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土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 72, No. 2, 149-154, 2016. 非塑性シルト質細砂の液状化と 液状化後の強度変形特性 榎本 1正会員 忠夫1 国土交通省 国土技術政策総合研究所(〒305-0804 茨城県つくば市旭1番地) E-mail: enomoto-t2jz@nilim.go.jp 本研究では,0.25 mmふるいを通過した珪砂6号にDLクレーを混合した非塑性シルト質細砂を用いて湿 潤突固め法により作製した供試体に対して非排水三軸試験を行い,その液状化特性,液状化後の非排水せ ん断特性,微小ひずみ領域における剛性について検討した.その結果,細粒分含有率0 ~ 50%の範囲にお いて当該率の増加に伴って液状化強度が減少することを示した.また,同じ条件下であれば細粒分含有率 が高いほど液状化後の非排水せん断強度が低いことを明らかにした.さらに,液状化強度は,微小ひずみ 領域における剛性とは相関が見られない一方で,液状化履歴を与えない場合の非排水せん断強度やダイレ タンシーの影響を含んだ軸ひずみ0.1%における割線ヤング率とは良い相関があることを示した. Key Words : nonplastic silty fine sand, liquefaction, small strain stiffness, postliquefaction bahaviour 1. はじめに 2. 実験概要 1987年の千葉県東方沖地震において,海岸埋立地を中 心として非塑性シルトを多く含む細砂の液状化が発生し たことを受け,当該地盤材料の液状化の危険性が指摘さ れるようになった1).近年では,2011年の東北地方太平 洋沖地震において非塑性シルトを多く含む細砂の液状化 が発生し,甚大な被害をもたらした2).文献2)の調査では, 細粒分自体が非塑性であったことが報告されている.ま た,ニュージーランドにおける2010年のDarfield地震や 2011年のChristchurch地震では,同様に非塑性シルトを多 く含む細砂の液状化により大きな被害が発生した3),4). 性質がバッチ毎に大きく変化しないDLクレーを非塑 性シルトとして用い,0.25 mmふるいを通過し0.075 mm ふるいに残留した珪砂6号を細砂として用いた.これら を1 : 0,4 : 1,7 : 3,1 : 1(珪砂6号:DLクレー,重量比) の割合で混合し,細粒分含有率Fcが0,20,30,50%程度 になるように調整した4種類の試料(以降,それぞれSilt 0,20,30,50%と記す)を用いた.図-1に粒径加積曲線 を示す.表-1に,使用試料における土粒子密度s,最大 粒径Dmax,平均粒径D50,均等係数Uc,Fc,A-a法による Percent finer by weight (%) 近年,非塑性シルト含有率が砂の液状化強度に及ぼす 影響について検討がなされてきた例えば5), 6), 7).しかし,こ れらの研究では豊浦砂やそれよりも大きな粒径を有する 砂を対象としており,細砂を用いた例は少ない.また, 非塑性シルトを多く含む細砂の液状化後の非排水せん断 挙動や,非塑性シルトが細砂の剛性に及ぼす影響を検討 した例はほとんどない.さらに,上記の研究の多くは密 度管理指標として相対密度や間隙比を用いているが,細 粒分が多い砂の相対密度や間隙比を的確に評価すること 100 Silt 0% (Fc= 0%) Silt 20% (Fc= 20.5%) 80 Silt 30% (Fc= 31.9%) 60 Silt 50% (Fc= 52.5%) 40 20 0 1E-3 0.01 0.1 0.2 0.5 Particle diameter, D (mm) 図-1 粒径加積曲線 表-1 使用試料の物理特性 は難しい.本研究では,道路盛土や河川堤防の設計で用 いられる締固め度にて管理された非塑性シルト質細砂の 液状化特性,微小ひずみ領域における剛性,液状化後の 非排水せん断特性について,三軸試験により検討した. Material Silt 0% Silt 20% Silt 30% Silt 50% 149  s D max D 50 v/ F c Uc  3  (v/hvm (%) (g/cm ) (mm) (mm) 2.673 0.25 0.159 1.57 0 2.673 0.25 0.140 11.30 20.5 2.673 0.25 0.126 45.04 31.9 2.673 0.25 0.064 52.5  h  v  d max opt (%) (g/cm3 ) 15.2 1.505 13.3 1.681 12.9 1.711 14.5 1.712 e max e min 1.046 0.910 0.885 0.995 0.634 0.428 0.383 0.425 土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 72, No. 2, 149-154, 2016. Material Silt 0% Silt 20% Silt 30% Silt 50% が大きくなる傾向にあったが,飽和後の締固め度を厳密 に管理することは困難であったため供試体作製時のDc0 で密度管理を実施した.