある。 -- 名無しさん (2018-08-15 19:49:41)
- こんなに世知辛いロボットの存在意義づけも中々ないのではなかろうかw -- 名無しさん (2022-05-30 22:08:56)
- ↑でも人型の必要がある理由をこの上なくキッパリと説明できる稀有な存在でもある。 -- 名無しさん (2022-06-16 19:13:29)
最終更新:2024年07月12日 04:32