選手と代償の関係、日米で違いは 「話し合いで出場辞退」への違和感
日本代表に選ばれていた19歳の体操選手が、飲酒・喫煙を認めて直前に出場を辞退した今回のパリ五輪。米国のスポーツ事情に詳しいスポーツライターの谷口輝世子さんに、こうしたケースに選手が払う「代償」について、日米の比較をもとに考えてもらった。
米国の競技団体にも「行動規範」はあるけれど
体操の宮田笙子選手は今回、日本体操協会が定める代表選手の行動規範に反し、五輪出場を辞退したとされています。こうした規範自体は、米国の各スポーツ競技団体にも設けられているのが一般的で、日本だけが特殊というわけではありません。
たとえば米国体操協会の倫理的行動規範は、規範を設けている理由について、協会の会員は「スポーツ文化を形づくる力があり、またその責任を負っている」ためだと冒頭で位置づけています。そして規範は、まずは選手の権利章典から始まった上で、倫理的義務とその問題解決と続きます。
思うに、これらは元々は選手を罰するためのものではなく、選手が安全で公平な環境の下でスポーツできる権利を保障するためのものなのです。米国体操協会にもアルコールに関する規定がありますが、酩酊(めいてい)や泥酔状態になると、ハラスメントなどのトラブルも起こしやすい。いい競技環境を作るために、選手や指導者たちが、お互いに義務や責任を果たそうとするものなのです。
こうしたルールで大事なのは…