初期有効拘束圧’0= 100 kPaにて 表-2 三軸試験に用いた供試体の一覧  d 0 v/ D c 0 Specimen Test   d /(2 0 ) t code S0-1 S0-2 S0-3 S0-4 S20-1 S20-2 S20-3 S20-4 S30-1 S30-2 S30-3 S30-4 S30-5 S30-6 S50-1 S50-2 S50-3 S50-4 condition (g/cm3 ) ( /vm (%) (g/cm3 ) vh CTL 1.422 94.5 1.648 CTL 1.430 95.0 1.650 CTL 1.417 94.2 1.649 TC 1.424 94.6 1.648 CTL 1.594 94.8 1.821 CTL 1.591 94.6 1.814 CTL 1.596 94.9 1.814 TC 1.590 94.6 1.813 CTL 1.618 94.6 1.839 CTL 1.620 94.7 1.847 CTL 1.616 94.4 1.839 CTL 1.616 94.4 1.843 CTL 1.623 94.9 1.843 TC 1.625 95.0 1.842 CTL 1.617 94.5 1.878 CTL 1.618 94.5 1.875 CTL 1.618 94.5 1.883 TC 1.626 95.0 1.883 0.152 0.133 0.169 0.155 0.129 0.176 0.154 0.132 0.092 0.056 0.213 0.102 0.084 0.062 - 等方圧密した後,トップキャップとぺデスタルに設置し たベンダーエレメント8)により供試体内を伝播するS波速 度Vsを計測した.Vsとtを用いて,微小ひずみ領域にお ける初期せん断剛性率Gdを以下の式により算出した. Gd   t  (Vs ) 2 さらに,同じ等方応力状態にて,トップキャップに設置 したギャップセンサーにより計測した軸ひずみ両振幅 0.001%程度の微小な繰返し載荷を11回加え,5,10回目 の繰返し載荷時の軸差応力-軸ひずみ関係の傾きから初 期ヤング率Esを求めた.その後,非排水状態で周波数0.1 Hzの繰返し軸応力を載荷し,軸ひずみ両振幅5%を超え た時点で載荷をやめ,軸差応力を0に戻した後で非排水 状態のまま軸ひずみ速度0.5%/minで単調載荷を実施した. 本研究では,上記の方法で求めたEsから以下の式によ り変換した初期せん断剛性率Gsと,S波を利用し算出し たGdの比較も実施した.両者は共に初期せん断剛性率で あるがその相違は測定方法であり,実務での両剛性の使 い分けに関する一考察は文献9)で紹介されている. Es (2) Gs  2(1   0 ) emax e at Dc= 95% emin 80 60 40 (1.625) 3 ( ): d (g/cm ) 20 0 10 20 30 40 50 60 Fines content, Fc (%) Dr at Dc= 95% (1.626) (1.597) (1.430) 0 Relative density, Dr (%) Void ratio, e TC: Undrained triaxial compression test CTL: Undrained cyclic triaxial liquefaction test 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0は等方応力状態におけるポアソン比であるが,Hoque and Tatsuoka10) による実験結果を参考に,Silt 0%では0 = 0.2,それ以外の試料では0= 0.25と仮定した. Cyclic stress ratio, d / (2'0) 図-2 細粒分含有率 Fc と間隙比・相対密度の関係 0.25 また,本研究では,上記の方法で作製した液状化履歴 を与えない供試体を用い,非排水状態の下で軸ひずみ速 度0.5%/minの三軸単調圧縮試験(TC)も実施した. 0.2 0.1 0.0 0.1 (1) Silt 0% Silt 20% Silt 30% Silt 50% 1 10 100 3. 