【8月3日 AFP】ロシアと国境を接するフィンランド南東部ヌイヤマー(Nuijamaa)の国境検問所には、ロシア人観光客を乗せたバスがひっきりなしにやって来る。フィンランドの穏やかな夏を楽しむ予定を立てている人や、欧州の他の国々に向かったりする人もいる。

 フィンランドは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指しているが、ロシアに接する欧州連合(EU)加盟国では唯一、ロシア市民に観光ビザを発給している。

 ロシア第2の都市サンクトペテルブルク(St. Petersburg)出身のボリス・スロフツェフさん(37)はAFPに、「ここには12年も旅行で来ている。自然や湖がある素晴らしい国だ」と語った。

 EUが領空にロシアの航空機の乗り入れを禁止して以降、フィンランドは欧州の他の国々に向かうロシア人にとって重要な経由地となった。ただ、こうした状況を歓迎していないフィンランド人も多い。ウクライナ人が残虐な侵攻に苦しむ中、ロシア人がフィンランドの夏を謳歌(おうか)する状況に憤っている。

 地元に住むキルシ・イルジンさんは「ロシア人がフィンランドに自由に旅行できるのは正しくない。制裁の原則を崩すことになる」と述べ、「何らかの制限があって当然だ」と訴えた。

■ビザ発給制限を検討

 穏健保守の野党、国民連合は今週、ウクライナとの連帯を示すため、ロシア人に対する新たな観光ビザの発給を停止するよう提案した。同党のユッカ・コプラ(Jukka Kopra)議員は「状況は耐えがたい」と述べた上で、「民間人や女性、子どもを含めてウクライナ国民が殺害されている一方で、ロシア人は欧州で余暇を過ごしている」と指摘した。

 議会では、ビザ発給制限の提案に対して超党派の支持があるようだ。サンナ・マリン(Sanna Marin)首相が不在の際に代行を務める与党・社会民主党のアキ・リンデン(Aki Linden)議員は「個人的に、制限を拡大すべきだと思う」と語った。この案件は現在、外務省が検討中だという。

 リンデン議員は、「最大10万件に上る発給済みのビザが問題を複雑化させている」と話した。外務省はAFPに「現在、代替案を検討している」と明らかにした。

 欧州諸国間で出入国審査なしに国境を越えることを認めるシェンゲン(Schengen)協定に加盟し、ロシアと国境を接するエストニアやラトビア、リトアニア、ポーランドはロシア人に対するビザの発給を制限している。

 ロシアのドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)大統領府報道官は、ロシアはビザの制限に対して「極めて否定的に反応するだろう」と述べた。