多様な価値観を認めて協働し、社会を変えていく。青山学院の150年にわたるグローバル教育とサーバント・リーダーの育成

Sponsored by 青山学院大学

2024/10/31

1874年、アメリカのメソジスト監督教会の宣教師によって創設された三つの学校を起源とする青山学院が今年11月、創立150周年を迎える。創立以来、「地球規模の視野にもとづく正しい認識をもって自ら問題を発見し解決する知恵と力をもつ人材」を育成し続けてきた。青山学院のグローバル教育と、同学院が育む「サーバント・リーダー」の精神について、青山学院の末田清子副院長(写真左)とシュー土戸ポール青山学院史研究所副所長(写真右)が語り合った。

◆青山学院は創立時からグローバルだった

末田清子副院長(以下、末田) 青山学院が進めてきたグローバル教育とは、ただ外国語ができるということではなく、国・地域、言語、民族、ジェンダー、宗教などあらゆる違いを超えて協働することだと捉えています。新型コロナウイルス感染症がまん延したとき、世界各国が協力・協働する必要性を痛感しました。コロナウイルスによるパンデミックは沈静化しましたが、この先も何が起きるかわかりません。それに備え、若いころから他者との違いを認め、協働できる資質を備えておくことが重要だと考えています。これからのリーダーには周囲から信頼を得て、相手に仕え、協力してもらえる状況をつくる。そして、周囲を巻き込み、世の中を変えていく能力が必要とされます。その資質をもった「サーバント・リーダー」を、青山学院では創立当初から育成しています。

シュー土戸ポール青山学院史研究所副所長(以下、シュー) まず、グローバルという点でいいますと、青山学院は創立時からすでにグローバルな環境でした。青山学院と改称する前の名称は「東京英和学校」で、英語では「Anglo-Japanese College」と表記します。日本の教育のよい面と英語圏の国際性を合わせた大学を目指すという方針が設立時にあったのです。

末田 創立当初から本学はグローバルな教育を行ってきました。その上で自分とは異なる価値観も大切にしてきた歴史があります。

シュー 青山学院は価値観の多様さ、つまりダイバーシティーを尊重してきました。草創期から女子教育に力を入れてきましたし、英語圏だけでなく、朝鮮や台湾出身の生徒も積極的に受け入れてきました。現在では、ムスリムの留学生のために礼拝する場所もあります。国際交流という観点だけではなく、常に多様な価値観を尊重し、自分と異なる背景をもつ人たちも大切にしてきたということです。国際社会においては、自分と違う考え方をもつ人たちを快く受け入れ、配慮し、共存することが求められます。これこそが青山学院に150年にわたって受け継がれてきたグローバルの精神だと考えています。

末田清子(すえだ・きよこ)/青山学院副院長・青山学院大学国際政治経済学部国際コミュニケーション学科教授。1998年、青山学院大学国際政治経済学部助教授に就任。2004年、国際政治経済学部教授。2020年、国際政治経済学部長を経て、2024年、青山学院副院長に就任。専門は異文化コミュニケーション、コミュニケーション学。著書に『コミュニケーション・スタディーズ―アイデンティティとフェイスからみた景色』(新曜社)、『多面的アイデンティティの調整とフェイス(面子)』(ナカニシヤ出版)などがある。

末田 そのグローバル精神は、青山学院が育成する「サーバント・リーダー」とも密接に関係していますね。サーバントとは人や社会に仕える人物の意味ですが、いまの青山学院大学の学生にもその精神が受け継がれているのを感じています。今年1月に発生した能登半島地震のボランティアとして、夏休みに現地に行った学生を引率した教員から話を聞きました。ボランティアは本学だけでなく、いろいろな大学から集まったとのことです。被害に直面して何をしていいのか呆然としているボランティアもいるなか、本学の学生はいろいろな人たちに声をかけて、まさに周りを巻き込んで積極的に活動していたそうです。また、私は学部長を務めた4年間、学生たちにイベント開催を手伝ってもらうことが多かったのですが、私から感謝の気持ちを伝えると、学生に「こちらこそ手伝わせていただきありがとうございました」と言われることがよくありました。

