拡大する写真・図版気候科学者の江守正多さん

気候変動の話をしよう⑥ 気候科学者・江守正多さん

 私たちは、文明の分岐点にいる稀(まれ)な存在――。気候科学者で東大教授の江守正多さん(54)は、炎暑に苦しみ、災害が多発する時代を生きる私たちに、こう呼びかけています。地球温暖化の現状や社会の受け止め方の変遷、改善へのヒントについて聞きました。

気候変動への危機感を共有し、多くの人たちのアクションにつなげていく。そのためのコミュニケーションのあり方について、様々な立場の方から、意見を聞くインタビューシリーズです。

 ――まず地球温暖化の状況について教えてください。

 世界全体の平均気温で見ると、過去20年で約0.4度上昇しています。実は1998年と2000年のエルニーニョ現象の影響で、そこから2013年までは温暖化が止まったのではとの見方も出ていました。でもその後ぐんと平均気温が上がり、温暖化は進み続けていることが明白になり、その影響はより顕著になっていると言えると思います。

 私は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次・第6次評価報告書の執筆者のひとりです。2001年にIPCCの第3次報告書が出てから、2021年の第6次報告書まででみると、第3次報告書では「人間活動が地球温暖化の主な原因である『可能性が高い。66%以上の可能性でそう言える』」との評価だった。それが6次では「人間活動の影響で大気、海洋、陸域が温暖化していることは『疑う余地がない』」と書かれた。大きな変化です。

 世界気象機関(WMO)は今年、世界は今後5年の間に年間平均気温が、産業革命以前より1.5度以上高い年を経験する可能性が高い、という予測を発表。産業革命前からの気温上昇を1.5度までに抑えるのは、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の世界目標ですが、一時的にそれを超えることになります。

 待ったなしで深刻度が増していて、0.1度でも気温上昇を低く抑えるために脱炭素を急がなければならない状況です。

 ――その状況ですが、関心やアクションの広がりはどうですか。

 今年の台風10号もそうでしたが、海水温の上昇で勢力を強めながら接近して上陸する台風が増える。それがあたり前になることを感じさせた。記録的な猛暑もいや応なく経験していますから、気候変動について、心配している人は増えています。でも実際にどうすればいいのか、立ち止まってしまっている。

 私が理由として思い浮かべるのは四つです。

 ①もともと災害が多く、地震と同じように「人間の力ではどうしようもないこと」と受け止めがちである。

 ②マイボトルやマイバッグ、こまめな節電などを実践している。でも「自分の役割はこれで果たした」と免罪符のようになってその行動だけになっている。

 ③電気自動車の購入や太陽光パネルの設置は金銭面や手間の問題でハードルが高い。

 ④温暖化対策は、環境ビジネスを生み出すので、「特定の人の利益のためなのでは?」という不信感を持っている。

 ――立ち止まっている状況から、一歩進むために心がけていることは?

「地球が暑くてクマってます。」

 お得、健康、おしゃれ……伝わ…

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