じわ…じわ… 広がる麻雀 コロナ禍経て人気 イメージの変化も

西岡臣
【動画】麻雀が人気 巣ごもり需要、イメージ転換も=西岡臣撮影
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 新型コロナウイルスの感染拡大でマージャンが注目されている。「おうち時間」を家族や友人と過ごすにはぴったりだと新たに始める人も増え、マージャン卓の売り上げが伸びたり、アプリのダウンロード数が増えたりしている。従来の、たばこの煙の中、徹夜で……、というイメージも変わりつつあり、知的な競技として広がりを見せている。

「無駄遣い」 あきれられても…

 「ロン!」

 大阪市都島区の会社員下田勇人さん(48)は週末、「雀荘(じゃんそう)下田」と題して自宅で娘(12)と妻とマージャンを楽しむ。焼きそばや飲み物を用意し、勝った人から好きなアイスを選んだり、皿洗いする人を決めたりする。大学時代からマージャンをたしなんでいた下田さんは昨年10月に全自動卓を約15万円で購入。積む手間もいらず、マージャンを楽しめているという。妻には「また無駄遣いして」とあきれられたが「全自動卓はマージャンを趣味にする人にとって一番のぜいたく。『父ちゃんから上がった!』と娘も喜び、家族とのコミュニケーションツールにもなります」。

 同市中央区の会社員渡辺裕太さん(25)は昨年4月の緊急事態宣言を機に卓を購入。「大手を振って外出出来ない中で、良い遊び道具になっている。値は張るけど、買って良かった」と満足げだ。

家庭用の卓 売り上げ好調

 マージャン用具を製造、販売する大洋技研株式会社(和歌山県御坊市)では昨年4月の緊急事態宣言以降、家庭用の全自動マージャン卓がよく売れている。2020年度の販売数は前年比約2割増しとなり、昨年12月には前年同期比2倍以上の約200台を記録した。同社が販売する家庭用全自動卓は税込み約15万円と約25万円の2種類。80万円近くする業務用に比べると、手が届く値段だ。

 担当者は「家庭用は業務用に比べて機能を絞ってコストダウンしたことで、求めやすくなった。さらに外出できなくなったことで室内ゲームとしてマージャンを始める人が増え、売れているのでは」と話す。

アプリも人気

 手軽に始められるアプリのマージャンも人気だ。ゲーム大手セガの「NET麻雀 MJモバイル」は2013年にサービスを開始し、昨年9月には1200万ダウンロードを突破した。現在もユーザー数やプレー時間が増加傾向にあり、コロナ禍で在宅の時間が増えたことが要因とみられるという。

 全国141カ所でマージャン講座などを開く一般社団法人ニューロンでは、ここ数年、50代以下の未経験者や子どもの受講者が増えている。さらに東京・大井町校では今年度の新規登録者のうち約3割がアプリの利用経験があると回答するなど、コロナ下でアプリを入り口にマージャンを始めた人も多くいるようだ。

 池谷雄一代表理事(48)によると、コロナ禍で、対面型の習い事の受講者が少なくなる中、マージャン講座は、満員になることもあり、抗ウイルス加工された牌(はい)を使ったり、卓上にシールドを立てたりと感染対策をして対応しているという。

『健全な趣味』 イメージの変化も

 女子高生を主人公にしたマージャン部のアニメが流行したり、2018年にマージャンのプロリーグ「Mリーグ」が発足したりするなど、『頭脳スポーツ』『健全な趣味』というイメージに変わりつつある状況を、コロナ禍が後押ししたと見る。

 池谷さんは「マージャンは対戦相手の捨て牌(はい)を見て自分が切る牌を変えるなど、状況に応じて戦略を軌道修正する必要がある。また、毎回1位を目指すのではなく、色んなことを妥協して攻めと守りのバランスを判断する忍耐力も必要。野球で、打ちにいく球を見極めるのに近い。限られたパイを奪い合う、4人で行う商談のようなもので、大人にとっても大事な能力を子どものうちから養う機会になり、今後も知的な競技としてますます広がっていくかもしれません」と話している。

ユーチューバーの影響?ボードゲーム業界にも変化

 コロナ禍で人気が復活しているのはマージャンだけではない。

 全国でボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」を12店舗運営する株式会社ピチカートデザイン(東京都豊島区)によると、2020年のボードゲームの通販売り上げは、前年同期比8割増しになるなど、巣ごもり需要の影響がみられるという。

 同社の白坂翔社長(36)によると、近年、スマホゲームが浸透するなかで、あえて画面を使わないボードゲームは「コミュニケーションが楽しい」として若者を中心に人気が高まっていた。

 コロナ禍を経てユーチューバーがボードゲームを取り上げることも増えたといい、白坂社長は「一昔前なら『人生ゲーム』などしか知らない人がほとんどだったが、他のゲームも認知されるようになってきた。今後もじわじわと広がっていくのでは」と期待を寄せている。

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この記事を書いた人
西岡臣
映像報道部
専門・関心分野
スポーツ、環境問題、経済