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<連載> 今すぐできる終活講座

いろいろな種類があるお墓や供養の特徴を整理し、実家のお墓を決める

実家とお墓③

2024.06.21

 終活や遺贈の専門家である齋藤弘道さんは現在、健在の父親のお墓を探しています。前回は、お墓探しをする前に、両親の終(つい)のすみかの候補として、さまざまなタイプの老人ホームの特徴を把握しました。今回は納得のいくお墓探しをするために、お墓や供養の種類を整理します。

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連載「今すぐできる終活講座」実家とお墓③

お墓にもいろいろな種類があります

通いにくいお墓の候補地

  実家から約2km離れたお墓の候補地は、道のりの途中に大きな川を渡る橋があり、風が強く高低差もあります。私の父が自動車運転免許証を返納する予定であることから、父母のどちらか一方が亡くなったときのことも考えると「シニアカー」や「電動カート」と呼ばれる高齢者向け電動車両で行くのには無理があり、父のお墓探しの話はいったん棚上げになっていました。

お墓の種類は多岐にわたる

 そこで、そもそもお墓にはどのような種類があり、どのような選択肢が考えられるのかを整理することになりました。調べてみると、運営主体や経営主体を含め、お墓にもいろいろな種類があることがわかりました。

1.運営主体別(埋葬する墓地の場所)

(1)公営墓地
 公営墓地は自治体が管理運営する墓地で、費用が比較的安く、宗旨や宗派を問わないという利点から申し込みが多く、抽選になることもあります。申し込みに際しては、その自治体に住所があり、すでに遺骨を持っているなどの条件があります。

(2)民営墓地
 民営墓地は宗教法人や民間企業が運営する墓地です。購入にあたっての条件はほとんどありませんが、墓石の購入や工事がその墓園が指定する石材店になっていることが多いようです。

(3)寺院墓地
 寺院墓地は宗教法人(お寺)が管理する墓地です。寺院の墓地経営は宗教活動の一環として考えられています。原則として、お墓を建てるにはそのお寺の檀家になる必要があります。つまり、その寺院に所属し、お布施や会費を払うことで寺院を経済的に支えなければなりません。

(4)みなし墓地
 みなし墓地は昔からある墓地です。その多くは墓地、埋葬等に関する法律が改正される前に建てられた村墓地、共同墓地、個人墓地です。その土地や一族に関係する人のための墓地であり、2023年(令和5年)9月に発表された総務省の墓地行政に関する調査によると、この形態が最も多くなっています。

2.お墓や供養のスタイル別

(1)一般墓地
 一般墓地は従来型のお墓です。区画された墓地に墓石が建っています。多くのは「家」単位で利用しますが、少子化とともに主に二つの「家名」を並べる両家墓(りょうけぼ)も増えています。

(2)納骨堂
 納骨堂は霊園や寺院の建物内に遺骨を保管する形式のお墓です。その種類は多様で、「ロッカー式」「マンション式」「棚式」「位牌式」「仏壇式」「自動搬送式」などがあります。

(3)樹木葬
 樹木葬は樹木を墓標に見立てて、その下に遺骨を埋葬するお墓です。シンボルツリーの周りに多くの区画をつくり、遺骨を安置する形式が一般的です。

(4)永代供養墓
 霊園や寺院が永代にわたって遺骨を管理したり供養したりしてもらえるお墓です。お墓の承継者は不要です。個別安置型、集合安置型、合祀型などがあります。

(5)散骨
 お墓を持たない、供養のスタイルです。海や川、または山などに遺骨をまく方法ですが、遺骨の一部を手元供養することも可能です。その方法には、委託散骨、合同散骨、個人散骨があります。また、空中散骨や宇宙散骨もあります。

3.埋葬される人別

(1)家墓(いえはか)/累代墓(るいだいぼ)
 伝統的なスタイルのお墓です。墓石には「○○家」「○○家先祖代々之墓」や「南無阿弥陀仏」などと記されます。親から子へ、子から孫へ引き継がれることを前提としています。