◆教育は人や社会に奉仕するためのもの

シュー 私はサーバント・リーダーの精神はもともと学生の中にあると思っています。学生に「リーダーになってほしい」とお願いすると、「目立ちたくないから」と遠慮する学生もいますが、「目立たなくていいからサーバント・リーダーとして下から支えてほしい」と伝えると、「それならやってみます」と多くの学生が手を挙げてくれます。

末田 私が専門とする異文化コミュニケーションのトレーニングの方法のなかに、パーソナル・リーダーシップというメソッドがあります。〝Leadership of your own″、つまり、誰かを引っ張るリーダーではなく、「あなたがあなたのリーダー」だという考え方です。

シュー土戸ポール(しゅー・つちど・ぽーる)/青山学院大学青山学院史研究所副所長・青山学院大学文学部教授・大学宗教主任。2004年、青山学院大学文学部専任講師に就任。2007年、准教授、2017年、教授に就任。専門はキリスト教神学、近現代キリスト教史、キリスト教教育、比較宗教学。著書に『今日と明日をつなぐもの』青山学院宗教主任会編著(日本基督教団出版局)、『地の塩、世の光:人物で語るキリスト教入門』青山学院宗教センター編集(教文館)などがある。

シュー 青山学院の第4代院長の高木壬太郎先生は、教育は奉仕するためのものと説かれています。自分は教育を受けたから人の上に立つのではなく、教育を受けて人や社会に仕えることができてこそ初めて人の上に立てるとおっしゃっています。まさにサーバント・リーダーの精神ですね。

末田 大学にはインターネットなどのICTを生かし、世界の子どもたちと国際交流活動をしている学生団体があります。その活動母体は、1988年に創設された国際教育のためのiEARN(アイアーン)というNGOで、世界中の約3万の学校がその会員になっています。2003年には日本センターのJEARN(ジェイアーン)が設立され、SDGsに関連するゴミ問題や平和問題などをテーマにさまざまな教育プロジェクトに取り組んでいます。当初、JEARNでは大学生ファシリテーターを受け入れたことがないと言われたのですが、交渉の結果大学生もJEARN独自のYouthプロジェクトのファシリテーターとして参加することができるようになりました。いまでは本学の学生たちが世界中の子どもたちに新聞紙を使った紙コップやゴミ箱の作り方などを教えています。本学院は同じ敷地内に幼稚園から大学・大学院までを有する総合学園です。それを活かし大学でのこの活動をニーズに応じて学院全体に広げ、グローバルかつサーバント・リーダーの精神を培うべくiEARNの活動が始動しました。

シュー 私は青山学院大学の多くの学生団体の顧問をしています。その一つがSHANTI SHANTI(シャンティシャンティ)という国際ボランティア学生団体で、約300人の学生が参加しています。これまで海外で家や学校をつくる活動をしてきましたが、コロナ禍で海外での活動ができなくなったため、国内のいろいろな地域のボランティア活動にも参加するようになりました。社会に出て奉仕することは、人間が成長する機会になります。このほかにも、毎週火曜の夕方に学生が主催する礼拝があります。学生のボランティア精神には本当に素晴らしいものがありますし、また、そうした活動を学生が求めていることがよくわかります。

末田 よく「英語の青山学院」と言われます。英語というと、ひと昔前まではネイティブ・スピーカーがオーナーシップをもっている英語を意味しました。しかし今や、ネイティブ・スピーカーだけでなく、世界各国で公用語あるいは外国語として英語を話す人が増えていることにより、英語も多様化してきたと言われています。これは日本では青山学院大学の故・本名信行名誉教授がお広めになったWorld Englishesという考え方で、いまではそれが実感となりました。世の中は大きくシフトしたと感じています。

シュー AIの進展で自動翻訳技術が進み、第二外国語を学ばなくても良いという人がいます。しかし、言葉を学ぶことでコミュニケーションの幅が広がります。自分とは違う文化を深く理解できるようになります。言語は異文化理解に直接つながるものだという考え方が、これからの青山学院の英語教育のカギになると思います。国際社会で活躍するため、また、海外の人を受け入れ、理解するためにも大切なものです。

