【1月14日 AFP】米ブルームバーグ通信は13日、中国政府が同国製の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業について、米実業家イーロン・マスク氏への売却を検討していると報じた。ティックトック米国事業を直ちに売却するよう求める米国法が19日に発効することへの対応だという。

ブルームバーグは匿名の消息筋の話として、中国政府内で議論されているシナリオの一つは、マスク氏が所有するSNS大手X(旧ツイッター)がティックトックの親会社である中国IT大手の字節跳動(バイトダンス)からティックトック米国事業を買収し、プラットフォームのXに統合するというものだと報じた。

ティックトック米国事業の評価額は、400億~500億ドル(約6兆3000億~7兆8700億円)と推定される。

マスク氏は現在世界一の大富豪とされるが、ブルームバーグはマスク氏がこの取引を実行する方法や、他の資産を売却する必要があるかは不明だと報じた。

米政府は昨年、バイトダンスに対し、ティックトック米国事業の売却か閉鎖を求める法案を可決した。同法はドナルド・トランプ次期大統領の就任前日の19日に発効する。

米政府はティックトックについて、中国政府にデータ収集やユーザーに対するスパイ行為を許している上、プロパガンダの拡散ルートになっていると主張。中国政府とバイトダンスは米政府の主張を強く否定している。

ティックトックは同法に異議を唱え、米最高裁まで上訴している。

10日に行われた最終口頭弁論では、9人で構成される判事の多数が、売却の強制は合衆国憲法修正第1条が保障する言論の自由を侵害するというティックトック側の弁護人の主張に懐疑的な様子だった。

ブルームバーグは、中国政府によるマスク氏への売却検討は「まだ予備段階」として、中国政府内でも取引の進め方について合意に至っていないと報じた。

バイトダンスが中国政府の計画をどの程度把握しているかも不明だという。

AFPはティックトックにコメントを求めたが回答は得られていない。だが、米娯楽誌バラエティは代表者が「完全なフィクションにコメントする予定はない」と回答したと報じている。(c)AFP