(社説)3党減税合意 政策論置き去りの野合

社説

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 本格的な政策論議の前に、理屈抜きで「合意」を固める。引き換えに、水膨れの補正予算成立で手を握る。政権維持になりふり構わぬ自民・公明両党と、「成果」をアピールしたい国民民主党の野合と言わざるをえない。

 自公国の幹事長が一昨日、国民民主が主張する所得税などの基礎控除拡大とガソリン減税で合意した。「103万円の壁は178万円を目指して、来年から引き上げる」「ガソリンの暫定税率は廃止する」という。これを受け、国民民主は審議中の補正予算案への賛成を決めた。

 3党は、先月からの税制協議で、基礎控除拡大の目的や引き上げ幅の根拠、財源など論点を整理している最中だった。ガソリン税では、上乗せの旧暫定税率の早期廃止を求める国民民主に対し、与党側は関係税制とあわせ来年にかけて検討する姿勢だった。

 合意は、こうした議論とどう整合するのか。粗雑な進め方で税制や財政がゆがめられないか、強く懸念する。

 物価高の中で、低所得層への配慮は必要だ。所得税・住民税の非課税枠は約30年前から据え置かれており、最近の物価上昇を踏まえて水準を調整するのも理解できる。

 だが、合意内容には疑問が多い。178万円は30年間に最低賃金が7割上がったことを根拠とするが、大半の納税者に関わる基礎控除の拡大は、物価上昇率を目安にするのが合理的だ。一律75万円の拡大は高所得者への優遇色も強く、明らかに過大だ。

 税収減も国・地方合わせ年7兆~8兆円とみられる。行政サービスや財政に深刻な影響が出かねない。来年からの実施に、源泉徴収などを担う雇用主が対応できるのかも課題になる。

 ガソリン税の上乗せも、単純な廃止は弊害が大きい。消費を助長し、脱炭素の足を引っ張る。国・地方の税収にも年1・5兆円の穴があく。

 こうした様々な問題を抱える減税合意と引き換えに、補正予算案がきのう、衆院を通過した。緊急性や妥当性が疑わしい施策が多く、支出は過去の危機時に匹敵する。

 財政の悪化をかえりみない自公国の姿勢は目に余るが、日本維新の会の動きも理解に苦しむ。審議では「規模ありきだ」と批判したが、教育無償化の協議入りを理由に採決では賛成に回った。衆院での審議はわずか4日間で、問題点は正されなかった。

 「少数与党国会」では、熟議を通してより良い政策をめざす責務が、与野党を問わず重みを増している。各党はそのことを自覚すべきだ。

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