日本たばこ産業(JT)でファイナンスチームのダイレクター(管理職)を務める西村恵子さん。当初は細部まで知らないと気が済まず、マイクロマネジメント(細かな管理)をしていたそう。それに気づいたのは、管理職2年目で育児休業を取得したとき、上司からある言葉をかけられたこと。反省を生かし、どのようにマネジメントスタイルを変えていったのでしょうか。
昇進は素直にうれしかった
2019年にダイレクターへの昇進を打診されたときは、不安よりもうれしい気持ちが勝っていました。今までより視座を上げて、さまざまなことにチャレンジできると思ったからです。ただ、任されたのが既存業務ではなく新規業務の立ち上げで、当初は部下もいなかったので、どうやって仕事を立ち上げていくのかが課題でした。
もともと私はIR広報部に所属し、投資家や株主への決算報告業務などを担っていました。新規業務の立ち上げは、多岐にわたる投資家への情報の中から、ESG(環境、社会、企業統治)に関する情報発信を強化することが目的でした。
当時「企業の成長には利益などの財務情報だけでなく、ESGなどの非財務情報が欠かせない」という投資家からの要望が高まり、財務・非財務情報をまとめた「統合報告書」を発行する企業も少しずつ増えていました。ESGの情報発信は社内では前例がなく、他社事例も少ない状況でしたが、経営陣に同行してもらって投資家にヒアリングを行ったり、競合の事例を調査したりと、前向きな気持ちで進めていきました。
当初は1人で業務を進めていましたが、半年後に2人のメンバーが配属されました。2人とも優秀で、それぞれに担当領域を割り振り、私は進捗をこまめに確認していました。自分がゼロから立ち上げた業務だったこともあり、常に細部を把握していなければ気が済まなかったのです。さらに私はプレーヤーとしても成果を出したいと思っていました。
そして、無事に統合報告書の作成も終わり、レギュラーワークに落とし込んでいく段階となった頃、私は産休・育休を取得しました。後任がいなかったため「メンバーだけに任せて大丈夫だろうか」ととても心配し、細かなマニュアルも残して産休に入りました。
しかし、育休中に上司と面談したところ、上司から思いがけぬことを聞いたのです。
「メンバーはすごく生き生きと働いているよ。もっと自由にやらせてあげたらいいんじゃない?」