「キンドルは中国で誰に負けたのか?」 新サービスに押し流されて撤退
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【6月10日 東方新報】米国のアマゾン・ドットコム(Amazon.com)は6月2日、中国最大のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」で、電子書籍リーダー「キンドル(kindle)」の中国撤退を発表した。ささやかれていた撤退が現実のものとなり、中国メディアは「キンドルは中国市場で誰に負けたのか?」といくつかの要因を挙げている。
キンドルは2013年に中国に進出。当初は順調に売り上げを伸ばし、2016年末にはアマゾンにとって世界最大の市場に成長した。2018年までに数百万台の端末を販売。同年の電子書籍は70万冊に達し、2013年の10倍近くに増加していた。しかしその後は低迷し、昨年末から端末が品薄状態となっていたため、撤退がうわさされていた。キンドルによると、今後は2023年6月に中国のストア運営を停止し、その1年後にはアプリ自体を削除する。購入済み電子書籍はそれまでに別途ダウンロードする必要がある。
撤退に至った第一の要因は、中国メーカーの台頭だ。人工知能(AI)開発企業の科大訊飛(アイフライテック、iFLYTEK)、スマートフォン大手の小米科技(シャオミ、Xiaomi)や華為技術(ファーウェイ、Huawei)などが中国人の好みに合わせた電子書籍リーダーを発売。相対的にキンドルに対しては「更新が遅い」「転送が困難」という不満が出ていた。ただ、それでも電子書籍リーダーの市場でキンドルは6割のシェアを占めていた。
第二の撤退要因は、スマホアプリやオーディオブックによる攻勢にさらされたことだ。中国のIT大手、騰訊(テンセント、Tencent)が2015年から始めた読書アプリ「微信読書」は無料書籍が多く、SNS「微信(ウィーチャット、WeChat)」を通じて友人と本の紹介や感想を共有する機能があり、利用者は2億人を超えている。また、ダウンロード数が6億を超える音声サイトアプリ「喜馬拉雅(Ximalaya)」をはじめ、「荔枝」「蜻蜓」など多くの音声プラットフォームが誕生。小説の朗読やビジネス書の解説など、本を「読む」のでなく「聞く」ことが新たな生活習慣となっている。
そして第三の要因は、海外ではティックトック(TikTok)の名で知られる抖音(Douyin)や快手(Kuaishou)などのショート動画プラットフォームの躍進だ。2021年のショートビデオユーザーは8億8000万人に達し、1日の動画視聴時間は約120分に上る。
先端技術として中国に上陸したキンドルだが、その後に中国で次々と登場したサービスに押し流される形となった。(c)東方新報/AFPBB News