実験結果と考察 1000 Number of cycles causing double amplitude vertical strain of 5%, Nc (1) 液状化特性 図-2に,Fcとemax,emin,締固め度95%の時の間隙比eお よび相対密度Dr = (emax-e)/(emax-emin)の関係を示した.Fcの増 加に伴ってemax,eminが減少しFc= 30%付近において最低値 を取った後増加しており,これは文献5), 6), 7)の結果と概ね 一致する傾向にあった.図-3は,繰返しせん断応力d/2 を’0で除した応力比と軸ひずみ両振幅5%が生じた時の 繰返し回数Ncの関係である.Silt 0%とSilt 20%を比較する 図-3 液状化強度曲線 最適含水比optおよび最大乾燥密度dmax,最大・最小間 隙比emax・eminを示す.JIS A 1224による最小密度・最大密 度試験法は,Fc< 5%の範囲における砂が対象であるが, 本研究では参考としてemax・eminを求めた. 表-2に,試験供試体の初期乾燥密度d0,初期締固め度 Dc0,圧密後の湿潤密度tを示した.繰返し非排水三軸 と,d/(2’0) = 0.15付近においては両者に有意な差はない が,d/(2’0) = 0.13付近では前者のNcの方が約6倍大きい 傾向にある.図-3に示した液状化強度曲線において直線 を仮定し算出された液状化強度RL (Nc= 20の時の d/(2’0))とFcの関係を図-4に示した.同図からFcの増加 に伴ってRLが減少する傾向にあることが分かる.文献5) 液状化試験(CTL)の実施にあたっては,モールド内で 最適含水比に調整した試料を5層に分けてDc0= 95%まで 突き固め,直径5 cm・高さ10 cmの供試体を作製し,二 重負圧法を用いて飽和化を図った(背圧200 kPa,間隙圧 係数B≧0.95).Fcが高いほど通水時の供試体の体積収縮 150 土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 72, No. 2, 149-154, 2016. るv = -0.5%から-3%に達するまでの繰返し回数も追記し た.図-5から,Silt 0,20%ではSilt 0%の方が多くの繰返 し載荷を経てv = -0.5%に至っているものの,両者のvは 緩やかに増加していくのに対して,Silt 30%ではvが急激 では,豊浦砂の製造過程でできた非塑性シルトを豊浦砂 に混合した試料を用いて突固め法により作製した相対密 度一定の供試体を対象に,文献7)では,岩を粉砕した際 に発生した非塑性シルトをAhmedadad砂(Dmax= 2.0 mm, Fc= 0%)に混合した試料を用いて空中落下法により作製 した間隙比一定の供試体を対象に,Fc< 30%程度の範囲 ではFcの増加に伴ってRLが減少し,Fc> 30%では逆にRLが 増加傾向に転じることが報告されている.一方,文献6) は,豊浦砂とDLクレーを混合した試料を用いて乾燥打 撃法により作製した相対密度一定の供試体を対象にFc= 0 ~ 40%の範囲で実験を実施しており,Fc= 5%で液状化強 度が最大になった後,Fcの増加に伴って乾燥密度が増加 するにも関わらずRLが減少することを報告している.本 研究では,0% < Fc < 20%の範囲では実験を行っていない が,全体的には,同じDLクレーを用いた文献6)に近い傾 向が得られた.ただし,同文献のFc> 40%における傾向 は不明である.本研究における密度が文献6)より少し低 いことを考慮しても,全体的な傾向や液状化強度自体の 大きさに文献6)と大きな差はなく,今回の限られた少数 の試験結果においては,砂の粒径の違いによる傾向の相 違について特筆すべき点は見受けられなかった. 図-5は,ほとんど同じd/(2’0)(≒0.13)の下で実施さ れた液状化試験におけるSilt 0,20,30%の軸ひずみvの に増加し脆性的な液状化に至っていることが分かる.ほ とんど同じd/(2’0)の下で実施された液状化試験S30-4, S50-3についても同様な整理を行い,Silt 30%よりもSilt 50%の方が脆性的な液状化に至ったことを確認した. 供試体の間隙の状態を推定するため,細粒分と間隙部 分を間隙と見なした骨格間隙比6) esを求めFcに対してプロ ットしたのが図-6である.Fc≒20%の骨格間隙比はFc= 0%のemax以上であるため砂粒子同士の接点が減少してい るような状態にあり,Fc> 20%では液状化強度がDLクレ ーに支配されるようになってくると考えられる. (2) 微小ひずみ領域における剛性 Silt 0,20,30,50%毎に全供試体の剛性を平均した (Es)aveおよび(Gd)aveとFcの関係を図-7に示した.Fc= 20%付 近において(Es)aveと(Gd)aveが最小値になった後,Fcの増加 とともに両者は増加する傾向にあった.