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    格ゲー世界大会で日本人優勝の報道→その大会、実在してた? 本人に聞く

    真偽のほどは……。

    市役所に勤める日本人プレイヤーがゲームの世界大会で優勝!……は本当に事実?

    9月27日、ある日本人プレイヤーAさんが格闘ゲームの世界大会で優勝したと朝日新聞と上毛新聞が報じた。優勝を伝える記事に対し、ネット上では「存在しない大会では」「プレイヤーネームを聞いたことがない」と疑惑が広がっている。

    その後、朝日新聞は記事を削除。上毛新聞は27日午後8時、記事を削除し「格闘ゲーム部門で優勝したとする報道は事実無根だったことが分かりました」と謝罪文をホームページ上で掲載した。

    BuzzFeed Newsは、Aさん本人と業界事情を知る関係者に話を聞いた。

    「そんな大会聞いたことがない」

    記事では、Aさんが9月20〜21日にフランス・パリで開催されたゲーム大会「オータムスタンフェスト2016」の格闘ゲーム「ギルティギア」部門で優勝。300万円の賞金と次回大会のシード権のうち、シード権を選んだと報じている。

    ところが、この記事について格闘ゲームファンの間で「そもそもそんな大会存在しない」「世界大会で優勝するようなプレイヤーなら国内でも名前が知られてるはず」と疑念の声が上がった。

    BuzzFeed Japanの調査によると、たしかに「スタンフェスト」という大会はパリで行われているが、公式サイトを見ると直近の開催は5月となっている。日本語・アルファベットのどちらで検索しても開催情報や他の参加者の声にはたどりつかない。

    「ギルティギア」の近年の国内大会の業績を見ても、記事中で言及されているハンドルネームの出場者が上位にランクインしている様子はない。

    Aさんのものと思われるFacebookページでは大会の様子の写真は上がっていないが、日本時間22日付けで「獲りました」という報告がある。

    ドイツを経由し、フランスに行く様子も収められているが、掲載写真の少なくとも一部は、Googleで画像検索すると、第三者の過去のブログの使用写真と完全に一致する。

    Aさんの主張

    ネットで上がっている疑惑を受け、BuzzFeed NewsはAさんに直接話を聞いた。

    改めて「オータムスタンフェスト2016」への参加の有無と、優勝したかどうかを聞くと「事実です」という。

    大会自体は「クローズドで開催されている招待制のもので、大会主催者からメールで出場の打診があった」とし「日本で言うとゲームセンターが主催するような小規模なもので、ネット上で情報はないと思う」と話した。

    Aさん自身はこれまでオンライン対戦を中心に活動しており、自身の名前が出るような大会にはほとんど出場していないそうだ。

    Facebookの写真に関しては「普段から建物や風景の写真を保存しているので、自分が撮影したものでない写真も使ってしまったかもしれない」。

    大会会場やプレイ前後の写真は「時間がとれず、撮影していない」という。

    大会の参加・優勝を示す証拠がないかを聞くと「小規模な大会だったので、賞状もトロフィーももらっていない」。

    海外大会ということで、ドルかユーロ建てであろう賞金額の詳細を聞くと、「実際に受け取っていないので正確な額は分からない」「300万円は過去の参加者に聞いたもの」とした。

    出場を打診するメールは「連絡があった当時の携帯電話が壊れてしまったので手元に残っていない」。正確な主催者の名称や開催情報の詳細は得られなかった。

    他のプレイヤーの見解は

    本当にAさんが参加したようなゲーム大会はあり得るのか。

    BuzzFeed Japanでは、海外の格闘ゲームに詳しいB氏に話を聞いた。

    B氏は業務でeスポーツに携わっており、主要な世界の格闘ゲーム大会も把握。自身も格闘ゲームのプレイヤーである。

    記事を見て驚いたというB氏。A氏が挙げた大会名に関しては「『スタンフェスト』という大会は実在するが、『オータムスタンフェスト』という大会は聞いたことがありません」と話す。

    A氏はクローズドの大会であるため知られていないと話しているが「『ギルティギア』の大会で賞金300万円は破格。常識的にはあり得ないと思います……」と疑問を呈した。

    格闘ゲームの世界では上位に行くプレイヤーは固定化されており、国内、世界大会レベルでもプレイヤーは顔見知りがほとんどだ。

    上毛新聞によれば「国内のゲームセンター主催の大会だけでなく、米・ロサンゼルスや欧州に遠征し、好成績を収めた」とあるが、A氏の顔を見た記憶はなく、オンラインでもA氏のハンドルネームには心当たりがないという。

    また記事にはA氏が「ギルティギア」「ブレイブルー」の2つのゲームで優勝したとあるが「どちらも同じ会社が作った格闘ゲームですが、オープン大会の場合、どちらのゲームでも上位に来られるのはすごく有名なプレイヤーだけです」とこの点にも疑問を呈している。

    朝日新聞によれば、働く市役所の部長や課長に後押しされて「『しぶしぶ』記者会見をした」というA氏。

    市役所はBuzzFeed Newsに対し「業務外のことなので本人に聞いてほしい。小さい大会なのでネットでは情報が出てこないと説明を受けている」と答えている。

    更新(9/27)

    上毛新聞が記事を削除したとの部分を更新しました。

    更新(9/28)

    上毛新聞は28日午前6時に「【おわび】『格闘ゲーム優勝』は虚偽」という記事を掲載。男性は「フランスには行っていません。周囲に行くと言った手前、引くに引けなくなってしまった」と話しているという。

    朝日新聞も同日午前3時に訂正記事を発表。「市の調査で事実ではないことが分かりました」としている。