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主役なきゴーン法廷

 日産カルロス・ゴーン元会長をめぐる事件の裁判が始まった。元会長が海外逃亡を続ける中、法廷に立つのは側近グレッグ・ケリー元役員。「主役なき法廷」で明らかになるのは、独裁化したカリスマ経営者の「犯罪」か、追放を企図した「陰謀」か――。

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役員報酬の虚偽記載事件

特捜部の発表などに基づく

 10年3月、1億円以上の報酬を得た役員の名前と金額を有価証券報告書に個別開示するよう義務づける改正内閣府令が施行される。
 ゴーン元会長とケリー元役員は、元会長の高額報酬が公になることを懸念し、「総報酬」をその年に受け取る「既払い報酬」と退任後に受け取る「未払い報酬」に分け、未払い分は有報に開示せずに隠した。

隠した報酬は8年間で計91億円。退任後に、相談役や顧問の名目で受け取る偽装工作を計画か

中東をめぐるゴーン元会長の特別背任事件の構図

特捜部の発表などに基づく

 ゴーン元会長は円をドルに交換する私的な投資契約を新生銀行と結んでいたが、08年秋にリーマン・ショックが発生して多額の評価損が発生。新生銀は追加担保などを求めた。

2008

契約者を日産に変更。
18.5億円の評価損を負わせる

日産
2009

契約を元会長側に戻す担保として、30億円の信用状を提供

ハリド・ジュファリ氏
サウジアラビアの友人

契約者が元会長側に戻る

日産
謝礼など
2009-2012

中東日産を通じ、日産資金計1470万ドル(12.8億円)を不正送金

ハリド・ジュファリ氏

 友人がオーナーをしているオマーンの日産販売代理店から、ゴーン元会長が実質的に保有する「GFI社」(レバノン)に日産資金を還流させていた。

2017-2018

中東日産を通じ計1000万ドル(11.1億円)を送金させる

還流

1000万ドルの半分の計500万ドル(5.6億円)が元会長に

SBA社

オマーンの日産販売代理店

オーナーのスヘイル・
バウワン氏
元会長の友人

GFI社

元会長が実質的に保有するレバノンの投資会社

裁判の主な審理予定

  • 2020年
    9月15日
    初公判(罪状認否、冒頭陳述)
  • 9月29日
    -12月
    証人尋問 
    大沼敏明・
    元秘書室長
    ケリー元役員とともに、ゴーン元会長の指示で報酬隠しに関わったとされる。検察と司法取引して捜査に協力し、見返りに不起訴処分となった
  • 2021年
    1月
    証人尋問 
    志賀俊之・元COO
    検察が報酬隠しとする仕組みづくりに一部関わったが、関与は薄かったとして刑事訴追は免れたとされる。長年、ゴーン元会長の右腕として経営を支えた
  • 1月
    証人尋問 
    小枝至・元相談役
    検察が報酬隠しとする仕組みづくりに一部関わったが、関与は薄かったとして刑事訴追は免れたとされる
  • 1-2月
    証人尋問 
    ハリ・ナダ
    専務執行役員
    検察と司法取引して捜査に協力し、見返りに不起訴処分となった。ゴーン元会長を支えるCEOオフィスや秘書室の元担当役員。「不正」の社内調査を担った。アジア系イギリス人
  • 2月
    証人尋問 
    西川広人・前社長
    ゴーン元会長の側近で、逮捕時の日産社長。報酬隠しの過程で作成された契約書案に署名したとされるが、不起訴処分となった。事件後、自身の報酬をめぐる不正が発覚し、社長を辞任した
  • 3月
    証人尋問 
    川口均・元副社長
    「不正」の社内調査を担った
  • 3月
    証人尋問 
    今津英敏・元監査役
    「不正」の社内調査を担った
  • 5-7月
    被告人質問:ケリー元役員
  • 以降 検察側の論告求刑
  • 弁護側の最終弁論
  • 判決

