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CEO Insights
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富士通はやっと「普通の会社」になる。時田社長が語る“1億総中流社会”に求められるもの

三ツ村 崇志[編集部]

三ツ村 崇志[編集部]

Jan 7, 2025, 6:55 AM

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富士通の時田隆仁社長。
富士通の時田隆仁社長。2019年に社長に就任し、事業改革などを進めてきた。
撮影:伊藤圭

「コロナの3年間もあり、人に対しての施策を全集中的にやってきました。

2025年は中期経営計画の最終年度であることを考えれば、『ようやく普通の会社になった』と言われれば十分です」

こう語るのは、グローバルで従業員数12万4000人。年間売上高は3兆7000億円を超える、国内ITサービス大手・富士通の時田隆仁(ときた・たかひと)社長だ。

時田社長は、生成AIバブル前夜の2019年6月に社長に就任すると、いわゆるJTC的だった年功序列の給与形態の改革やジョブ型雇用の推進。さらに、中期経営計画の要の一つとして業界横断的に社会課題を解決するITプラットフォーム「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」を掲げ、事業ポートフォリオ改革などを進めてきた。

2024年10月には時価総額も一時6兆円を超えるなど、2000年初頭のネットバブル崩壊以来の高値を付けている(1月6日段階の時価総額は約5兆7000億円)。時田社長に、富士通の変化と中期経営計画の現状、そして2025年の展望を聞いた。

「コンサルには頼らない」と断言する富士通社長が、なぜコンサル1万人計画を掲げたのか

「コンサルには頼らない」と断言する富士通社長が、なぜコンサル1万人計画を掲げたのか

中心的な役割を果たすのは大企業

時田社長
時田社長へのインタビューは、2024年の秋に本社機能の移転が完了した川崎のオフィスで実施した。取材場所となった会議室には、富士通が開発するシステムのデモを実施する設備もあった。
撮影:伊藤圭

——2024年は能登半島地震をはじめとした災害や、世界での選挙など、変化が大きい1年でした。こういった「変化」をどう捉えていますか。

時田隆仁社長(以下、時田):2024年は2025年以降の変化の予兆の年だったかもしれませんね。

日本での災害をはじめ、世界中で何かが起きれば、 富士通として何ができるのかは常に考えています。

能登半島地震の際には、製造業の乱れたサプライチェーンを立て直す際に「Fujitsu Uvance」のソリューションをお使いいただいて、迅速に復旧できました。存在意義を感じる1年だったかもしれません。

テクノロジーって、近いようで遠いじゃないですか。

スマートフォンを使っていて「これは生成AIだ」と考える人はほとんどいません。(テクノロジーの)何がすごいのかを実感する機会があるということは大きいです。

——Fujitsu Uvanceは、2022〜25年の中期経営計画でも将来の成長ドライバーとして力を入れてきた領域です。改めて位置づけを教えて下さい。

時田:Fujitsu Uvanceは、単なるソリューション群のブランドではありません。富士通が新しいビジネスモデルに挑戦して社会課題を解決する、キーテクノロジーやキーソリューションになればいいと思っています。

ビジネスとサステナビリティの両立は非常に重要な課題であり、当社も変わりません。サステナビリティを経営の軸に置く上で、1番問題になるのは、環境やデジタル社会、ウェルビーイングの課題など、いち企業では解決が困難だということです。

(課題を解決するには)同業の集まりではなくクロスインダストリー……。つまり、異業種間をつなぐスキームを作らなければいけない。

それをテクノロジーで支えるプラットフォームとして、Fujitsu Uvanceを発表しました。

導入コストも相応にかかりますし、人のリソースも、企業としての能力や体力も求められます。中小企業にあまねく導入するソリューションではないかもしれません。

中心的な役割を果たすのは当然大企業です。

大企業がリードして同じアプリケーションやデータインターフェースをステークホルダーに使ってもらうことで可視化し、施策を進める。Fujitsu Uvanceには、そのアクセラレーターとしての役割が求められます。

それを支えるのが、ブロックチェーン技術やAIの技術、コンピューティング技術やレイテンシーの低いネットワークといった、富士通が持つテクノロジー要素なんです。富士通では、「5 Key Technologies」と5つに分類して共に発信をしています。

Fujitsu Uvanceの考え方。
Fujitsu Uvanceの考え方。
画像:富士通 中期経営計画説明会資料より引用

「FAXでのやりとり」で露見した、富士通の現実

—— 異なる産業領域にテクノロジーを導入していく取り組みは、以前には行われていなかったのでしょうか。

時田:少し言いすぎかもしれませんが、富士通はクロスインダストリーをやってきていなかったんです。

当社は、長年システムインテグレーションサービスで成長してきました。製造業や流通業、金融業といった個別の業種やお客様のオーダー通りに作り上げるバーティカルに特化したビジネスモデルで成長してきました。

それ自体はまったく否定しません。ただ、Fujitsu Uvanceを発表する際に、ショックだったことがあるんです。

新型コロナウイルスの流行下で、病院と保健所、自治体の間でFAXでやり取りがされていた。これはものすごいショックでした。

——「システム連携できていれば」と、当時から指摘されていました。

時田:すべて富士通のお客様でした。富士通は病院のヘルスケア事業・電子カルテで大きなシェアを持っています。保健所のシステムや社会保障のシステム、自治体のシステムだって作っていた。

——でも、間をつなぐ(業種をまたぐ)提案ができていなかったと。

時田:要請があれば取り組んでいたとは思います。ただ、業種をまたぐような要請はそもそもその業種のお客様からは出てきにくい。

問題解決には業種間のコラボレーションが重要だということは、世界中でコンセンサスが広がっていますが、そのファクトをまざまざと認識しました。

——それが「クロスインダストリー」を強調する背景だったんですね。

時田:ほかにも、世界経済フォーラムのダボス会議に出席するようになり、ある種の気づきもありました。

(ダボス会議では)名前を言えばわかるような企業のリーダーと会話するのですが、特にIT系のグローバルリーダーと話をする時に、テクノロジーの議論にはならないんです。

「5Gネットワーク」がテーマだとしても、5Gどころか3Gも通っていない国に我々はどう貢献すべきか、ということを議論するわけです。自分の視野の狭さや視座の低さを感じたのも事実です。

「上司の命令を聞いていればよかった」の終焉

富士通
神奈川県川崎市にある富士通の本社。富士通は2024年秋に、東京都・汐留にあった本社を川崎に完全移転した。
撮影:三ツ村崇志

—— 2025年は、中期経営計画の最終年です。進捗は。

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