終戦直後の日本軍による虐殺「幸せ消えた」 7日に遺族の証言集会
太平洋戦争の終戦直後、日本軍がマレーシアで行った虐殺について被害者遺族が証言する催しが、横浜市内で7日に開かれる。教員らでつくる「アジア・フォーラム横浜」(吉池俊子代表)が主催。父を殺害されたシンガポール在住の呉麗娟さん(85)が、当時の様子や今も続く苦しみを語る。
呉さん一家は6人きょうだいの8人家族で、マラッカで暮らしていた。日本の降伏直後の1945年9月5日、父・呉世健さんがいなくなったという。
数日後、母に連れられて行った病院に父は横たわっていた。体は刃物で切られ、傷痕が黒や紫に変色していた。父は当時、共産主義者を含む住民の自治組織「人民委員会」に所属。母が父から聞いた話では、委員会の会合に日本軍の憲兵隊が現れ、十数人を離島に連れ去り殺傷したという。父は面会後、亡くなった。
主催団体によると、当時のマラッカは連合国軍が進駐しておらず、軍事的な空白期間だった。事件を指揮した軍人らは連合国軍の裁判にかけられ、一部が死刑に。現地には、事件の経緯を記した石碑が残っているという。
5日に神奈川県庁で会見した呉さんは、父がピアノを弾き、家族全員で歌った日々を振り返り、「そんな幸せも一瞬で消え去った」と声を詰まらせた。長年、事件や父のことを考えると体が動かなくなるほどの苦しみが続いたが、「戦争の恐ろしさや汚さ、平和の大切さをより多くの人に知ってもらいたい」と来日を決めた。
アジア・フォーラム横浜は94年から毎年、アジア各国の戦争被害者を招き、証言を通して日本の加害を考える集会を続けている。
7日午後1時半から、横浜市神奈川区のかながわ県民センターで。資料代1千円(学生無料)。同じ事件の被害者遺族で、シンガポールでの日本軍の活動について研究している林少彬さん(65)の講演もある。