【6月20日 AFP】フィリピン南部ミンダナオ(Mindanao)島のマラウィ(Marawi)では、イスラム過激派武装勢力と同国軍とが衝突し、これまでに300人以上が死亡しているが、この戦闘の背景に「ある兄弟」の存在が見え隠れしている。

 武装勢力は先月、キリスト教系のダンサラン・カレッジ(Dansalan College)を襲撃した。犯行に及んだのは、ここで20年前にムスリムとして教育を受けたオマークハヤム・マウテ(Omarkhayam Maute)とアブドゥラ・マウテ(Abdullah Maute)の兄弟だった。2人はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の黒い旗を手に故郷の町へと戻り、母校に火を放った。

 襲撃には、マウテ兄弟に勧誘された地元の若者を多数含む数百人が参加。兄弟は、残忍な犯行を通じて、フィリピンのISリーダーとしての威厳を見せつけようとしたものとみられている。

 人口20万人のマラウィでは、イスラム教徒が大半を占める。町のプロテスタント教会が運営するこの教育機関は長年、宗教的寛容の象徴とみなされてきたが、今回の襲撃により、30代半ばの兄弟はここの最も悪名高い卒業生となった。

 兄弟は現在も、マラウィ市内に潜伏し、トンネルや防空壕といった現地での知識を生かしながら軍への抵抗を続けている。戦闘により周辺地域は廃虚と化した。

 マラウィ自治政府のジア・アロント・アディオング(Zia Alonto Adiong)議員は、「われわれには、この憎しみがどこから来るのかわからない」と首をかしげる。

 ミンダナオ州立大学(Mindanao State University)の元学部長で、娘がマウテ兄弟の一人と一緒に学校に通っていたというドゥマ・サニ(Duma Sani)さんは、地元住民の大半は異教徒の殺害を呼び掛けるイスラム過激派を支持していないとAFPに語った。

 サニさんによれば、「彼ら(銃で武装したマラウィの戦闘員)は若く、コーランを独自に解釈している。高齢者を敬うこともない」という。