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会社として、より正確には“文化的な力”としてのアマゾンは個人的には嫌いだが、同社の低価格なタブレット端末には不思議な魅力を感じている。Fireシリーズのタブレット端末は市場で最も手ごろな製品であり、それは「Fire HD 8」(2022年モデル)も例外ではない。
とはいえ、最も「手ごろ」と書いた点には注目してほしい。最も動作が高速で、最もいい感じで、最も頑丈な製品ではない。それでも、この価格でならアマゾンのコンテンツにどっぷり浸かっている人にとって、「Fire HD 8」はいい選択肢になる。「Fire HD 10」のほうが多機能なタブレット端末である点は変わらないが、そこまでお金をかけたくないのであれば、より小さな8インチのモデルを検討する価値はあるということだ。
コンテンツの視聴には十分な性能
アマゾンは「Fire HD 8」の設計にあまり手を加えていない。2022年モデルの「Fire HD 8」の見た目は前モデルと同じように見えるが、少し薄くて軽くなっている。前モデルと同じようにプラスチックを全面に使っているが、驚くほど頑丈だ。
旧モデルの「Fire HD 8」を腰の高さ(身長は約180cm)くらいから堅木のフローリングに何度か落としてしまったが、傷ひとつ付かなかったほどである。とはいえ、これを試すことはおすすめできない。画面がガラス製であることには変わりないのだ。「Fire HD 8」には何らかのカバーを付けて使うことを推奨したい。
2.0GHzで6コアのプロセッサーは新しくなり、実際に試したところ以前のモデルよりわずかに速かった。新しい「Fire HD 8」は30%も高速になったとアマゾンは主張している。ただし、端末を横に並べてウェブサイトの閲覧や動画の再生といった作業の速度を比べてみたが、大きな違いは感じられなかった。
単体で考えると、大目に見ても「Fire HD 8」は動作が速いタブレット端末とは言えない。求められていることはできるが、市場にあるほかのAndroid搭載のタブレット端末と比較したら負けるだろう。とはいえ、アマゾンのコンテンツを提供するという、設計されたことをこなすには十分な速さである。
そのアマゾンのコンテンツは、8インチで解像度が1280 x 800画素のディスプレイに表示されるが、これはあまりいいものではない。映画監督のデヴィッド・リンチが見たら卒倒するような質だが、深い色彩や濃い黒色の発色の精度をそれほど気にしないのであれば、十分に使える。文字のピクセル化は痛々しいほど顕著だが、この価格帯のほかのタブレット端末よりはましだ。
「Fire HD 8」のストレージ容量は32GBと64GBから選べる。予算に余裕があるなら容量は多いほうがいい。microSDカードのスロットを使えば、ストレージ容量は最大1TBまで増やすことができる。
「Fire HD 8」の長所のひとつは、バッテリー駆動時間の長さだ。アマゾンは13時間と謳っている。動画をストリーミング再生したところ10時間ほどしかもたなかったが、それでも非常に優秀だ。
欠点は充電が遅いことである。付属の5Wの充電器では時間がかかりすぎたので、15Wの充電器を見つけて使用した。15Wの充電器なら3時間以内に充電が完了する。それでも早くはないが、ひと晩中ずっと充電しなければならない可能性が高い付属の充電器よりは優れている。
もう少し性能が高い製品がほしい場合は、「Fire HD 8 Plus」 (150ドル、日本では13,980円)がある。「Fire HD 8 Plus」は「Fire HD 8」よりRAMが1GB多く、ワイヤレス充電に対応しており、500万画素のカメラを搭載している(標準モデルのカメラは200万画素で、どちらもあまりよくない。このためカメラの性能で「Fire HD 8 Plus」の購入を決めないほうがいい)。
RAMが増えている点は歓迎できるが、10インチの「Fire HD 10 Plus」と比べると性能の差はさほど顕著ではない。タブレット端末を本格的に使いたい場合、「Fire HD 10 Plus」ならそれができるが、「Fire HD 8」も「Fire HD 8 Plus」 も力不足だ。
Plusモデルと並んで、「Fire HD 8 キッズモデル」といったセット商品を、アマゾンはいくつか用意している。「Fire HD 8 キッズモデル」には保護ケース、いくつかの追加のソフトウェア、コンテンツ配信サービス、ペアレンタルコントロールの機能が含まれている。
