日本人と済州人の問答も 落語「代書」完全版 生誕地で上演へ

有料記事

中野晃
[PR]

 戦前から多くの済州島(現・韓国)出身者が暮らす大阪・猪飼野(いかいの)かいわいの「代書屋」を舞台に、日本人と島出身者の掛けあいが登場する85年前初演の創作落語「代書」の完全版が、作品が生まれた大阪市東成区で上演される。当時の地域社会の一端がうかがえる貴重な作品と研究者は指摘している。

 代書屋は官公署に提出する書類の作成などを担った。四代目桂米団治(1896~1951)は生計のため、現在の東成区役所の一角にあった自宅で代書屋を開業。実体験を下地に書き下ろした「代書」は客と代書人のユニークなやりとりを描き、1939年に初めて上演された。

 米団治の代書屋は地域で暮らす朝鮮人の来客が多かったとみられ、「代書」には済州島出身の男性が登場。紡績女工として大阪で働こうとしている島の妹の渡航証明書の依頼で訪ねて来る。

 現在の東成、生野両区にまたがる猪飼野は戦前から植民地朝鮮の出身者が多く、特に20年代前半に大阪と結ぶ航路ができた済州島の出身者が親類縁者を頼って集まった。

 落語「代書」は戦後も多くの落語家が演じたが、済州島出身の男性との問答は省略されることが多かった。男性のつたない日本語を笑いの対象とするのを問題視する指摘があったとされる。

 ただ、大阪コリアタウン歴史…

この記事は有料記事です。残り532文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2024年12月15日12時0分 投稿
    【視点】

    これは聞きに行きたい、と思う落語です。 昔から落語が好きで、聞きに行くことはなかなかできないのですが、移動中によく聞いています。 「男性のつたない日本語を笑いの対象とする」ことをどう捉えるかは、落語のもつ社会的弱者への眼差しを意識できるか

    …続きを読む