同図には図-4の 関係も追記してある.Fc> 20%では砂粒子が細粒分中に 浮き始め, DLクレーの性質が徐々に卓越してくると考 卓越していた.図中には,比較的大きなひずみ領域であ Void ratio, e 8 7 0.20 0.15 0 10 20 30 40 50 60 Fines content, Fc (%) (a) Silt 0% d / (2'0)= 0.133 4.89 cycles -3 176 178 180 182 184 22 24 -3 4.87 cycles 26 (c) Silt 30% d / (2'0)= 0.132 6 60 0.20 (Gd)ave 0.15 0.10 0.05 RL 0 70 28 30 60 50 4 50 0 10 20 30 40 50 Fines content, Fc (%) 0.00 60 Fc と(Es)ave および(Gd)ave の関係 80 0 -2 40 Fines content, Fc (%) 40 Shear moduli measured dynamically, Gd (MPa) (b) Silt 20% d / (2'0)= 0.129 30 80 図-7 -1 -1 20 (Es)ave 0 -3 20 1 10 120 -1 -2 emax at Fc= 0% 0 160 細粒分含有率 Fc と液状化強度 RL の関係 Young's and shear moduli (Es)ave and (Gd)ave (MPa) Vertical strain, v (%) Vertical strain, v (%) Vertical strain, v (%) emax of DL clay 6) by Sato et al. (1997) 図-6 Fc と骨格間隙比および細粒分間隙比の関係 0 1 3 0 1 -2 4 1 0.05 図-4 5 2 0.10 0.00 es ef 6 8 10 Number of cycles Silt 0% Silt 20% Silt 30% Silt 50% Gd = 1.07Gs 40 1 cycle 30 20 20 30 40 50 60 70 80 Shear moduli converted from Es , Gs (MPa) 12 図-5 Silt 0,20,30%の繰返し載荷時におけるv(一部) 図-8 Gdと Gs の比較 151 Liquefaction resistance, RL Liquefaction resistance, RL 発生の仕方を示している.繰返し載荷時のvは伸張側に 900 Deviator stress, q (kPa) 30 Silt 0% 750 Silt 0% 600 450 300 150 0 0 Silt 20% Silt 50% Silt 30% Silt 30% 8 16 Vertical strain, v (%) 0 Silt 20% Silt 50% 150 300 450 600 Effective mean principal stress, p' (kPa) Excess pore water pressure u (kPa) Deviator stress, q (kPa) 土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 72, No. 2, 149-154, 2016. 図-9 液状化履歴を与えない場合の非排水三軸圧縮試験結果 Excess pore water pressure, u (kPa) Deviator stress q (kPa) 1000  /(2'0)= 0.152 800 (a) Silt 0% d 600 d /(2'0)= 0.133* 400 d /(2'0)= 0.169 200 0 100 d /(2'0)= 0.152 0 d /(2'0)= 0.169 -100 d /(2'0)= 0.133* -200 200 150 100 50 0 100 50 0 -50 Excess pore water Deviator stress Excess pore water Deviator stress pressure, u (kPa) pressure, u (kPa) q (kPa) q (kPa) Excess pore water Deviator stress pressure, u (kPa) q (kPa) 0 15 5 10 15 Vertical strain, v (%) 20  d /(2  '0 )= 0.129*  d /(2  '0)= 0.129*  d /(2  '0 )= 0.155 0 5 10 15 20 Vertical strain,  v (%) (c) Silt 30% d /(2'0)= 