第1回「無理心中」635人の子が犠牲 「児童虐待の最たるもの」低い関心
親が自殺を図る際に子どもを殺害する「無理心中」を、国は児童虐待と位置づけています。2004年1月~22年度の過去約20年間で635人の子どもが亡くなりました。児童相談所職員の研修などを担う「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の川崎二三彦(ふみひこ)センター長は、「『無理心中』への社会の関心は低く、国も腰を上げない。亡くなった子どもたちの無念の思いは誰にも届いていない」と話します。
――「無理心中」について、児童虐待の「最たるもの」と指摘されていますね。
しつけ名目の身体的虐待などで子どもが亡くなった場合、親は「殺すつもりはなかった」「当たりどころが悪かった」などと言う場合が多い。罪名も傷害致死が目立ちます。
一方、「無理心中」は親側に子どもへの明確な殺意があり、罪名も殺人罪が目立つ。非常に深刻な児童虐待だと言えます。
――「無理心中」を図って逮捕された親の中には「子どもだけ残すのはかわいそう」などと語り、子どもへの悪意がないように見えるケースもあります。
児童虐待に当たるかどうかは、親の意図ではなく、子どもの立場に立って考える必要があります。子どもを愛するがゆえの行為であっても、それが子どもにとって有害であれば、児童虐待に当たります。児童相談所が虐待対応で参照する国の「子ども虐待対応の手引き」においても、こうした考え方が明記されています。
――「無理心中」では、どんな子どもたちが亡くなっていますか?
こども家庭庁の04年1月~22年度の統計では、身体的虐待(「無理心中」を除く)やネグレクトで亡くなった子どもの約半数を0歳児が占めます。4歳以下までで8割超になる。一方、「無理心中」で亡くなった子どもの年齢はもっとばらつきがあり、小学校高学年や中高生の死亡も目立ちます。
「無理心中」は、日頃は親が子どもを大切にしている家庭でも起きます。子どもの側も日頃から虐待を受けているわけではないので、親が自分を殺すとは全く考えておらず、非常に無防備なケースが多いと見られます。一方、親の殺意は明確なので、高年齢の子どもまで被害に遭うのだと思います。寝ている時に襲われたり、事前に眠剤を飲まされたりするケースもあります。
子どもの側からすれば、自分を育ててくれていた親が百八十度変わって急に自分を殺しにくるわけです。子どもたちはどんな思いだろうか、と思います。
――親側に見られる傾向は?
加害者が母親の場合と、父親…