円キャリートレード復活の兆し、ヘッジファンドが再開に動く
David Finnerty、Ruth Carson-
円ショート、この1週間で約30-40%増加-ATFX
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日銀追加利上げ手控えなら円キャリートレードの魅力増す公算大
2週間前に大規模な巻き戻しに見舞われた円を中心とする人気のキャリートレードが徐々に復活しつつあるようだ。
円は8月5日以降、対ドルで5%余り下落している。日本銀行によるタカ派的な動き、米企業業績を巡る不安、軟調な米雇用統計が重なり、円相場はその日、7カ月ぶりの高値を記録した。
野村インターナショナルは、さまざまな投資家が円で調達した資金を他の高利回り資産に投資し始める動きを目にしている。これは企業顧客やヘッジファンドがキャリートレードに再び参入していることを示唆する。
同社のG10スポットトレーディング責任者、アントニー・フォスター氏(ロンドン在勤)は、予想を上回る米小売売上高の発表後にキャリートレードへの「注目すべき回帰が見られている」と指摘。複数のアカウントから対円で豪ドルと英ポンドの買いが入っていると述べた。
ATFXグローバル・マーケッツによると、円ショートポジションはこの1週間で約30-40%増加しており、その大半はヘッジファンドや富裕層顧客によるものだという。
ブランディーワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのアソシエート・ポートフォリオマネジャー、ウィリアム・ボーン氏は、「人々の記憶はかなり短い」とキャリートレードとそれを利用する投資家に言及。「こうしたスペースにはモメンタム系トレーダーが非常に多く存在する」と語った。
キャリートレードとは何か、なぜ大打撃を受けたのか- QuickTake
キャリートレードをまだ手控えている投資家にとって大きな疑問の一つは、日銀が年内に追加利上げするかどうかだ。内田真一副総裁は、金融市場が不安定な状況では利上げしない考えを示している。
日銀が追加利上げを控えれば、キャリートレード再参入の魅力は増す見込みだ。
来週23日には、植田和男日銀総裁が衆院財務金融委員会の閉会中審査に出席する予定で、キャリートレードの方向性は今後1週間に一段とはっきりしそうだ。
また、同日には、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀が主催する年次シンポジウム)で講演を行う。9月に0.5ポイントの利下げに踏み切るとの一部観測をけん制する発言があれば、キャリートレードを後押しする材料になり得る。
円は5日に対ドルで141円70銭を付けたあと、149円付近まで下落しているが、今月初めの急騰局面を考慮すると、円売りに慎重なムードは根強い。野村のフォスター氏は、「重くのしかかっていた円のショートポジションはすでに一掃されているものの、このマーケットは極めて脆弱(ぜいじゃく)だ」とみる。
最新の米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、投機的なトレーダーは6日終了週に円の弱気ポジションを大幅に引き揚げており、市場の脆弱性を浮き彫りにしている。
植田総裁やパウエル議長の発言内容がドル買い・円売りを促す結果になったとしても、一斉に投資家がその流れに追随するとは限らない。
M&Gインベストメント・マネジメントは、円の強気ポジションを一部解消しており、しばらくは円が過小評価される状態が続く可能性があるとみている。
英国で最も知られている債券投資家の1人で、M&Gの公債担当最高投資責任者(CIO)を務めるジム・リービス氏は円について、「非常に割安になっているが、すぐに適正水準に戻ると考えるほどわれわれは愚かではない」と話す。
ATFXグローバル・マーケッツのチーフ市場アナリスト、ニック・トウィデール氏(シドニー在勤)は、高利回り資産を購入する戦略の一環として投資家が円ショートを再構築している証拠がすでにあるとして、「キャリートレードの人気はなお健在だ」と語った。
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原題:Yen Carry Trade Risks Making Comeback As Hedge Funds Reload Bets(抜粋)