米消費者に「チップ疲れ」 代わりに最低賃金導入の動き
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【4月23日 AFP】チップを渡すか渡さないか、それが問題だ。チップ文化が根付いている米国だが、多く人がこの問題に悩むようになった。スーパーや生花店でも渡すべきか、と。
首都ワシントンでサラダとジュースを手に、「どちらにせよ罪悪感を抱く」と話すのはマット・スコットランドさん(41)。
米国ではレストランでチップを渡すのは当たり前。これまでは話題にさえならなかった。通常、飲食代の15~20%で、これが接客業務担当者(チップ制労働者)の収入の大きな部分を占める。
しかし、持ち帰り用にサンドイッチを購入した場合はどうだろう。スコットランドさんは「渡さない」と答えた。ただ、担当者の対応が特別良かったり、自身が太っ腹な気分だったりする時はこの限りでないとも言う。
「正解」はない。チップを渡せば無駄遣いを後悔するかもしれない。渡さなければ渡さないで、店員に悪いことをした気持ちになる。
「あまりいいシステムではないと思う」と、スコットランドさんはため息をついた。
こんなジレンマに陥る姿が見られるようになったのは、最近になってからだ。以前ならチップを渡さなかった場面でも渡すようになったことで、消費者の負担が増えているのだ。
こうした状況について専門家は、米国人の間に「チップ疲れ」が出てくる可能性があると指摘する。過労やインフレに直面する中で、誰にどれだけチップを渡せばいいのか、分からなくなるというのだ。
そしてこの問題は、サービス業界における報酬制度をめぐる議論を今後、加速させる可能性がある。
■プレッシャー
サウスフロリダ大学(University of South Florida)でマーケティングを教えるディパヤン・ビスワス(Dipayan Biswas)教授は、チップ文化の拡大は、近年の電子決済の利用にも呼応していると話す。
店舗で料金を支払う際に示されるスクリーンには、チップについての項目もある。渡したくない時には、「チップなし」のボタンを押さなければならない。
「それは多くの人にとって気分の良いものではない」。ビスワス氏は、「店舗側は人々の罪悪感に付け込んでいる」と指摘する。
弁護士のハンナ・コバンさん(30)は、プレッシャーを感じて以前よりもチップをより多く渡すようになったと話す。
「チップを渡すべきか、どれだけ渡すべきか、20%相当でいいのかなどと、考えるようになった。スマホでついついチップについて調べているような気がします」