- 中国は現在、アメリカよりも多くのICBM発射台を保有しているという。
- アメリカ戦略軍は、上院と下院の両軍事委員会に向けた書簡にそう記し、警告した。
- しかし、ICBMと核弾頭の数では、依然としてアメリカに優位性がある。
核兵器全般の管理を担うアメリカ戦略軍(STRATCOM)の司令官を務めるアンソニー・コットン(Anthony Cotton)空軍大将は2023年1月26日、上下両院の軍事委員会に向けて、2022年10月時点の中国におけるICBM活動の状況を詳細に説明した書簡を送った。
Insiderが入手したその書簡によると、戦略軍は「中国の陸上配備の固定式及び移動式ICBM発射台の数は、アメリカのICBM発射台の数を超えた」と警告している。だが、核の優位性に関しては、依然としてアメリカの方が高いとも指摘している。
戦略軍は、中国の運用可能なICBMの数は「アメリカよりも少ない」とし、「ICBMに搭載する核弾頭の数も、中国の方がアメリカよりも少ない」とも記している。
戦略軍は2022年12月、中国のICBMが搭載する核弾頭の数がアメリカを抜いたかもしれないという懸念を抱いていた。その頃、上院軍事委員会の委員長を務めていた共和党の元上院議員、ジム・インホフ(Jim Inhofe)は「中国の軍事力の増大に関して、アメリカは氷山の一角を見ているに過ぎない」と述べていた。あれから2カ月後を経て、今回の情報開示となった。
戦略軍が軍事委員会に報告したこの非機密情報について、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が2月7日に初めて報じている。政府関係者や専門家が同誌に語ったところによると、中国の発射施設の多くは空のサイロ(格納庫)に過ぎないという。また中国の発射台の方が多いと戦略軍は警告しているものの、この報告にはアメリカに圧倒的な優位性のある長距離爆撃機や潜水艦発射ミサイル(アメリカの「戦略核戦力の3本柱」の2つ)が含まれていないとも指摘している。
とはいえ、固定式及び移動式発射台における中国の優位性は、中国政府がより強固なICBM能力の保有に近づいていることを示している。
アメリカ国防総省は「2022年版 中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告書」の中で、中国は2021年に試験・訓練目的で約135発の弾道ミサイルを発射したと述べている。この数には紛争地域での発射は含まれていないものの、他のすべての国の合計よりも大きい。また、3つのICBMサイロフィールドの建設についても報告されている。それらは合わせて少なくとも300の新しいミサイルサイロで構成され、「DF-41」のような新型の固体燃料ミサイルを格納し、より強力な抑止力が得られるとしている。
報告書では、中国の核兵器が引き続き拡大するとも予測している。中国は少なくとも400個の運用可能な核弾頭を保有していると考えられているが、2035年までにその数を1500個に増やすと見込まれている。一方、アメリカが保有する核弾頭は5000個以上で、ロシアに次ぐ世界第2位となっている。
中国やロシアがもたらす核の脅威に対抗するため、アメリカは現在のICBMに代わるよりコストのかかる新型ミサイルの開発に取り組んでいるが、実用化には何年もかかるとされる。アメリカ軍は、2022年12月に核兵器搭載可能な新型ステルス爆撃機を初公開したたほか、新型の弾道ミサイル潜水艦の開発も進めている。