台湾が初の自主建造潜水艦を披露 対中防衛を強化

テッサ・ウォン、アジア・デジタル記者、BBCニュース

Taiwan's first locally-built submarine

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画像説明, 台湾が初めて自主建造した潜水艦の進水式が高雄市で行われた(28日)

台湾は28日、初となる自主建造の潜水艦を披露した。台湾は、中国が攻撃してきた場合の防衛力を強化している。

高雄市で進水式が行われ、蔡英文総統も参加した。

アメリカ当局は、中国には数年内に台湾に軍事侵攻する能力があると警告している。

中国は台湾について、自国から分離した省で、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認している。

台湾情勢を注視している人たちの多くは、中国がすぐに台湾を攻撃するとは考えていない。中国政府も、台湾との平和的な「統合」を模索しているとしている。

しかし同時に、台湾の正式な独立宣言や外国からの支援に対して警告を発している。また、台湾海峡での軍事演習を通して台湾への圧力を高めている。

台湾の蔡総統は、台湾の旗をデザインしたカバーに包まれた潜水艦を前に、「今日という日は歴史に刻まれるだろう」と語った。

また、台湾での潜水艦建造はこれまで「不可能だと思われてきたが(中略)我々はやり遂げた」と述べた。

この電気式ディーゼル潜水艦の建造費は15億4000万ドル(約2300億円)。今後数回の試験を経て、2024年末に海軍に引き渡されるという。中国語の古典に登場する、空も飛べる巨大な魚にちなんで「海鯤」と名付けられた。

Tsai Ing-wen

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画像説明, 蔡英文総統は、潜水艦の建造を防衛計画の優先事項としてきた

台湾はもう1艇も建造中。最終的には旧式のオランダ製2艇を含む10艇の潜水艦隊を組織し、ミサイルを搭載したい考えだ。

潜水艦プロジェクトチームを率いる黄曙光氏は先週、中国が台湾を包囲して侵攻しようとしたり、海上封鎖をしようとしたりするのをかわすのが目的だと語った。

また、日本とアメリカが台湾の防衛に駆け付けるまでの時間稼ぎができると述べた。

台湾の指導者らにとって、潜水艦の自主建造は長年の優先事項だった。蔡総統は在任中、軍事費を倍増させ、その予算を2倍近くに増やした。

台湾のこの動きに、中国は公に反応していない。しかし国営の環球時報は今週初め、台湾は「白昼夢」を見ており、潜水艦の計画は「ただの幻想」だと記していた。

また、中国の人民軍は「すでに島の全周に多元的な対潜網を構築している」と報じていた。

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Presentational white space

オブザーバーらは、新たな潜水艇が台湾の防衛能力を底上げするだろうとみている。

10艇からなる潜水艦隊は、原子力潜水艦を含む60艇以上を有する中国の潜水艦隊と比べれば見劣りするだろう。

しかし台湾は長年、非対称的な戦争戦略を追求してきた。より大規模で豊富な資源を持つ敵に立ち向かうため、より機敏な防衛力の構築を目指している。

台湾の国防安全研究院・国家安全研究所のリサーチ・フェロー、ウィリアム・チャン氏は、潜水艦の「ステルス性や殺傷能力、奇襲能力を使ったゲリラ的な戦争」を行うことで、「台湾の比較的小さな海軍が、中国の強大な海軍に対して主導権を握る」のを助けられると指摘した。

特に、いわゆる「第一列島線」と呼ばれる島々を結ぶさまざまな海峡や水路の警備を助けることができるいう。第一列島線とは、台湾、フィリピン、日本を含む島々を結ぶ台湾の安全保障上の戦略ライン。

その上でチャン氏は、対潜水艦戦は依然として中国海軍の「最も弱い部分であり、これは台湾がそれを利用するチャンスだ」と付け加えた。

Taiwan's first locally-built submarine

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画像説明, 台湾は最終的には10艇からなる潜水艦隊を組織し、ミサイルを搭載したい考え

一方で、中台海戦の「重心」は、潜水艦が最も効果を発揮する台湾の東海岸沖の深海ではないだろうと、かつて米国防総省に所属し、現在はシンガポール国立大学の上級リサーチ・フェローであるドリュー・トンプソン氏は指摘する。

その代わり、主戦場となるのは中国に面した浅い海が広がる西海岸になるかもしれない。

「潜水艦は侵攻に対抗する役割には最適化されていない。(中略)中国の軍事作戦を複雑にする今回の能力向上は、効果はあるだろうが、決定的なものではない」と、トンプソン氏は述べた。

潜水艦の威力は、台湾がどのように艦隊を配備するかに大きくかかってくるだろう。

台湾のシンクタンク「国家政策研究基金会」の防衛研究員、掲仲氏は、潜水艦は抑止力としての役割を果たすだけでなく、中国船を待ち伏せするのにも使えると話す。中国の港に魚雷を設置する作戦も行える。海軍への石油供給の妨害や、中国沿岸部の主要施設の破壊も可能だという。

だがこの潜水艦について最も重要なのは、台湾が自ら潜水艦を設計・建造したという点だ。

「海鯤」は米防衛大手ロッキード・マーティンの戦闘システムを搭載し、アメリカ製のミサイルを搭載する予定。

アメリカが台湾の主要同盟国であることを考えれば驚きはないかもしれないが、ロイター通信によると、他にもイギリスを含む6カ国が部品や技術、技術者を供給したという。

潜水艦プロジェクトの黄氏はニッケイ・アジアの取材で、日本とアメリカ、韓国、インドに個別に軍事的な契約を持ちかけたと発言。ただし、どの国が最終的に合意に至ったかは明らかにしなかった。

シンガポール国立大学のトンプソン氏は、複数の国や企業が、「台湾の重要な防衛計画に部品を供給することをためらわなかった事実は(中略)重要な地政学的変化を示している」と指摘した。

国家政策研究基金会の掲氏も、これは国際社会の一部の人々が感じている中国政府に対する「疑念と不満」の表れであり、「中国に不穏な空気を感じさせるはずだ」と述べた。

進水式の前日の27日には、中国政府は「台湾の独立分離主義勢力の横暴に断固として対抗する」ため、9月に軍事演習を実施していたことを認めていた。

ここ数週間、中国は再び台湾海峡での軍艦の駐留と、台湾周辺の空域への軍用機の侵入を増やしている。

アメリカ軍と情報当局は、中国の侵攻の可能性についてさまざまな時期を示している。

最も早いのは2027年だ。中国の習近平国家主席は、この年までに侵攻作戦を実行できるように軍に指示したと考えられている。

だが、中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は、習氏自身も中国が成功するかどうか疑問を持っていると思われるため、必ずしも侵略を決断するとは限らないと述べた。