他のレヴュアーさんたちも投稿されているように人間的かつ緻密な50年前の名著ですが、
50年後の今だからこそ新鮮でリアルなのが、
「自らを取り巻く外的な環境が大きく変わった」にも関わらず、
思い込みや常識が集団の対応を遅れさせる「符号化様式(コード)」について、
集団が思い込みを考え直すのは「強制力のある事実」を人々が認識した時、
つまり、危機(クライシス)が起こった時、、の箇所です。
まさに今、
コロナ禍や人口減少に伴う「地方消滅」に迫られた自治体組織の現場などが想像されるわけです。
このような強制力のある局面を迎えた今、
情報量が多すぎて「もう限界!」などともはや、言っておれず、
期待したいのは『情報と秩序/セダー・ヒダルゴ著』などに見られるような”情報の秩序化”です。
「正しい情報の共有」というシンプルな課題について、
専門家にしろ、アマチュアにしろ、21世紀の情報量のコントロールをいかに背負いきれるのか、
晩年は”複雑系サンタフェ研究所”の設立に尽力された故ケネス・アロー氏ですが、
アロー氏が希望を見出だされていたのは、組織に潜む個人間の情報、その”情報の自己組織化”では?
と、思うのは私だけでしょうか・・。
P24
われわれがここで関心を払うのは、社会の組織における個人間の関係の役割である。
(社会の基本的な資源、すなわちその自然的資源、人的資源、技術資源をベースに)
P67
ある特定の芸術の流派の理解、そして実は芸術家自身による流派自体の理解もまた、
ある程度それに慣れてくるということに依存している。・・・・
すなわち、芸術的なビジョンの上での革新がまず発生し、そしてそれが普及する。
次いで、人々がそれに慣れていくにつれて、
同様なシグナルの繰り返しの価値が減少していく(飽きられる)。
そしてついに新しいシグナル、すなわち、この新たなシグナルからの出発を理解する能力が増大してくる(革新性が生まれる)。
P71
もし同じ産業に属する人々がおそらくは経験が共通であるという理由によって、
自分達の間でコミュニケーションが容易であることを発見するとすれば、、、
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組織の限界 (ちくま学芸文庫 ア 39-1) 文庫 – 2017/3/8
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現実の経済において、個人より重要な役割を果たす組織。その経済学的分析はいかに可能か。ノーベル賞経済学者による不朽の組織論…
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2017/3/8
- 寸法10.6 x 1.1 x 14.8 cm
- ISBN-104480097767
- ISBN-13978-4480097767
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2017/3/8)
- 発売日 : 2017/3/8
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 176ページ
- ISBN-10 : 4480097767
- ISBN-13 : 978-4480097767
- 寸法 : 10.6 x 1.1 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 419,645位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,522位ちくま学芸文庫
- - 4,745位社会一般関連書籍
- - 6,620位その他の思想・社会の本
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- 2017年5月25日に日本でレビュー済みAmazonで購入ノーベル賞経済学者である、ケネス・J・アローによる“組織の意思決定論”。ここでアローの言う「組織」とは、“意思決定をする人間集団”のことであり、国家機関から企業や自治体、町内会などの、ありとあらゆる人間集団が含まれる。この本によってアローは、「組織」は情報に基づいて意思決定を行うのだが、人間の情報処理能力は限られているために、常に正しい判断ができるわけではないことを「限界」として説いている。
個人の価値判断を集計した結果、そこから必ずしも民主主義的な“社会的合意”を導き出せるわけではないことを証明した、「不可能性定理」を示したアローは、本書によって、“人間が作る社会には「限界」があることを意識して、常に修正の余地があることを考えながら、運営していくべきだ”と言っているように見受けられる。
エコノミスト(経済分析者)のアローが述べる「社会」は、「価格システム(市場)」と、それを支えて補完する「制度(国家システムや社会保障など)」の二つの要素から成立している。「価格システム」とは、モノに価格(材料費や従業員の給料などのコストや、経営者の利益が含まれている)がつけられて取引されることで、モノやお金を自動的に社会にいきわたらせることができるシステム=合理的な財の社会分配システム、とみなされている。もう一方の「制度」は、①“商売の契約”を保証する法律などの司法や警察(例えば、所有物が他人に強奪されてはならない)を機能させる“国家システム”、②「市場」での経済活動を補完する社会制度(例えば、格差をある程度是正する社会保障制度など)、である。
本書では、このような社会を形成している、人間集団=組織が時に誤った判断を下してしまうのはなぜか、について考察している。
「組織」をアローは、「節約」の原理でとらえている。まず、組織の「構成員(メンバー)」は、「権威(代表者たち)」を立てる。これは、人数が多ければ、そのつど全員が集まって決定を行うのは非効率であるから、「権威(代表)」を立てて「意思決定の集権化」をするのである。(例えば、国家であれば国会や内閣であり、企業であれば取締役会など)
そして、その「意思決定」のために必要とされるのが、「情報」である。人間は、膨大な情報を処理しきれないため、「節約」の原理を働かせて、「受け取られた情報は、最終決定選択のための価値を失うことなしに、(組織内部への)再伝達のためにはるかに小さな容量に変形」させなくてはならない。と、いうのも、「組織における情報の経済は、実は受け取られた情報の多くが役立たないから起こる」のである。例えば、明日に雨傘を持っていくかどうかの意思決定のために、詳細な気圧配置の情報は必要なく、テレビや新聞などの“天気予報”のような「小さな容量に変形」された情報で十分なのである。
