住宅街にくっきり楕円形、周回1Kmの競馬場跡 車で迷い込むと……

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清水優志
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 シジミで有名な宍道(しんじ)湖の東岸近く、松江市内の住宅街をグーグルアースで見ると、まるで陸上競技場のトラックのように、不自然なほどきれいな「楕円(だえん)」が浮かぶ場所がある。住宅街を周回する道路のようだが、調べてみると、かつてあったある施設の名残で、完全な形で残るのは「全国唯一」だ。

カーブの見通しもやや悪く

 車で訪れ、道路を走ってみた。1周約1キロ。本当にサーキットかのような形だが、ところどころで対向車とすれ違うのに苦労するほど道幅が狭くなり、カーブの見通しもやや悪い。ふと、カーブミラーが付いた電信柱に目をやると、そこにヒントがあった。

 NTT西日本のプレートに記されていたのは「競馬場」という文字。郷土資料などを調べると、90年近く前、この場所に「松江競馬場」があったことが分かった。そしてこの「楕円」は、もともとは競走馬の走路だったのだ。

 1929年にオープンした松江競馬場は1周1千メートル、走路幅約16メートルのコースを備え、当時、「関西(西日本)随一の競馬場」と評されにぎわったという。だが、不況による経営不振や戦争の影響で、わずか8年後の37年に廃止となった。

 都市形成の歴史に詳しい岡山大学の樋口輝久准教授らの研究によると、戦後に外地からの引き揚げ者や建物疎開の対象となった人々による宅地需要が増え、広大な市有地である競馬場跡地に目が付けられた。46年度以降、「走路」とその外周に計59棟の市営の集合住宅が建設された。

 競馬場の建設の際、市が用地…

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