◆「つながろう、つなげよう! 誰も取り残さないように」

末田 大学の国際化の取り組みについて話しますと、今年4月に、グローバルラウンジとチャットルームを統合して、インターナショナルコモンズをオープンしました。チャットルームでは留学生と学生がグループに分かれてさまざまなトピックについて会話をし、ラウンジでは自由な交流が行われ、ウェルネスサービスとして留学生向けのカウンセリングもあります。ラウンジで頻繁に行われるMeet Up Caféでは留学生と青学生が交友関係を構築します。9月には150周年記念イベントの歌舞伎に留学生を招待し、同時に留学生向けに歌舞伎などの日本の伝統芸能の楽しみ方のレクチャーも行いました。さらに、私はいま青山学院大学の学生と留学生が一緒にインターンシップに参加するような機会を提供することを考えています。国際政治経済学部には4.5年で本学の学士と海外大学の修士の両方を取得できる留学制度、ダブル・ディグリープログラム(Dual Degree Program)があり、今後、他の学部も実施する予定です。また、青山学院の特徴的なイベントとして「Aoyama Gakuin Global Week」(以下、グローバルウィーク)」があります。

Aoyama Gakuin Global Weekでは、卒業生・島根玲子氏の講演会「高校チュータイ外交官と考える日本と世界のこれから」など各種イベントを開催(写真提供/青山学院大学)

シュー グローバルウィークは2021年度、コロナ禍で留学など国際的な活動が停止したときに、グローバルな意識を学内で見える化するために始まったものですね。グローバルウィークの大きなテーマの一つはSDGsですが、青山学院ではSDGsという言葉ができる前からその精神にのっとった活動を行ってきました。

末田 今年度は「つながろう、つなげよう! 誰も取り残さないように」というグローバルウィークのキャッチフレーズをつくりました。グローバルウィークは、青山学院に集う全ての人が自分とは異なる文化的背景を持つ他者への理解を深め、国・地域、民族、言語、ジェンダーなどによる違いを超えて、持続可能な未来を目指して協働することの必要性を再認識する一週間です。今年は本学の卒業生で外交官の島根玲子さん(英米文学科卒)にお話をしていただきました。島根さんは司法試験と国家公務員採用総合職試験に合格して外務省に勤めていらっしゃる素晴らしい卒業生です。大変わかりやすい講演で、すぐにお話に引き込まれました。この講演会では大学生だけでなく、本学院の初等部、中等部、高等部の児童や生徒が一堂に会し、保護者の方々にも来ていただきました。それぞれの設置学校から代表質問者を立て、皆で「世界のこれから、日本のこれから」を「自分事」として考えました。

青山学院創立150周年を記念し、『青山学院一五〇年史』(写真右)が出版された

シュー 社会は今、さまざまな課題に直面しています。その中で、若い世代が力をもって課題に取り組めるようにすることが教育の大切な役割です。批評的思考力と行動力、奉仕の精神をもって国内外で活躍できる人を育成することが大学の重要な使命です。私は学生が大学4年間で大きく成長することを楽しみにしています。実は青山学院に入学した時点ですでにサーバント・リーダーの精神をもち合わせています。やる気はある、いろいろやってみたい、でもどうすればいいかわからない。そういう人にとって青山学院は大きく成長できる場です。

末田 青山学院は周囲の人を巻き込み、ボトムアップで世の中を変えていくサーバント・リーダーを育てることを教育の根幹に置いています。謙虚な気持ちで、誠実に、実直に物事に向き合っていくという、第2代院長の本多庸一先生の教えに基づいた教育をこれからも実践してまいります。

〈詳しくはこちらへ〉
青山学院150周年特設サイト
https://150th.pj.aoyamagakuin.jp/
青山学院大学国際センター
https://www.aoyama.ac.jp/international/global/directors.html
Aoyama Gakuin Global Week
https://www.aoyamagakuin.jp/aggw/

取材・構成/鮎川哲也 撮影/小山幸佑 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ

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