ベラルーシ、ノーベル平和賞受賞の人権活動家に禁錮10年の判決

2021年11月のビャリャツキ氏

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ベラルーシの裁判所は3日、ノーベル平和受賞者の人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏(60)に禁錮10年を言い渡した。

ビャリャツキ氏が1996年に立ち上げた人権団体「ヴィアスナ」によると、首都ミンスクの法廷は密輸や「公序を著しく乱す行動」に金銭支援を提供した罪で、ビャリャツキ氏を有罪とした。

「ヴィアスナ」によると、ビャリャツキ氏と同様に起訴されていた人権活動家のヴァレンティン・ステファノヴィッチ氏は禁錮9年、ウラジーミル・ラボヴィッチ氏は同7年をそれぞれ言い渡された。3人とも無罪を主張していた。

ビャリャツキ氏の同僚や支持者は、昨年のノーベル平和賞を受賞した同氏を、「欧州最後の独裁者」と呼ばれるアレクサンデル・ルカシェンコ大統領の政権が沈黙させようとしていると非難している。

ビャリャツキ氏は2021年、野党の活動資金をベラルーシに違法に持ち込んだとして逮捕された。2020年にルカシェンコ氏の大統領選「6選」を不正だと非難する抗議デモが国内各地で相次いだ際に、反政府運動を支えるための資金だったと当局は主張している。2020年夏から秋にかけてベラルーシ各地で続いた反政府デモでは、数百人が逮捕された。

ビャリャツキ氏の妻ナタリヤ・ピンチュク氏は、「人権のために働く人権活動家にあからさまに対立する」裁判で、評決は「残酷」だと非難した。勾留中のビャリャツキ氏は家族への手紙で常に、「何もかも大丈夫だと繰り返し、自分の健康について不平を言ったりしない。私を動揺させないようにしている」と話した。

ヴィアスナの広報担当コスチャ・スタラドゥベツ氏はBBCに対して、「同僚3人が長期刑を言い渡されるのは分かっていたが、それでもショックだ。非常につらい。刑期が長いことに加え、刑務所内の環境がひどく劣悪なので」と話した。

刑務所内の様子についてスタラドゥベツ氏はさらに、「19世紀の建物で、換気のない薄暗い牢(ろう)に日の光はささず、食事は粗末で、医療はないか、ないに等しい」状態なため、そこに収監されることは「拷問」に等しいと述べた。

ベラルーシ国外に亡命している野党指導者スヴェトラナ・ティハノフスカヤ氏は、ヴィアスナの活動家3人への判決は「実にとんでもない」ものだと非難。「この恥ずべき不当判決と闘い、3人を自由にするため、全力を尽くす必要がある」と述べた。ティハノフスカヤ氏は夫セルゲイ・ティハノフスキー氏が大統領選出馬を表明後に逮捕されたため、自ら出馬した後、2020年8月に隣国リトアニアに逃れた

ノルウェー・ノーベル委員会のベリト・ライスアンデシェン委員長は、禁錮判決はビャリャツキ氏にとって「悲劇」で、起訴内容は「政治的動機によるものだ」と話した。

欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は、「でたらめな裁判」を非難し、「ベラルーシの人々の人権や基本的権利を守るため立ち上がる人たちを、またしてもルカシェンコ政権が黙らせようとした、とんでもない事態だ」と述べた。

ヴィアスナによると、ベラルーシでは現在1458人が政治犯として収監されている。政府は、そのような受刑者はいないと主張している。

ライスアンデシェン委員長は昨年10月にビャリャツキ氏の受賞を発表した際、ベラルーシ政府が「もう何年も彼を沈黙させようとしてきた」と説明。「(ビャリャツキ氏は)妨害され、逮捕され、刑務所に入れられ、働く機会を奪われてきた」とも述べた。

動画説明, ベラルーシ大統領、移民のポーランド越境「助けたかもしれない」 BBC単独取材(2021年11月)
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ルカシェンコ氏は1994年に初当選して以来、大統領を6期続けている。2020年夏の大統領選で再選された際には、全国的な抗議デモが相次いだ。野党指導者たちは次々と国外に逃れたり、拘束され禁錮刑に処されたりしている。EUはルカシェンコ氏の再選を認めていない。

ロシアの政治・経済・軍事支援に大きく依存するルカシェンコ氏は、ロシア軍の国内駐留を認め、ロシアがウクライナ侵攻の拠点にすることも容認している。国内の抑圧に加え、こうしたロシア支援も理由に、ベラルーシは国際的な制裁の対象になっている。

2月にはBBCの取材に答え、「たとえ1人でもウクライナ兵がベラルーシ領内に入ろうものなら、ベラルーシから、ロシア軍と共に戦争をする用意もある」と述べていた。

今月1日には、北京を訪れ習近平国家主席と会談。両首脳はウクライナでの平和的解決に対する「極めて強い関心」を表明した。