オワコンではない郵便制度 全国配達はAmazon・宅配業の源流に

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聞き手・石川智也
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 郵便料金が10月から一斉値上げされた。日本郵便は土曜配達の休止などコスト削減を進めてきたが、ネットやSNSの普及で需要が減るなか、郵便事業の赤字幅は年々拡大する見通しだ。全国津々浦々に敷かれた郵便網のユニバーサルサービスは今後、どう維持され得るのか。社会インフラの形成史を研究してきた山根伸洋さんは、近代化政策の基軸の一つとして整備された郵便事業が果たしてきた歴史的役割を見直すべきだと説く。

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オワコン? いやいや、国家経営の基軸

 ファクスや電子メール、SNSといった新しいコミュニケーション手段が登場するたび、古い通信インフラである郵便は「オワコン」扱いされてきました。

 手紙やはがき、切手の手触り感や手書き文化の価値が見直されるのは、その反動です。ただ、私は別の意味で、生身の人間が郵便物を配達し手元に届くことの物質的側面を、国家経営の観点から再評価すべきだと考えています。

 江戸幕府が街道を整備したのは、参勤交代のほか各地に文書を通達するため。つまり統治の一環で、宿駅の周辺村落に人馬の調達を課す助郷(すけごう)制度を設けるなど、維持管理に膨大なコストを費やしました。その下で飛脚業者は公用通信も請け負い、輸送網の全国的ネットワーク化を進めます。

 明治政府はその遺産の上に…

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この記事を書いた人
石川智也
オピニオン編集部
専門・関心分野
リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論