しかし、そのような「節約」の原理にも陥穽がある、とアローはいう。①本当は必要であった情報の取りこぼし、②「符号化様式」の罠、である。この「符号化様式」を、アローは「世界を見る仕方」としている。大抵の人にとっては、“世界観”や“常識”として理解されている事柄である。
「符号化様式」は、「個人」や「組織」が情報を素早く理解して処理をする効率を高くする一方で、変化を見落としがちにする面もある。「自らを取り巻く外的な環境が大きく変わった」にも係わらず、集団の対応が遅れるのは、「符号化様式」による“思い込み”から逃れるのが難しいからだ。アローは、集団が考え直すのは、「強制力のある事実」を人々が認識したとき、要するに「危機(クライシス)」が起こったときであろう、という。
とはいえ、アローは「組織」が「変化する個人」の集まりであることに、可能性を見ている。人間が作る以上、“完全な社会”は難しいだろうが、努力し続けることはできるのである。
- 2020年1月26日に日本でレビュー済みAmazonで購入ノーベル経済学賞も受賞し、有名な「不可能性定理」を示したケネス・アロー氏による本です。本書では市場(および価格メカニズム)では解決できない領域について威力を発揮するものとして「組織」をとりあげ、組織はなぜ機能するのか、あるいはなぜ機能しなくなるのか、を文章で解説されています。アローが、数式ではなく文章だけで何かを主張している、ということだけでユニークな本だと思いますが、アローの文章は含蓄があるというか、ゆっくり噛み砕いて読み進めないと理解が難しいところもありました。
私が面白いと感じたのは、通常、組織論を経済学の視点から語る際には、「情報」の流れに焦点をあててその効率性、つまり情報収集コストや分析コストの視点から論ずるのが王道なわけですが、本書では、そのような視点も当然含めつつ、権威、責任、あるいは利害というという点についても述べているところです。権威には、社長のような肩書きもありますが、アローによれば交通規制などのルールも権威に含まれます。つまり何らかの強制力を持つもので、この背後には、各人が持つ情報が限定的だから他者に意思決定を委ねている、ということがあるのだと理解しました。そうすると、現代社会のように、人々がスマホを駆使して多くの情報にアクセスできるようになればなるほど、情報の保有や処理といった観点からの既存の「権威」が薄れることになるわけです。そして各人に意思決定と「責任」が移譲されていく、ということで、本書ではエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」についてアローは言及していましたけれども、権限と責任が移譲された人間は、その重圧に押しつぶされて自由から逃走してしまうのか・・・というシナリオも念頭には浮かびました。大変面白い本だったのですが、惜しむらくは、分量がかなり少なく、私としてはフルコースの2皿目くらいで食事が終わってしまった印象です(それで星4つとしました)。アロー氏にはもっと深く語ってもらいたかった、と感じました。
- 2017年5月16日に日本でレビュー済みAmazonで購入1970~1971年に行なわれたアローの講演を元にした論文である。アローは「不可能性定理の証明」でノーベル賞を取った学者であるが、その定理は「社会的な判断において、表明された個人の選好を集計して最適解を得ることは出来ない。」というもので、「どのような投票制度を作っても、個人の選好を満足する結果を得ることは出来ない。」と言うことになる。
このことを踏まえた上で、アローは経済学において、個人を主体としているが、実際には「組織体」が意思決定主体であり、「組織の意思決定」というものが個人の選好の単純な集積ではなく、独特の物になると言うことを先駆的に主張しているのである。(70年代以降に情報経済学が飛躍的に発展したことを考えれば、先駆的で慧眼であるといえる。)
つまり、組織は個人である組織成員が受け取る情報を個人個人が利用するよりも、より効率的に利用できる。このため、個人は色々な組織を作っているのである。組織に置ける情報の扱いは、情報交換におけるコストをミニマイズするために、組織成員の受け取った情報を集中して一元化して、そこで意思決定の判断をおこない、その決定結果を各成員に伝達するというシステムを構築している。この一元化された部署や個人が「権威」と呼ばれるものになる。「権威」による意思決定に各成員が服従するには、強制力や権威付けが必要であるが、それらは従来は各種の法制度やモラルや警察力等によって裏付けされていたわけである。
近年、政治の世界では旧来の権威に対して不服従であることが許容される事態になっている。つまり、旧来の権威付けでは権威による意思決定が尊重されず、不服従になるのである。多数決ルール、雇用契約、法制度等の権威を裏付ける制度事態が疑われているのである。しかしながら、「権威」が組織における情報の効率的活用から導き出されている以上、どのように権威を権威づけるかという問題は残されているのである。
最近のポピュリズムやインタネットによる情報端員の多様化等による権威や秩序の衰退に問題意識を持つ場合の必読書ではないだろうか。☆5つを進呈したい。
- 2017年7月21日に日本でレビュー済みAmazonで購入経済学の見地から、組織の基準や目的について記述されている。
あくまで総合的な記述になっていて、具体的な局面や場面、歴史的な場面を省いあることから、
経験的に何か具体的なデータをもっていて、その分析の基軸やヒントがほしいなあ、という
読み手にとっては、さまざまなヒントが生まれるのではないか。
私のような、初学者でもない本読みには面白いところが多です。
- 2017年8月6日に日本でレビュー済み経済学の古典的名著なのだそうだが、私はやっぱり頭が悪いらしい。
さっぱり頭に入ってこず、最後まで読み通すのが苦痛だった。
すみません。
- 2018年2月5日に日本でレビュー済みAmazonで購入長らく廃版となっていた。原書で読めばよいのだけれども、こうやって文庫で日本語版が読めるのはやはりうれしい。