また、アマゾン独自のコントローラー「Luna Controller」(169ドル、約22,000円、日本未発売)を同梱したゲームのセット商品もあるが、Fire OSの制限を考えると多くのゲーマーにとって魅力があるとは思えない。Fireシリーズの最大の難点は、アマゾンのソフトウェアにあるのだ。
“入場料”としての広告の嵐
箱から出したアマゾンのFireシリーズのタブレット端末は、映画『26世紀青年』の広告が過剰に溢れている世界を思い起こさせるような体験を提供する。
「Fire HD 8」のロックを解除しようとした瞬間から、広告の猛攻撃と、さまざまなものをクリックさせようとする暗い色のパターンを使用した画面に直面することになる。
心配しなくても、「Fire HD 8」を見るたびにアマゾンのコンテンツが大量に押し付けられる。これは俗に言う“入場料”だ。安価なタブレット端末を欲しいなら、機会があるたびにあなたからお金を引き出すことが勤めであるようなタブレット端末を手にすることになる。
Androidから分岐したアマゾンのFire OSは、Android 11を使用するように更新されているが、これはまだ通常のAndroidから2バージョンは遅れている。とはいえ、アプリの切り替え画面と、テーマのいくつか細かい部分以外は、あまり違いを感じられなかった。Fire OSの基本的な使い勝手はAndroidと変わらないので、必ずしも悪いわけではないが、アプリストアには制限がある。
「Fire HD 8」を箱から出したばかりの状態では、グーグルのアプリも「Google Play ストア」も利用できない。アマゾンのアプリストアの品揃えはもの足りないと感じるものだ。YouTubeを視聴したり、Slackでチャットしたりしたいだろうか。残念だが、そのようなことはできない。
「Fire HD 8」は主にコンテンツを消費するためのタブレット端末であり、「Google Play ストア」にあるアプリの多くは必要ないと主張するにしても、YouTubeがない点は大きな損失である。使いたいアプリが決まっているなら、購入前にアマゾンのアプリストアを見て、欲しいアプリがあるかどうか確認することをおすすめする(Android端末をもっている人は、こちらからアマゾンのアプリストアをダウンロードして確認できる)。
「Google Play ストア」をサイドローディング(正規のアプリストアからではなく別の手段で端末にインストール)する手はどうか。アマゾンのFireシリーズに「Google Play ストア」をインストールする手順もあるが、残念ながらこのモデルでは使えない。少なくとも現在のFire OSのバージョンでは動作しないのだ。
Fire OS 8.3.1.3へのソフトウェアアップデートを受けたオンライン掲示板「Reddit」の一部のユーザーは、「Google Play ストア」をインストールして使用できたと主張している。手元にあるレビュー機は、いまのところfire OS 8.2.1.2で更新が滞っている。
使用した端末では「Google Play ストア」自体はインストールできたが、そこからログインしてアプリをインストールすることはできなかった。今後どこかの時点で「Google Play ストア」をインストールできるようになる可能性はあるが、現状ではできない。
アマゾンの2022年モデルの「Fire HD 8」は、アマゾンのコンテンツのストリーミング再生という設計されたことをこなすという点では、依然として優秀だ。あなたがプライム会員で、ソファやキッチン、あるいは「Echo Show」のようにスタンドに付けて使える小型で手ごろなデバイスが欲しいなら、「Fire HD 8」は悪くない。
とはいえ、もしお金に余裕があるなら、10インチモデルの全体的な体験のほうがずっと優れており、引き続きいちばんのおすすめである。本当にお得に購入したいなら、次の「Amazonプライムデー」を待つといいだろう。アマゾンのFireシリーズのタブレット端末を半額で手に入れられることもある。
◎「WIRED」な点
価格が非常にお手ごろ。より速いプロセッサーを搭載。RAMが増加(Plusモデルの場合)。microSDカードスロットがあり、ストレージ容量を最大1TBまで拡張できる。バッテリー駆動時間が長い。
△「TIRED」な点
アマゾンのアプリストアは品揃えがいまだに少ない。最も明るく精彩な画面ではない。充電が遅い。
(WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)
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