脈々と継承「関西の奇祭」 砂かけ、火振り、大笑い

砂かけ、火振り、大笑い―。独特な風習が色濃く残る「奇祭」。日本では驚くような祭が脈々と受け継がれている。地域によってその姿も変わり、様々な方法で五穀豊穣や無病息災が祈られてきた。一風変わった関西の「奇祭」を追った。

1月、大阪市の四天王寺。寒空の下、紅白のふんどし姿の男子高校生ら約600人が、冷水を浴びせられながら「わっしょい」を掛け声にお堂へ向かった。天井から護符がまかれると、われ先にと手を伸ばした。

魔よけの護符を奪い合う裸祭り「どやどや」。天下太平や五穀豊穣を願う年頭行事で、元日から14日間続けられる法要の最終日に行われる。「どやどや」と人があふれかえる様子などが名前の由来という。護符を手にした高校生は「寒いけど最高です」と大勢の見物客に笑顔を見せた。

「笑え、笑え」。和歌山県日高川町の「丹生祭」で、派手な化粧をした先導役の「鈴振り」がはやし立てながら町内を練り歩いた。「笑い祭」とも呼ばれ、地域住民や観光客も大笑いして五穀豊穣を願った。
同県新宮市の世界遺産・神倉神社で開かれる「御燈祭り」では、白装束の男たちがたいまつに点火し、山門が開くと参道を勢いよく駆け降りた。約1400年の伝統を持ち、女人禁制で続く国の重要無形民俗文化財として知られている。

豊作を願って砂をかけ合うのは奈良県河合町・広瀬神社の「砂かけ祭」。消防団員が扮した田人らが砂を四方八方にまき散らす。大勢の参拝者がポリ袋やゴーグル、レインコートを身に着けて参加し、子どもたちは悲鳴を上げながら駆け回った。
兵庫県豊岡市の「愛宕の火祭り」は、一般の方も参加できる行事だ。無病息災を願って、火のついた麦わらを両手でぐるぐる回す。参加した女性は「ゆっくり大きく回すことを心掛けたら、思ったよりもうまくできて満足」とほほ笑んだ。(写真と文、共同通信社写真部 宮野翔平、小澤亮介)
写真・記事の内容は、2017年10月8日までの取材を基にしたものです。