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2025年度大学入試は、新学習指導要領で学んだ高校生が初めて挑む入試になります。大学入学共通テストの変更に加えて、大学独自の試験が変わることも予測されます。25年度入試はどうなるのか、専門家が予測します。(写真=Getty Images)
共通テストは計80分、長くなる
18歳人口は2017年度(約121万人)以来、減少していましたが、25年度は前年より2.5%増加し、約110万人と見込まれています。ベネッセコーポレーションと駿台予備学校が合同で行った24年度第1回共通テスト模試では、国公立大の志望者数は前年比103%、私立大は103%と、18歳人口と同程度の増加率になっています。
ベネッセコーポレーション・教育情報センターの谷本祐一郎センター長はこう言います。
「入学定員はほぼ変わらないので、前年に比べるとやや厳しい入試になると予測されます。ただ26年度からは再び減少に転じるので、長期的に見ると入試競争が厳しくなることは考えにくいでしょう」
初めての新課程入試となる25年度の共通テストは、内容が一部変更されます。従来の6教科30科目から7教科21科目に再編され、「地理歴史,公民」 に「歴史総合/地理総合/公共」が新設されます。さらに必修教科として「情報」が加わることで、国公立大の受験生は5教科7科目から6教科8科目が必要となり、負担が重くなります。
「国語は大問が1問追加され、数学は数学Ⅱ・BにCの範囲が加わることで、試験時間がそれぞれ10分間延長されます。情報の60分を加えると、トータルでは試験時間が80分延びることになります。新課程の共通テストに合わせた時間割で模試を行ったところ、試験時間の長さから体調を崩してしまい、翌日学校を欠席した生徒が例年よりも多かったようです」
新しい教科として注目されている「情報」ですが、7割以上の大学で配点比率を10%未満に設定しており、配点はそれほど高くありません。
「仮に試験の合計が1000点満点だとすると、50~60点の大学が圧倒的に多いです。この配点でどこまで対策に時間をかけるかは、考えどころですね」
難関大学で志望者が増加
新課程に伴う変更が多いにもかかわらず、難関大学の志望者は増加しています。難関10国立大学(北海道大・東北大・東京大・東京科学大・一橋大・名古屋大・京都大・大阪大・神戸大・九州大)の志望者数は前年比105%、私立13難関大学(早稲田大・慶應義塾大・上智大・東京理科大・明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大・関西大・関西学院大・同志社大・立命館大)の志望者数が同108%と、全体平均を上回っています。
「センター試験から共通テストに変わった年や、コロナ禍の年など、受験生にとって弱気になりやすい要素が多かった年も、難関大志望者層は初心を貫く動きがありました。自分はこの大学にいきたいという確固たる目標があるのでしょう」
一方で、私立大の共通テスト利用方式の志望者が増えています。私立大全体の共通テスト利用方式の志望者数は前年比108%ですが、難関13私立大は116%、早慶上理の4大学に限っては124%と増加が目立ちます。
「難関国立大の受験生が、難関私立大を併願先として出願するからです。早慶上理が第1志望の受験生にとっては、厳しくなりそうなので要注意です」
さらに国立大の6教科の対策が厳しい受験生の志望校が公立大へ流れて、一部の公立大で倍率が上昇しています。
東洋大学が年内に学力入試
25年度入試で注目されているのは 、基礎学力テスト型の年内入試(学校推薦型選抜)を実施した東洋大です。科目は英語・国語あるいは英語・数学の2教科2科目で、他大学との併願も可能です。基礎学力テスト型には、全学部で578人の募集定員に対して約2万人の志願者があり、倍率は約35倍に達しました。
関西では、近畿大や龍谷大を先駆けに、以前から基礎学力型の年内入試を行っています。京都産業大や甲南大なども続いており、併願可能な基礎学力型の年内入試は定着しています。
東洋大が導入した影響はあるのでしょうか。
「日東駒専とグルーピングされる日本大、駒澤大、専修大への影響は大きいでしょう。それだけでなく、MARCHとの併願や、宇都宮大や群馬大など関東圏の国立大との併願が進むなど、影響が及んでくる可能性があります」
東洋大に追随する首都圏の大学は、多数出てきそうです。
◆探究活動が、大学選びに影響
学部系統別の志望動向では、コロナ禍で志望者が減っていた外国学、国際関係学、社会学(観光学)の人気が回復し、これまでのように理系に志望者が偏る傾向は落ちついています。ただし、総合情報学系統は根強い人気を維持しており、25年度入試でも国公立大は志望者が大幅に増えています。
注目は農学系統です。国公立大は前年比106%、私立大は同110%と志望者が増加しています。その理由を谷本センター長は、次のように話します。
「高校の授業に導入されている探究活動の影響だと思います。農学は学問の分野が広く、探究活動のテーマと関連することも多いです。高校の探究活動で興味関心を抱いた生徒が、さらに農学を深めたいと関心を示しているのではないでしょうか。従来の大学選びは、たとえば将来、医師や弁護士になりたいという希望から逆算して進路を考えるケースが多かったのですが、逆に自分のやりたいことが明確にあって大学を選ぶ生徒が増えてきました。そう考えると、探究は高校生のキャリアに大きな影響を与えていると思います」
25年度は、文部科学省の後押しを受けて複数の大学が情報系の学部を新設したり、定員を増やしたりしています。福井県立大は、ユニークな恐竜学部を新設します。理工系の女子枠も拡大され、東京科学大(旧・東京工業大)が女子枠を149人に拡大するほか、福島大、茨城大、新潟大、滋賀大など複数の国立大が女子枠を新設したり、拡大したりします。
入試本番直前の受験生に谷本センター長は次のようなアドバイスを送ります。
「入試改革の過渡期で環境の変化が激しく、不安に思うことも多いでしょう。でも、将来の目標や社会とどう関わっていきたいのか、その原点に立ち戻って大学入試に臨んでほしいと思います。確固たる志望動機がある受験生は、良い結果につながるケースが多いのです。最後まであきらめずに、自身の志望を貫いてほしいですね」
プロフィル
谷本祐一郎(たにもと・ゆういちろう)/ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長。2007年ベネッセコーポレーション入社。九州支社で大分県、熊本県、宮崎県の高校営業などを担当し、16年から東北支社で学校担当の統括責任者。19年から現職。講演会や研修会の実績も多数。大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。
(文=柿崎明子)
【写真】新課程の共通テストを専門家が予測 難関大の志願者が増加 人気の学部は?
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