0.132* 10  /(2' )= 0.154 d 0 25 d /(2'0)= 0.056 d /(2'0)= 0.213 0 d /(2'0)= 0.213 100 d /(2'0)= 0.056 95 d /(2'0)= 0.132* d /(2'0)= 0.154 d /(2'0)= 0.092 90 0 5 10 15 20 25 (d) Silt 50% d /(2'0)= 0.062 5 10 Zoom-up 200 15 d /(2'0)=・・ 0.13 Silt 20% Silt 30% 0 100 Silt 20% Silt 30% 0 Zoom-up -100 Silt 20% 90 -200 80 70 0 0 Silt 0% Silt 30% 100 Silt 0% 5 10 15 5 10 15 Vertical strain, v (%) 20 ており,応力経路は原点に向かっている. d /(2'0)= 0.102 0 100 5 10 (4) 液状化後の非排水せん断特性 それぞれの液状化試験後に非排水状態で単調載荷を行 った際の応力ひずみ関係と過剰間隙水圧uの挙動を図10に示す.Silt 0,20%では,比較的大きなvに達するま d /(2'0)= 0.062 d /(2'0)= 0.102 95 90 0 400 その後再度収縮的挙動になり最終的にqmax≒0に至った. Silt 50%ではせん断初期から負のダイレタンシーを示し d /(2'0)= 0.084 5 Silt 0% Silt 30% 0 0 図-4に示したRLとFcの関係に対応している.また,Silt 30%では収縮的挙動の後,わずかに膨張的な傾向を示し, Vertical strain, v (%) 10 Silt 20% 10 (3) 液状化履歴を与えない場合の非排水せん断特性 液状化履歴を与えない供試体を用いて非排水三軸圧縮 試験を実施した.その結果を図-9に示す.同図から分か るように,いずれの供試体も明確なピーク強度を示し, Fcの増加に伴って最大軸差応力qmaxが減少した.これは d /(2'0)= 0.092 5 600 図-8は,それぞれの供試体において算出したGsとGdの 比較を示している.全体的に,両者はほとんど等しい傾 向にあった.ただし,Gsは式(2)における0の値次第で変 わるため,Gsの正確な評価のためクリップゲージ9)を用 いて微小繰返し載荷時の供試体の水平方向の変位を計測 し直接0を評価することが望ましく,今後の課題である.  d /(2  '0 )= 0.155  d /(2  '0)= 0.176 20 図-11 Silt 0,20,30%における液状化後の非排水挙動の比較 25 (b) Silt 20%  d /(2  '0 )= 0.176 Silt 0% 800 d /(2'0)= 0.084 15 Vertical strain, v (%) 20 25 で液状化試験後の軸差応力qはほとんど0であるがその後 急激に増加する傾向にあり,uは強度の回復とともに 減少し膨張的な挙動を示した.すなわち,ひずみが大き くなると砂粒子同士のかみ合わせが再び回復し,正のダ イレタンシーが生じたと考えられる.図中には液状化試 験における応力比を追記してある.Silt 0%では,d/(2’0) が小さいほどqが急増するまでのvの増分が小さく,同 図-10 液状化後の非排水せん断挙動 えられるため,砂と間隙部分を間隙と見なした細粒分間 隙比6)efを求め図-6にプロットした.Fc> 20%では,Fcが増 加することで細粒分間隙比が減少し図-2に示すように初 期の構造としては密になり剛性は上昇するが,Fc= 20 ~ 50%の範囲では図-6のように細粒分間隙比がDLクレー単 体のemax以上であるため,DLクレーにより形成される骨 じvで比較してもqが大きい傾向にある.これは田中ら11) 格としてはまだ緩く液状化強度は減少したと推察される. が実施したFc= 0%の砂を用いた中空ねじり試験結果と同 本解釈の妥当性は今後さらに検討する必要がある. 様な傾向である.しかし,Silt 20%では,全く逆の傾向 152 1.0 0.20 (q15%)A : Deviator stress at v=15% after liquefaction test conducted under 0.8 d / (2'0)= 0.13 0.6 Liquefaction resistance, RL Normalized deviator stress (q15%)A / (qmax)B 土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 72, No. 2, 149-154, 2016. (qmax)B: Maximum deviator stress from Fig. 9 