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検索者が「検索意図が満たされた」と判断する基準

検索意図が充足する基準

検索者はキーワードを変えて検索しながら知識を形成していき「必要な情報はすでに十分に取得できた」と判断した時点で検索が終わります。検索意図を満たすコンテンツとはつまり、検索者にとって必要な情報が揃ったと確信でき、検索を終了できるコンテンツなのです。この記事では、情報探索行動における認知的停止規則を参照しつつ、検索意図を充足させるコンテンツを作成するヒントを提供します。

検索意図が満たされたときの行動

検索者は意図を持って検索を始め、その意図が満たされたとき検索を終了します。よく言われる「ユーザーの検索意図を満たせ」は、言い換えれば「ユーザーの検索を終わらせろ」ということです。この意味でSEOとは、ユーザーの検索意図を予測し、その検索を終わらせることができるコンテンツや機能を提供することだと言えます。

端的に言えば、検索意図が充足し検索を終えることができるページはGoogle検索で上位に表示されます。Googleは検索意図やそれを満たすページを機械学習でパターン認識し、検索結果にフィードバックしているからです。事実、Google検索セントラルには避けるべき状況として次の記述があります。

  • ユーザーがコンテンツを読み終わっても、他のソースからより良い情報を得るために再び検索する必要があると感じさせてしまいますか。

有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成1

検索意図が満たされたユーザーは、他のソースをあたるために再び検索する必要がありません。検索意図の背後にある目的を果たすために十分な情報が得られれる役立つコンテンツに出会えば、それ以上の検索の必要がなくなるからです。SEOでは検索を終了できるコンテンツを目指します。

検索を終了する条件

では、検索者はどんな基準で「検索意図が満たされた」と判断するのでしょうか。過去数十年に及ぶ情報システムの研究では、情報探索のプロセスには十分な情報が収集されたことを判断する段階が含まれているとし、そこで働く5つの認知的停止規則が定義されています2。それをまとめたものが以下の表です。

認知的停止規則説明
1. 精神的なリスト情報探索をやめる前に満たさなければならない項目のリストが頭の中にあり、それが満たされたら情報探索をやめる。住宅購入に関する情報を探す場合、自分の頭の中にあるリスト上の要素(例えばベッドルームの数、 庭の広さ、学区の質)をすべて満たすまで検索を続ける。
2. 所感の安定性対象物に対して持つ所感が変化しなくなり安定したら情報収集をやめる。患者に問診する医師は、患者の容態についての所感が変化しなくなると、それ以上の問診をやめる。
3. 新しさの閾値あらかじめ持っている閾値に照らして、新しい情報を学ぶことがなくなったと判断したら情報探索をやめる。インタビュアーは、新しい情報が得られなくなったと判断すると、インタビューを終了する。
4. 大きさの閾値取得した情報の量を基準に、すでに十分な情報を取得したと判断したら情報探索をやめる。新聞記事を読むとき、読者は、その記事の要旨を理解するのに十分な情報が得られるまで、記事をざっと読む。
5. 単一の基準ある一つの基準に関する情報を検索することを決め、その基準に関する十分な情報を得た時点で情報探索をやめる。ある高校生が進学する大学を選ぼうとして、その大学の海外プログラムの質に関する情報だけを検索する。

検索意図で変わる検索終了基準

テキサス工科大学のグレン・ブラウンらによる2007年の研究3では、ウェブを使った情報探索行動の終了基準に着目し、情報探索の目的によって探索の終了基準が変化することを明らかにしました。この研究では、被験者は次の3つのタスクを与えられ、タスクの終了後に、どのような基準で情報探索を終了したかを尋ねられました。

  • 商品検索(複雑度:低) – BestBuy.comで自分好みの32インチのテレビを見つける。被験者は消費財の購入に慣れているため、検索のための情報(価格やブランドなど)や、見つかった情報の評価や、検索の継続や終了の判断が比較的容易で、複雑度の低いタスクである。
  • 仕事探し(複雑度:中) – Amazon.comでの仕事を探す。被験者には求職経験があるため、勤務地や給与や職責などの条件設定に慣れている一方で、求職のための経路が複数あり、また、応募する職種によって採用可否に不確実性があるなど、中程度の複雑度を持ったタスクである。
  • 地図検索(複雑度:高) – 1794年にオハイオ州トレド近郊で起きたアンソニー・ウェイン将軍の軍隊とネイティブアメリカン部族との戦争「フォールン・ティンバーズの戦い4」の地図をオンラインで探す。この古戦場の情報はネット上に少なく、しかも揺れがあるため、高い複雑度と多量の情報を要求するタスクである。

