「白鵬85の3」は2010年、同町の生田英則さん(故人)の下で生まれた。父は「勝忠平」で、母の父は「白清85の3」。2017年の第11回全国和牛能力共進会(宮城全共)総合評価群の肉牛群で、白鵬を父に持つ牛の枝肉がトップを獲得。県内外から引き合いが強まり、県中央家畜市場の子牛平均価格が20年、21年と全国1位になる経済効果をもたらした。
お別れ会は、県内生産者で構成する県和牛生産者連絡協議会などによる実行委員会が主催した。玉串拝礼や慰霊の言葉で功績をたたえた。会場前では鼻環や耳標も展示。栗原会長は「長く後世に語り継がれる功績を残した。次世代の和牛生産に尽力していくこがこれからの使命だと考えている」と述べた。
「現れた時の衝撃を忘れられない」と話すのは、智頭町の畜産農家・岸本真広さん(45)だ。年間出荷頭数約100頭のうち白鵬の産子が50~60%を占める。温厚な性格で飼いやすく、さしが入りやすい脂肪交雑能力の高さを魅力に上げる岸本さん。「白鵬に出会えたおかげで今まで経験できなかったことを味わわせてもらえた。大変感謝している」と話した。
■繁殖農家再開「和牛王国再び」 生産者の孫
世紀の名牛を生産した生田さんの孫、智之さん(25)は、幼いころに祖父と父が休まずに牛を育てる姿を見て育った。「盛大なお別れ会。本当にすごい牛を育てたんだと、改めて感じている」。
祖父と父が亡くなった後に一度廃業したが、20年4月に三朝町で繁殖農家を再開した。智之さんは「種雄牛作りに励み、もう一度、鳥取県を日本一の和牛王国にしたい」と意気込む。
「白鵬85の3」の登場で、県は県産和牛の遺伝資源保護などを目的にした条例を制定。精液の販売を県内に限った。24年12月時点で4万6007本の精液を製造し、3万4870本を販売。産子は1万4059頭生まれ、そのうち3851頭が繁殖雌牛に登録されている。
昨年11月末に胃が風船のように膨らむ「第1胃鼓脹症」を発症し、徐々に元気がなくなっていた。同町の県畜産試験場内で獣医師が懸命の治療を続けたが、「盲腸拡張症」との合併症による呼吸障害で永眠した。
(西野大暉)