0.05 0.2 0 Secant Young's moduli at v = 0.1%, E0.1 (MPa) 図-14 v = 0.1%でのヤング率 E0.1 と液状化強度 RL の関係 0.15 0.20 Liquefaction resistance, RL Liquefaction resistance, RL 図-12 液状化前後における静的強度の比較 0.20 Silt 0% Silt 0% Silt 50% Silt 30% 0.10 Silt 30% 0.05 Silt 0% Silt 20% 0.15 Silt 20% 0.10 Silt 50% 0.00 0 10 20 30 40 50 60 70 80 10 20 30 Fines content, Fc (%) Silt 20% Silt 0% Silt 30% 0.10 0.4 0.0 Silt 20% 0.15 0.05 (Es)aveN (Gd)aveN 0.00 0.0 0.00 0 20 40 60 80 100 120 Normalized shear and Young's moduli, (Gd)aveN and (Es)aveN(MPa) Silt 50% 0.2 0.4 0.6 0.8 Normalized maximum deviator stress, qmax/2p' 図-15 静的強度比 qmax/2p’ と液状化強度 RL の関係 図-13 正規化された(Gd)aveN および(Es)aveN と RL の関係 方応力状態で計測したため,図-7に示した(Gd)aveに対し てeminによる正規化のみを実施した.図-13はRLと正規化 された(Gd)aveNの関係である.同図には,(Es)aveに対して同 様な正規化を実施した(Es)aveNもあわせてプロットした. データ数が少ないものの,RLと微小ひずみ領域における 剛性の間には相関が認められなかった.今後,同様な試 料を用いて50%<Fc≦100%の範囲においてデータを追加 し関係の全体像を明らかにしていく必要がある.その際, 式(3)の適用範囲を大きく超える可能性があるため,剛 性の正規化の方法における妥当性も検討が必要である. にあることが分かる.Silt 30,50%では, d/(2’0)の大き さに関係なく応力ひずみ関係や過剰間隙水圧の挙動には 大きな差が見られず,強度はかなり低くuはほとんど 変化しなかった.なお,いくつかの試験において単調載 荷直前のuが100 kPaから最大で±0.9 kPa程度ずれている ものがあるが,これは本研究における液状化試験直前の ’0の制御可能な最小単位に相当する. ほとんど同じd/(2’0)≒0.13の下で液状化試験を実施し た後の非排水せん断挙動を比較するため,図-10におい て*で示したデータを再掲したものが図-11である.Fc が低いほど軸差応力が急増する時のvは小さく,強度が 大きく,より膨張的な挙動となっている.これらの液状 化後の挙動は,Fcの増加に伴ってRLとqmaxが減少する関 係(図-4と図-9)に対応している. 図-12は,図-11に示したSilt 0,20,30%における液状 b) 比較的大きなひずみ領域における剛性 図-14は,図-9に示した応力ひずみ関係から算出したv = 0.1%における割線ヤング率E0.1とRLの関係である.今回 用いた試料においては,両者に良い相関があった.なお, 図-9に示した試験結果において,いずれの供試体もv = 0.1%では負のダイレタンシーを示していた. 化後のv = 15%での軸差応力(q15%)Aと図-9に示したSilt 0, 20,30%の最大軸差応力(qmax)Bの比をFcに対してプロット したものである.Fc≧20%では,液状化後の強度低下が 著しいことが分かる. c) 静的強度 図-15は,図-9に示したqmaxをその時の平均有効主応力 p’で除したqmax/2p’ とRLの関係である.今回用いた試料に おいては,両者に良い相関があった.上記a)~c)から, 初期の土粒子構造を表現している微小ひずみ領域におけ る剛性よりも,ダイレタンシーの影響もある程度含んだ (5) 液状化強度と剛性および静的強度の相関 a) 微小ひずみ領域における剛性 Tokimatsu and Uchida12) は,Gd に対する地盤材料の種類 と拘束圧の影響を以下の式で正規化したGdNとRLの間に 比較的大きなひずみ領域における剛性や強度に良い相関 があるといえる. 良い相関があることを示した.  GdN  Gd / {( 2.17  emin ) 2 (1  emin )}  ( m ) n  4. まとめ (3) nは係数で概ね0.5であり,’mは平均有効拘束圧である. Fc≦30%の砂に対して式(3)が適用できることを報告して いる例13)がある.