第3回取り調べが「いじめ」になる理由 一線越えた元検事が語る代々の教え

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 「引きこもりのまま人生を終えれば、社会にマイナスは生まない」「捕まっても替えがきく」――。岸田文雄首相(当時)の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件の取り調べで、男性検事(36)はなぜ、木村隆二被告(25)に暴言を繰り返したのか。

 「『ガキだよね』と発言した横浜の検事と似ていますね。でもさらに悪賢いというか。さらに穏やかなんだけれども、中核は人格を否定するいじめのようなものだし、実質的に黙秘権を侵害している」

 かつて検察庁に身を置いた市川寛弁護士(第二東京弁護士会)はこう評価したうえで、「テクニック」の一つでもあると指摘した。

 「相手に言いがかりをつけて、とにかく声を出させる。何か反応を引き出すことによって、しゃべらせる。これは、私が上司や先輩から教わったやり方です」

 1993年に検事に任官した。身の潔白を訴える内容だとしても、しゃべってくれる容疑者は、黙秘に比べて起訴するのが「簡単だった」と振り返る。

 「裏付け捜査をして、『ウソをついている』という証拠がそろうこともあるから」。何も反証の材料を得られない黙秘が「一番こたえた」という。

 「思うような供述を得られずに日が経つと、どんどんプレッシャーがかかる。『しゃべらせろ』という上司の指示もあって、焦り、追い込まれていく」

 その重圧から、自身は一線を越えたことがある。

「犯罪者を真人間にできる」という考え

 佐賀地検にいた2001年…

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    浅倉拓也
    (朝日新聞記者=移民問題)
    2024年11月22日12時51分 投稿
    【視点】

    「大きな事件があると、被害者だけでなく市民も動機を知りたがる。だから検事はその要求に応え、自白させないといけないと思い、自らを奮い立たせる」 日本の事件報道では、逮捕の時が最も大きく、裁判になると扱いがしぼんでいくといった指摘はかねてあり

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