カナダから学ぶ「トランプ政権との付き合い方」 山野内勘二大使

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 米国でトランプ氏が再び大統領の座に就きました。世界がその言動に注目するなか、隣国のカナダは、2月1日から25%の関税をかけるとトランプ氏から「通告」され、国防費、国境対策などでも対米関係をめぐる問題が浮上しています。昨年12月、『カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」』(中公新書)を発表した山野内勘二・駐カナダ大使は、コミュニケーションの維持や政治・経済の両面を俯瞰(ふかん)した外交の重要性を指摘します。

 ――第2次トランプ政権を巡り、カナダではどんな動きがありますか。

 「第2次トランプ政権とどう向き合うのか」という話題が連日、政治ニュースのトップを占めています。トランプ氏が主張する「25%関税」が導入されれば、カナダ経済に相当な影響を及ぼします。実現に懐疑的な声もありますが、「導入もあり得るとの観点から準備が必要だ」という基本認識があります。

 高関税の導入阻止に向けた例として挙げられているのが国境対策の強化です。報復関税も議論されています。

 また、トランプ氏が同盟国の国防費増額を求めていることもあり、国防費の増額にも取り組んでいます。カナダの国防費は現在、GDP(国内総生産)比で約1.4%ですが、すでに「2032年までに同2%を達成する」と表明しています。

 カナダは従来、西と東は海、南は米国、北は北極と面し、安全保障上の現実的な脅威がほとんどありませんでした。ただ、北極の氷が溶け、ビジネスチャンスが広がると同時に環境や安全保障上の懸念も生まれています。中国やロシアによる軍事行動の懸念も広がり、独自の防衛努力をしなければならないという意識が生まれています。

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 ――トランプ氏はカナダを「…

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島
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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2025年1月26日15時52分 投稿
    【解説】

    トルドーが迅速にトランプに連絡し、その後にフロリダに行ったことは、トルドーの立場を悪化させ、フリーランド副首相兼財務相が辞任するという事態となった。トランプとのコミュニケーションの取り方に問題があったのだと思う。一方的にトランプに膝を屈する

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