本研究では全供試体のGdを100 kPaの等 本研究では,0.25 mmふるいを通過した珪砂6号にDL クレーを混合した非塑性シルト質細砂を用いて湿潤突固 め法により作製した締固め度95%の供試体に対して非排 153 土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 72, No. 2, 149-154, 2016. 水三軸試験を行い,その液状化特性,微小ひずみ領域に おける剛性,液状化後の非排水せん断特性について検討 した.その結果,本研究で試行した実験条件の範囲内で 得られた主要な知見は以下のとおりである. (1) 細粒分含有率Fc= 0 ~ 50%の範囲において,Fcの増加 に伴って液状化強度が減少した.用いた試料は異な るが,相対密度・間隙比一定の条件で実施した既往 の研究では,Fc> 30%にて液状化強度が増加する例 とFc= 0 ~ 40%まで液状化強度が減少した例があった. (2) 微小ひずみ領域における剛性は,Fcの増加に伴って Fc< 20%の範囲では減少し, Fc> 20%の範囲では逆に 増加する傾向にあった. (3) 液状化履歴を与えない場合の非排水せん断強度はFc が高いほどが低かった.これは上記(1)で述べた関係 と対応している. (4) 同じ条件下で液状化後の非排水単調載荷を実施した 結果,Fcが低いほど非排水せん断強度が大きく,よ り膨張的な挙動を示す傾向にあった.これは,上記 (1),(2)で述べた関係と対応している.また,液状化 履歴を与えない場合と比較すると,Fc≧20%では液 状化による強度の減少が著しかった. (5) 液状化強度は微小ひずみ領域における剛性とは相関 が見られない一方で,ダイレタンシーの影響を含ん だ軸ひずみ0.1%における割線ヤング率や液状化履歴 を与えない場合の静的強度とは良い相関があった. 参考文献 1) 2) 森伸一郎,沼田淳紀,境野典夫,長谷川昌弘:埋立 地の液状化で生じた噴砂の諸特性,土と基礎,Vol.39, No.2,pp.17-22,1991. 京川裕之,清田隆,近藤康人,小長井一男:東北地 方太平洋沖地震による浦安市埋立地盤の液状化被害 調査,地盤工学ジャーナル,Vol.7,No.1,pp.265-273, 2012. 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 地盤工学会:ニュージーランド Darfield 地震災害緊急 調査団報告書,2010. 地盤工学会:2011 年 Christchurch 地震による被害に対 する災害緊急調査団報告書,2011. 黄大振,柳沢栄司,菅野高弘:シルトを含む砂のせ ん断特性について,土木学会論文集,No.463/III-22, pp.25-33,1993. 佐藤正行,小田匡寛,風間秀彦,小瀬木克巳:細粒 分が埋立地盤の液状化特性に及ぼす影響に関する基 礎的研究,土木学会論文集, No.561/ III-38,pp.271282,1997. Sitharam, T. G., Dash, H. K. and Ravishankar, B. V. : Postliquefaction undrained shear behavior of sand-silt mixtures at constant void ratio, International Journal of Geomechanics, ASCE, Vol.13, No.4, pp.421-429, 2013. 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The test results showed that: 1) the liquefaction resistance decreased with increasing fines content ranging from 0 to 50%; 2) the postliquefaction undrained strength increased with decreasing fines content under otherwise the same condition; 3) no clear tendency was observed in the relationship between the liquefaction resistance and small strain stiffness; and 4) the liquefaction resistance correlated with secant Young’s modulus at a vertical strain of 0.1% and undrained shear strength without undrained cyclic loading history. 154