藤原季節「僕は空っぽでいたい」出演相次ぐ注目株の願望

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聞き手・佐藤美鈴
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 「自分の居場所がどこなのか分からない。その迷いが、僕は結構強い気がします」「これからもっといろんな選択肢が自分の目の前に現れるけど、それでも空っぽであり続けられるかどうか」

 映画「佐々木、イン、マイマイン」「くれなずめ」で存在感を示し、大河ドラマ「青天を衝(つ)け」にも出演する注目の若手俳優、藤原季節。公開中の主演映画「のさりの島」では、オレオレ詐欺を企てるも、熊本・天草のやさしい空気に巻き込まれていく青年を演じる。「いいこともそうでないことも、今ある全ての境遇は、天からの授かりもの」という天草地方に伝わる言葉「のさり」から、遺作となった原知佐子さんの思い出、目指す姿まで、現在の思いを語った。

 ふじわら・きせつ 1993年生まれ、北海道出身。2014年に本格的に俳優活動をスタート。映画「止められるか、俺たちを」「his」「明日の食卓」、大河ドラマ「青天を衝(つ)け」などに出演。「のさりの島」は熊本、東京で公開中、順次各地で。

 ―――コロナ禍で「のさり」について思うことが増えた、と

 コロナで「のさり」という言葉に対する意識も変わりました。

 例えばコロナの影響でこの映画が多くの人に見てもらえなかったとしても、それも、のさり。だけど10年かけてこの映画を広め続けることができる。自分を待ち受ける苦難すらも自分の力に変えていく、という力強さがこの方言にはあるんです。

名前の無さ 主人公の現代性

 ――今回の主人公、どう解釈して演じましたか

 役名が「若い男」だったんです。それがすごい気に入って。名前の無さみたいなものは、現代人というか今の若い人たちが結構感じていることなんじゃないかな。

 匿名とかが増えてきたっていうのもあるんですけど、多くの人が特別な人になりたい、代えのきかない存在になりたいと思いつつ、現実では代えがきく存在というか、自分が誰なんだろうみたいな悩みを抱えている。

 最初脚本を読んで、その旅の果てに天草に行き着いて、嘘(うそ)とかまやかしの世界に取り込まれていく、というストーリーが個人的には現代性があるというか、いいなぁと思ったんです。

 ――名前だけでなく背景や素性もほとんど語られません

 そうなんです。実はちょっと語っていたせりふはあったんですけど、監督が編集で無くしたらしくて。

 確かに分からないほうがいいっていうこともある。本当のことを描くだけじゃなくて、描かない、という描き方もあるんだな、という風に思いました。

 ――分からない役を演じる難しさもありましたか

 映画の中で、みつばちラジオというラジオ局の朗読が流れてくるシーンがあって「魂のおろついた」という言葉が出てきます。

 これがこの主人公を演じる上ではキーワードになったんじゃないかと、後から振り返って思いました。僕自身が非常に魂のおろついた人間なので……。それが結構、そのまま映画に出ているかな、という風に思います。

 ――魂のおろついた、とはどういう意味なのでしょうか

 魂のおろついたっていうのはやっぱり、ひとつの居場所にとどまることができない、それは自分の居場所がどこなのか分からないから、ということだと思う。その迷いが、僕は結構強い気がします。

 ――どんなときにそう感じるのでしょうか

 今の仕事をしていて思わなかった日はないですね。手放しに、楽しいと思える瞬間なんてほとんどない。

 魂がずっとうろうろしている…

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この記事を書いた人
佐藤美鈴
デジタル企画報道部|Re:Ron編集長
専門・関心分野
映画、文化、メディア、ジェンダー、テクノロジー