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労働環境の不協和音を生きる―労働と生活のジェンダー分析― 単行本 – 2024/12/10

5.0 5つ星のうち5.0 1個の評価

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生きるために働いているはずが、
労働によって日々の生活やいのちが脅かされる実情がある。
耳を澄ませて不協和音を聴けば、不協和音が我々に問いかけてくる。

社会学、文学、社会福祉学、歴史学、経済学といった多角的なアプローチから社会政策に迫る試み。コロナ禍が顕在化させた「労働環境の不協和音」を、社会政策の両輪である「労働」および「生活」という切り口から描き出す。
コロナ禍という未曾有の事態は「労働環境の不協和音」を響かせた。社会政策の初学者とともに〈生きるために働く〉ことをジェンダー視点から理解し再構築したい。歴史縦断的、領域横断的なアプローチが労働と生活を切り結ぶ、社会政策とは何かを考えるきっかけとなる一冊。


目次
はしがき  (堀川祐里)

序 章 「社会政策とはなにか」という問いの難しさ  (堀川祐里)
    ――〈生きるために働く〉労働者の生活を科学する

第一章 バリキャリ女子の欠点?  (五十嵐舞)
    ――『家政夫のナギサさん』にみる労働力の再生産とフェミニズムの脱政治化
  第一節 家事ができないバリキャリ女子×家事得意王子  
  第二節 〈完璧であること――欠点もあること―レジリエンス〉  
  第三節 仕事も家事も子どもも―〈完璧であること〉  
  第四節 労働問題の不可視化、家事ができないことへの焦点化―〈欠点もあること〉  
  第五節 維持される性別役割分業――〈レジリエンス〉(一)  
  第六節 有償労働から無償労働へ――〈レジリエンス〉(二)  
  第七節 「王子様」の獲得とは別の物語を

第二章 ジェンダー平等は健康の権利を放棄しなければ得られないか  (堀川祐里)
    ――労働力の再生産から考える生理休暇の意義
  第一節 ジェンダー平等は男性vs女性の闘いではない 
    第二節 生理休暇の獲得と権利を守り抜いた人々  
  第三節 男女雇用機会均等法の制定に向けて迫られた二者択一  
  第四節 女子差別撤廃条約の解釈の問題点  
  第五節 労働者の健康の権利を守るためには

第三章 労働災害から身体を守る  (鈴木 力)
    ――女性港湾労働者による労災防止の営み
  第一節 労働災害を防ぐ女性港湾労働者たちの協同と熟練  
  第二節 関門港の女性港湾労働者と労働災害  
  第三節 女性港湾労働者による労災防止の自主的な取り組みとその背景  
  第四節 労働災害を防いでいたものは何か  

第四章 「産業癈兵」の誕生  (新川綾子)
    ――戦間期日本の工場内労働災害及び救貧政策におけるジェンダー構造
  第一節 戦間期の労働災害から読み解く試み  
  第二節 戦間期の工場労働者の負傷・疾病
  第三節 工場内医療環境の実態  
  第四節 「産業癈兵」の誕生
  第五節 男性工場労働者と女性工場労働者の負傷・疾病対応の相違とは  

第五章 移住によって観光業へ参入する女性の労働と世代間の再生産  (清水友理子・跡部千慧)
    ――妊娠・子育て期にカフェ・ゲストハウスを家族経営した女性のライフヒストリー
  第一節 宿泊業における労働環境  
  第二節 先行研究におけるゲストハウスを運営する女性に関する言及  
  第三節 ゲストハウス運営の多岐にわたる労働を捉える方法  
  第四節 移住、ゲストハウス/カフェ経営と出産子育て 
  第五節 彼女たちの余暇はどこへ行ったのか  

第六章 なぜ日本の「ケア労働」は低賃金なのか  (跡部千慧)
    ――ジェンダー視点からの再生産労働の考察
  第一節 保育士の一〇と現代社会  
  第三節 日本社会で既婚女性が働くと生じる「ケア」の問題  
  第四節 「ケア労働」を重視する社会政策  
  第五節 「いのちの尊厳」が保たれる社会に向けて

第七章 社会福祉の現場において〝ふたつの生活〞を守る  (岡 桃子・跡部千慧)
    ─―社会的養護における施設職員の生活と施設で暮らす子どもたちの生活
  第一節 福祉の現場において長期間就労するイメージを持ちづらい学生
  第二節 先行研究で語られる社会的養護施設職員の「労働と生活」  
  第三節 施設長の実践を社会政策との関連から考察するための研究方法  
  第四節 「職員がやりとげたい想い」を実現するA氏の施設運営  
  第五節 「子ども家庭福祉」分野における〝労働環境の不協和音〞の解消――日本のソーシャルワークの展望

第八章 グローバル東京をクィアする  (大島 岳・久保優翔)
    ――音楽実践をつうじた多文化共生と共創
  第一節 新宿二丁目における性の多様性とグローバルシティ・東京  
  第二節 クィアネスでつながる音楽実践――DJとして働く生活史と異種混交的文化  
  第三節 日本(人)が怖い――新宿二丁目の外を生きる困難  
  第四節 多様な人々が生き生きと働くことができる「生きられる都市」に向けて

終 章 「労働環境の不協和音」を生きるには  (跡部千慧・鈴木 力)
    ――「生活」が極限まで切り詰められた「労働」から〈生きるために働く〉ことの復権へ

あとがき  (堀川祐里)

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 晃洋書房 (2024/12/10)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2024/12/10
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 250ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 477103883X
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4771038837
  • 寸法 ‏ : ‎ 18.9 x 12.9 x 1.6 cm
  • カスタマーレビュー:
    5.0 5つ星のうち5.0 1個の評価

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堀川祐里
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上位レビュー、対象国: 日本

  • 2024年12月22日に日本でレビュー済み
    社会政策の観点から、職場で発生する問題をジェンダー視点で分析した本。多数の著者が書いていて論文集のようだが、タイトルで不協和音と表現される日本の男性型社会の「しくじり」が描かれるのは各章で共通する。学問的アプローチが異なるので読みづらいと思いきや、ていねいに別の章の紹介をしてつないでいたり、分析する年代が大きく飛ばないよう工夫されていて、トピックの広がりが面白く感じる。
    編者による「男女雇用機会均等法」時代の生理休暇の扱いを考察した章から読んだ。史実が理解できただけでなく、現在に至る女性労働力政策で女性の当事者性が封じ込まれた地点を知る思いがしたし、将来もその延長線上なら、日本は危険水域にあるのではないか、と頭を抱えた。勉強になる本でおすすめです。
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