この実験の結果は下表の通りです。商品検索や仕事探しのように被験者が調査対象に対してあらかじめ知識や経験がある単純なタスクにおいては、自分の基準に照らして目的の情報を得たと判断した時点で検索を終了しています。しかし地図検索のような未知の複雑なタスクでは、検索者の中で概念が形成された時点で検索を終了することがわかりました。

商品検索仕事探し地図検索
1. 精神的なリスト636314
2. 所感の安定性10323
3. 新しさの閾値018
4. 大きさの閾値15856
5. 単一の基準18143
その他92611

上表からわかることは、検索を終了するときの基準は、タスクの構造や複雑さに応じて変化することです。商品検索や仕事探しのように構造化された単純なタスクでは「精神的なリスト」や「単一の基準」に基づいて検索が終了します。地図検索のような構造化されていない複雑なタスクでは「大きさの閾値」や「所感の安定性」に基づいて検索が終了します。

検索終了基準のSEOへの応用

SEOの観点から先述の研究結果を見ると「検索意図が満たされたかの判断基準は検索対象の複雑さによって変化する」という重要な示唆が得られます。複雑かどうかを決める要因には、検索対象そのものの複雑さに加えて、検索者が持っている経験や知識によっても変化することがわかります。まとめると次のようになるでしょう。

  • 複雑度の低い検索 – 検索者はあらかじめ一定程度の経験や知識を持っているか、または検索対象が単純であり、検索対象の全体像を把握できる状態にある。このため検索者は探している情報についての基準を持っており、その基準を満たす情報を発見できれば検索意図は満たされる。
  • 複雑度の高い検索 – 検索者には経験や知識が不足しており、また検索対象そのものも複雑で、検索者は検索対象の概念や全体像を把握できていない。このため検索者は、検索対象についての概念や全体像や要旨の把握を意図しており、それが達成できれば検索意図が満たされる。

サイト運営者がコンテンツを準備するとき、検索者のタスクの複雑度と、検索者の経験や知識に着目することで、より検索意図を満たしやすいコンテンツを作りやすくなります。複雑度の低い検索と高い検索について、有効と考えられるコンテンツのあり方について以下にまとめます。

複雑度の低い検索対象に対して

検索対象についての概念が検索者の中に十分に形成されている場合(商品や不動産や飲食店を検索する場合のような)では、検索者は「自分の基準に合うかどうかを判断できる情報」を探し、「精神的なリスト」や「単一の基準」を使って検索意図が満たされたかどうかを判断する傾向にあります。

この場合、検索意図を満たす鍵は、検索者の基準に合うかどうかを判断する材料を不足なく提供することです。価格、納期、所在地、各種の商品仕様など、検索者が自分の基準と照合できる情報を出すことで、検索意図を満たし、検索を終わらせる(そのうち一定割合はコンバージョンさせる)ことができるでしょう。

複雑度の高い検索対象に対して

検索対象についての概念が十分に形成されていない対象(検索者の知識や経験が乏しい対象)について検索するときには、検索者は「大きさの閾値」や「所感の安定性」に基づいて検索意図が満たされたかどうかを判断する傾向にあります。この場合のSEOでは、次の2つのアプローチのどちらかまたは両方を検討できます。

まとめ

ウェブ検索を使った人々の情報探索行動についての研究は数多くありますが、そのどれにも共通していることは「情報探索のプロセスは複数回の検索で成り立っていて、終了がある」という点です。検索者はキーワードを変えて検索しながら知識を形成していき「必要な情報はすでに十分に取得できた」と判断した時点で検索が終わります

検索者がそれ以上検索を続けなくても済むように工夫することで、検索意図を満たし、Googleに好かれるコンテンツを作ることができます。その工夫とは、検索者のタスクの複雑度と、検索者の経験や知識に留意し、検索者がタスクを完了できるだけの十分な情報をわかりやすく提供することです。あなたのコンテンツは検索を終えられるものになっているでしょうか?

脚注

  1. 有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル ↩︎
  2. Judgment-based and reasoning-based stopping rules in decision-making under uncertainty – ProQuest ↩︎
  3. Cognitive Stopping Rules for Terminating Information Search in Online Tasks on JSTOR ↩︎
  4. フォールン・ティンバーズの戦い – Wikipedia ↩︎

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