アドバンスセグメントで特定ユーザーの行動を探ってみよう Google AnalyticsでSEO
具体的な事例とツールの解析ワザを中心としたGoogle Analytics活用の実践Tips集
もちろんSEO/SEMも織り交ぜながら解説していきます。
前回の記事では、とことん絞り込むという取り組みでGoogle Analyticsの新機能「アドバンスセグメント」のほんの入口を書いた。ターゲットにしたのは、ブログやニュースサイトの新規訪問者だ。アドバンスセグメントの機能のうち、Google Analyticsが標準で用意しているものだけを使っても分析はできるが、このアドバンスセグメントは自分なりの「絞り込み」もできるのだ。
そこで、今回はいくつかの例をあげてアドバンスセグメントの使い方を見ていきたい。
まずは僕なりのアドバンスセグメントに対する心構えを説明しよう。僕がアドバンスセグメントを使う理由は、セグメントを区切ることでユーザーの気持に近づけるからだ。アドバンスセグメントは面白い機能なのでつい複雑な機能を駆使してしまいがちだが、その結果「だからどうなの?」という話になってしまっては意味がない。まずは自分なりに疑問や課題をしっかり持ち、サイトとユーザーのことをよく理解することが大事だ。
Yahoo! JAPANのユーザーは傾向が違うのか?
「参照元」で絞り込む
アドバンスセグメントでもっともよく使うのは、参照元の絞り込み機能だろう。特に日本でもっともシェアが高いYahoo! JAPANの訪問者が、サイト内でどんな動きをするのかは気になるのではないか。
アドバンスセグメントの使い方については前回の記事内でも解説しているが、もう一度設定画面の見方から説明しよう。Google Analyticsのレポート画面の右上にある「アドバンスセグメント」のボタンをクリックする。今回はカスタムセグメントを作るので「アドバンスセグメントの新規作成」をクリック。すると下のような設定画面に移動する。
画面左の属性一覧から「ディメンション>トラフィック」にある「参照元」を画面右の「ディメンションまたは指標」枠にドラッグアンドドロップする。プルダウンメニューの中から「yahoo」を選択し、下の「セグメント名を入力」に「ヤフー」と入力して「セグメントの保存」をクリック。これでカスタムセグメントの設定は完了だ。
検索エンジンごとの検索キーワードの違いやコンバージョン率の違いなどを、セグメントを区切りながら見ていくことができるので状況をつかみやすい。そうやって調べると「Yahoo! JAPANからのユーザーは、サイトの名前で検索している人が買っている(コンバージョンしている)んだ」ということがわかったりする。
自社サイトのことを知っている人の動きを区別したい
「キーワード」で絞り込む
検索キーワードは、大きく「ブランドワード」と「非ブランドワード」の2つに区別できる。ブランドワードというのは、サイト名や会社名、商品・サービス名といったそのサイトのブランドの名前で検索しているキーワードだ。ブランドワードで検索してサイトに来る人は、検索する段階である程度目的を設定している「指名買い」の要素が強い利用者だと言える。「本を買うのはアマゾン」「このサイトのブログは毎日読む」「旅行はこのサイトで予約する」など、そういったユーザーはサイト名などのブランドワードで検索してたどり着くことが多い。
この反対の非ブランドワードは、沖縄に行きたいと思って「沖縄旅行」と検索する際のキーワードである。非ブランドワードで検索をしてサイトに来る人は、どのサイトで旅行を予約するか決めていないため、ニーズを満たせないと他のサイトに行ってしまう可能性もあるが、同時に新しい見込み客でもある。
一般的な「ブランド」の響きだと、グッチやシャネルみたいな大手有名ファッションブランドを連想してしまうが、ここではサイトの大小には関係ない。あなたのブログのファンにとってみれば、あなたのブログの名前はその人にとってのブランド名となるのだ。
「Web担当者Forum」を例に挙げれば「インプレス」という会社名と「Web担当者Forum」あたりが「ブランドワード」になる。しかし、このブランド名には揺らぎがある。英語の「impress」も考えられるし、なかには最後の2つの「s」を1つにして検索する人もいそうだ。そこで、セグメントを区切る際には2つ目の「s」は除いて考えることにしよう。
また「Web担当者」の部分には「Web担当」や「ウェブ担」というワードも含まれているかもしれない。解析データを見ながら、ウェブの「ェ」を大文字にする人がいないか、実は「担当者」の「担」1文字だけでもブランドワードが抽出できるかもしれない、といった視点で見極めていく。