ゴーン元会長・ケリー元役員の履歴

  • ブラジル生まれレバノン育ち
  • 1978年に仏タイヤ大手ミシュランに入り、96年に仏自動車大手ルノーに引き抜かれた
  • 99年にルノーの経営支援を仰いだ日産自動車に派遣され、2000年に社長、01年に最高経営責任者(CEO)となり、「日産リバイバルプラン」で工場閉鎖や人員削減、系列取引の見直しを主導。コミットメント(必達目標)を掲げて経営をV字回復させた
  • 05年にルノーCEOに就任
  • 16年には燃費不正問題を起こした三菱自動車との提携を主導し、三菱自会長にも就任した
  • 日産では17年に会長になった。18年11月に東京地検特捜部に逮捕され、19年4月までに計4回逮捕された
  • 19年12月末にレバノンに逃亡。裁判が開かれる見通しは立っていない
  • 米国の大学を卒業後、法律事務所の弁護士を経て1988年に日産自動車の米国法人「北米日産」に入社した
  • 一貫して人事畑を歩み、2008年に日産本社の執行役員に就任
  • 常務執行役員を経て、12年に代表取締役に就いた
  • ゴーン元会長の「側近中の側近」といわれ、元会長の絶対的な権力の下で、人事にも大きな影響を及ぼしてきたとされる。経営の中枢機能である「CEO(最高経営責任者)オフィス」のトップを長く務めた経験もあり、近年はゴーン元会長のアドバイス役に徹していたという。日本の日産本社にはほとんど姿を見せなかったともいわれる
  • 18年11月、ゴーン元会長と共に逮捕された。元会長が海外逃亡を続ける中、「主役なき法廷」に立つ

ケリー元役員の公判で裁かれるのは「役員報酬の虚偽記載事件」だけ

公判日程(予定)

第1回
2020/9/15
第2回
2020/9/16
第3回
2020/9/29
第4回
2020/9/30
第5回
2020/10/01
第6回
2020/10/02
第7回
2020/10/13
第8回
2020/10/14
第9回
2020/10/15
第10回
2020/10/16
第11回
2020/10/27
第12回
2020/10/28
第13回
2020/10/29
第14回
2020/10/30
第15回
2020/11/10
第16回
2020/11/11
第17回
2020/11/12
第18回
2020/11/13
第19回
2020/11/24
第20回
2020/11/25
第21回
2020/11/26
第22回
2020/11/27
第23回
2020/12/08
第24回
2020/12/09
第25回
2020/12/10
第26回
2020/12/11
第27回
2020/12/22
第28回
2020/12/23
第29回
2020/12/24
第30回
2020/12/25
第31回
2021/1/12
第32回
2021/1/13
第33回
2021/1/14
第34回
2021/1/15
第35回
2021/1/26
第36回
2021/1/27
第37回
2021/1/28
第38回
2021/1/29
第39回
2021/2/9
第40回
2021/2/10
第41回
2021/2/12
第42回
2021/2/24
第43回
2021/2/25
第44回
2021/2/26
第45回
2021/3/9
第46回
2021/3/10
第47回
2021/3/11
第48回
2021/3/12
第49回
2021/3/23
第50回
2021/3/24
第51回
2021/3/25
第52回
2021/3/26
第53回
2021/4/20
第54回
2021/4/21
第55回
2021/4/22
第56回
2021/4/23
第57回
2021/5/11
第58回
2021/5/12
第59回
2021/5/13
第60回
2021/5/14
第61回
2021/5/25
第62回
2021/5/26
第63回
2021/5/27
第64回
2021/5/28
第65回
2021/6/8
第66回
2021/6/9
第67回
2021/6/10
第68回
2021/6/11
第69回
2021/6/22
第70回
2021/6/23
第71回
2021/6/24
第72回
2021/6/25
第73回
2021/7/6
第74回
2021/7/7
第75回
2021/7/8
第76回
2021/7/9