記者解説 国際報道部次長・青山直篤
米大統領選でトランプ前大統領がハリス副大統領に完勝した。第1次トランプ政権は混乱が常態化し、前回の大統領選では敗北を認めず連邦議会襲撃事件を誘発した。米国民はそうしたことがあっても、あえてトランプ氏を選んだ。第2次政権は第1次と比べても強権的な性格を帯びるだろう。
「トランプ復権」は民主主義の退潮を示すのか。むしろ、その本来の姿がむき出しになったと見ることができるのかもしれない。
そもそも民主主義は、危うさやもろさをはらむものだ。その自覚と反省がなければ、社会は劣化していく。「復権」への驚きは、私たちが抱きがちな民主主義への過信やおごりの裏返しだ。
冷戦が終わりソ連が崩壊した時、世界は民主主義の「勝利」に酔った。その甘さに鋭い警鐘を鳴らしていたのが、欧州史の大家マーク・マゾワー氏(コロンビア大学教授)である。朝日地球会議の取材で9月に訪ねると、思考をめぐらせながらこう語った。
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「冷戦が終わり過度の幸福感(ユーフォリア)が広がった。だが、民主主義は比較的最近の現象であり、永遠に続くなどと考える特段の理由はない。そのことを人々に思いだしてほしかった」
マゾワー氏が現代の民主主義の起点とみるのが、欧州で四つの帝国が崩壊した第1次世界大戦だ。
ポイント
民主主義はもろい。「トランプ復権」はその反省を忘れた冷戦終結時に源流がある。戦後に米国が主導した国際秩序は大義を見失い、「力と利益」優先の方向に向かう。トランプ氏は日米関係の根幹部分の見直しを迫る。日本の針路を改めて考える時だ。
19世紀末から大英帝国の覇…