結果、アドバンスセグメントで設定するキーワードは図のようになる。可能性があるキーワードを「含む」で指定しながら、すべてのワードをor条件で洗い出していく。逆にこれをand条件で並べて、すべてのブランドワードを「含まない」と設定すると、ブランドワードが1つも含まれていない「非ブランドワード」での検索によるセグメントという指定になる。
ブランドワードによる訪問者は、そのサイトの名前や扱っている商材を知っているため、トップページに来ることが多そうだ。しかし、トップページからどんな動きをするのだろうか? そんな疑問がわけば「ブランドワード」のセグメントを設定して絞り込んでみてみるといいだろう。
企業サイトでは会社の地図を見る人は除いて考える
「ページ(URL)」で絞り込む
アドバンスセグメントはURLで区別することもできる。ただし、そのURLを通った人という区別なので、他のページでの行動も含まれてしまう点には気をつけたい(次回以降説明する「フィルタ」との大きな違いの1つ)。
企業サイトの場合、その会社に訪問するために地図ページを見にくる人は多い。そこで「地図ページのURLを通った人を除く」という指定をすると、ユーザー像がくっきりする。「新規ユーザーで、会社名をキーに訪問して来たんだけど、地図を見に来たわけじゃない人って重要なお客様じゃない?」なんていう発想もあるだろう。その場合は図のような絞り込みになる。
当然、地図を見る人の平均ページビューは少ない。このセグメントを取り除いた結果、平均ページビューが上がり、滞在時間が増えていれば、思ったより見込み客をうまく誘導できていると判断できるかもしれない。
ただし、これはあくまで地図ページが個別のページになっている場合の話だ。会社情報は、会社に訪問しない人にとっても信頼性などを見極めるための重要な情報になっている。従って、会社情報と地図が1ページにまとまっている場合は、会社情報や所在地を気にしない人(その会社を訪問する予定がないひと)という別のユーザーセグメントも含まれてしまうので注意が必要だ。
閲覧開始ページによってサイト内の動きに変化はあるのか
「閲覧開始(カテゴリ)ページ」で絞り込む
ショッピングサイトの場合は、トップページから来た人、商品ページが入口になった人、カテゴリページが入口になった人など、ユーザーを区別して行動を追ってみたい。「/product/」「/category/」などですぐに区別できれば簡単に設定することができる。
「人気商品のページから入る閲覧するが多いけど、この人たちが他の商品に行くのかしら?」なんていう視点もあるだろう。解析の結果、人気商品から他の商品へのリンクが多いのなら、その人気商品のページに積極的に関連リンクを設けて誘導するという手もある。
購入しなくても買い物カゴに商品を入れた人を知りたい
「コンバージョンの目標開始数」で絞り込む
オンラインショップの場合は、商品購入というコンバージョンを最重視して分析していくことになる。Google Analyticsのアドバンスセグメントが面白いのは、このコンバージョンの「開始」と「完了」を個別に確認できる点だ。買い物かごには入れたが、ショッピングは完了しなかったなんて人もいるだろう。ただ、その気にはなってくれたのだから、買い物カゴに商品を入れてくれたところから動きを追ってみたい。
アドバンスセグメントの下の青い「指標」という項目から、「目標1の開始数」というのを指定すると、目標の開始ページに来てくれた「その気になった人」のグルーピングができる。むしろ、ショップを運営している人の場合は、その気にならなかった人の方が気になるかもしれない。「目標1」の開始が「1」未満の人を絞り込めば、その気にならなかった人に絞り込める。
こうやってセグメントの例をいくつか書いてみたが、とても1記事では紹介しきれない内容になる。僕の場合は、サイトごとに毎回絞り込み方が違っている。サイトを運営する人と話しているうちに、いろいろな疑問や課題が出てきて「じゃあ、その課題にあった人に成り代わってみましょうか」などと言いながら、アドバンスセグメントを設定していくのだ。
アクセス解析で大事なのは、訪問者をセグメントに絞り込むこと。でもセグメントって言い方だとわかりにくいから、僕の頭の中では「あんな人こんな人」と呼ぶようにしている。「あんな人こんな人」を選び出して、とことん絞り込む。その人の気持ちになって、できればその人そのものになってサイトを見てみよう。そうすれば、新たな発見がきっとあるはずだ。
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