【2月15日 AFP】米国のドナルド・トランプ政権が14日、疫学調査局(EIS)所属で「疾病探偵」と呼ばれる精鋭の研究者の半数近くを解雇したと情報筋が明らかにした。鳥インフルエンザへの懸念が高まる中、公衆衛生への取り組みに打撃を与えている。

実業家イーロン・マスク氏率いる米政府効率化省(DOGE)は、連邦政府の人員削減を推し進めており、13日に厚生長官への指名承認を受けたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏も国内の保健機関の刷新を明言している。

ワクチン懐疑派として知られるケネディ氏は感染症科学にも懐疑的で、細菌による感染症や、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染によるエイズ発症を疑問視している。

EISで解雇された職員の指導を受け持っていた米疾病対策センター(CDC)の上級疫学者は「非常に腹立たしい」と述べ、「感染症がいつまた新たに拡大するか分からない中、国内でおそらく最も専門的な知識を持つ人々が解雇されている」と話した。

1951年に設立されたEISは、博士課程修了後の研究者を対象とする2年間の育成プログラムで、職員は1970年代にアフリカで初めて流行が拡大したエボラウイルス病(エボラ出血熱)や、最近では米国で新型コロナウイルスの症例が確認された初期段階など、感染症調査の最前線に立ってきた。

前述の疫学者は「こうした職員がいなければ、世界から天然痘を根絶することはできなかっただろう」「こうした職員が世界中に散らばり、ぬかるみの中を歩き、ボートで川を移動しながら天然痘を根絶した」と話した。

「疾病探偵」として知られるEISの研究者は毎年、医師、看護師、科学者など数百人の応募者の中から選抜採用され、ジョージア州アトランタのCDC本部をはじめ、国内各地に配置されている。

CDCの歴代所長にはEISでのキャリア経験者が数人おり、EISは公衆衛生に関する指導者を輩出してきた。

2クラスに約140人の職員が在籍し、2024年にスタートしたクラスは14日午後に解雇メールが届くと通知があり、2023年のクラスは今のところ保留との連絡があったという。

米公衆衛生局経由で採用された約30人については、当面は解雇を免れるとみられている。(c)AFP