(2)両家墓(りょうけぼ)
 姓の異なる親族も一緒に埋葬するお墓です。夫婦が両家の墓を同じ場所で管理するケースや、跡継ぎが他家に嫁いだ女性であるケースなどがあります。

(3)個人墓
 一人だけ埋葬されるお墓です。先祖から守り続けるのではなく、自分だけで、承継者も必要としない個人的で自由なお墓です。

(4)夫婦墓
 一族とは別に夫婦だけで入るお墓です。子どもがいない夫婦で、再婚や複雑な家族関係がある場合などに選択される傾向にあります。

(5)共同墓
 同じ趣味や信仰を持つ人たちが一緒に埋葬されるお墓です。独居老人同士が無縁仏にならないように利用するケースもあるそうです。

どのお墓の種類を選択するのか

 実家で「どんなお墓が良いのか」を話し合ったところ、「やっぱり普通のお墓がいい」という希望が強く、宗教法人や民間企業が運営する民営墓地に一般的なお墓を建てる方向で考えることになりました。

お墓参りに行く手段で人気なのは?

 公益社団法人全日本墓園協会による「我が国における公営墓園実態調査」によると、墓地までの交通手段で最も多いのは「徒歩」となっています。最初に紹介した墓地の経営形態において、その土地や一族に関係する人のための「みなし墓地(個人墓地)」が最も多いことと関係しているのかもしれません。しかし、わが家の場合、実家の本家が墓じまいしてしまい、実家のすぐ近くに候補となるようなお墓はありません。

 なお、同調査によると、墓地までの交通手段は以下のとおりとなっています。

【墓地までの交通手段】
徒歩:365人
タクシー:216人
バスと徒歩:163人
不明:162人
その他車で:80人
バス:56人
バスとタクシー: 1人
(出典:公益社団法人全日本墓園協会「我が国における公営墓園実態調査」p.83

 以前から候補になっているお墓は、父の亡姉のお墓がここにあることが候補とした理由です。亡姉の長男の家は実家からすぐ近くなのですが、お墓を検討している話を亡姉の長男の嫁にしたところ「もし同じ墓地にお墓を建てるなら、2kmの距離は私が車で送迎する」と言ってくれました。お墓参りに行く交通手段が解決したことで、この方向で話を進めることになりました。

お墓問題は解決したように見えるけれど……

 実家のお墓の問題はこれで解決したように見えます。父母はこれで良いのでしょうが、私自身はまだ悩んでいます。伝統的なスタイルのお墓は一世代や二世代のものではなく、ずっと続くものだからです。

 私の妹は嫁いでいますので、実家のお墓は長男の私が引き継ぐことになります。私には妻と長女、それから二女がいますが、娘たちがこのお墓を引き継ぐかどうかわかりません。娘が結婚した場合には「両家墓」になるのか、独身の場合は永代供養墓で合祀されるのか。そもそも、実家も検討中のお墓もわが家からは距離のある他県なので、お墓参り自体が容易ではありません。

 こうしたことを考え始めると、「実家のお墓は建てず、私が自宅近くにお墓を購入して、将来は父母と一緒に入る」という選択肢が合理的なようにも感じています。ただ、そうすると父母のどちらかが亡くなったときに、遺骨は自宅保管するのか、という問題が残ります。

 ただし、あまり先のことを考えても仕方ないので、父母の気の済むように実家の近くにお墓を建て、将来の家族の状況によって墓じまいして私が購入するお墓に移るか、それとも別の方法があるのか、娘たちとあらためて考えるのも良いのではないかと思っています。

 ご家族によってご先祖の背景や地域の慣習、あるいは生活の事情も異なりますので、お墓に対する考え方も異なると思います。私の実家の事例がご参考になれば幸いです。

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  • 齋藤弘道
  • 齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

    遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

    信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

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