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自民党の杉田水脈議員を伊藤詩織さんが提訴 誹謗中傷の投稿に「いいね」したため

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、自民党の杉田水脈衆議院議員と、元東京大大学院特任准教授の大澤昇平さんの2人を提訴したと明らかにした。

SNS上で事実に基づかない誹謗中傷の投稿などにより精神的苦痛を受けたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが8月20日、杉田水脈衆院議員(自民)と、大澤昇平・元東京大大学院特任准教授を相手取り、計330万円の損害賠償や投稿の削除を求める2件の訴訟を、東京地裁に起こした。

伊藤さんは6月、漫画家はすみとしこさんが誹謗中傷する内容のイラストをTwitterに投稿したなどとして、削除と謝罪広告などを求めて提訴。同時に、はすみさんの投稿をリツイートして広めたとして、男性2人を提訴している。

今回は杉田議員が、伊藤さんを中傷する内容の多くのツイートに「いいね」を押したとし、大澤さんは中傷的な複数ツイートを行ったとして、それぞれ提訴した。

訴状によると、杉田議員は2018年に英BBC放送の番組で、伊藤さんについて「彼女の場合は明らかに女としても落ち度がありますよね。男性の前でそれだけ飲んで、記憶をなくしてっていうような形で」などとコメントした。

さらに、自身のブログでも「伊藤詩織氏のこの事件が、それらの理不尽な、被害者に全く落ち度がない強姦事件と同列に並べられていることに女性として怒りを感じます」と伊藤さんに批判的な見解を示した。

また、Twitterで「仕事が欲しいという目的で妻子ある男性と2人で食事にいき、大酒を飲んで意識をなくし、介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性」などと伊藤さんを指すかのような表現をし、その女性の母親ならば「叱り飛ばします」などと記したという。

争うのは「いいね」

今回の裁判で伊藤さん側が争うのは、2018年当時で約11万(2020年8月20日現在は約18万)のフォロワーを持ち、国会議員という立場を併せ持つ杉田議員が、伊藤さんを中傷する内容の数多くのツイートに「いいね」 を押し、これらの中傷に好感を示したことだという。

訴状に示された、杉田議員が「いいね」を押したツイートは、以下のようなものだ。

「枕営業の失敗ですよね。結婚している男性と2人で飲みに行かないもんね」

「彼女がハニートラップを仕掛けて、結果が伴わなかったから被害者として考え変えて、そこにマスコミがつけこんだ!」

Twitterの機能上、いいねを押すことで、投稿主に通知が届くほか、この投稿の閲覧や、プロフィールの「いいね」欄を見ることで確認できる。杉田議員のいいねは、誰もが確認できることになる。

このため、杉田議員の「いいね」は「社会通念上許される限度を超えた名誉感情侵害行為にあたる」とし、伊藤さんに著しい精神的苦痛を与え、恐怖心さえ抱かせた、と主張している。

大澤さんは「偽名じゃねーか!」などのツイートが対象

東京大学大学院の元特任准教授の大澤さんは、准教授時代の2019年11月、自身が経営する会社では「中国人は採用しません」「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」などとツイートし、「中国人に対する差別」と批判を浴びた。

その後、本人は謝罪したものの、「東大は左翼の肩を持つつもりです。 共産主義の反日大学にすべきでない」といった投稿を行い、2020年1月に東京大学から懲戒解雇処分を受けた。

訴状によると、Twitterで約2万フォロワーを持つ大澤さんは、伊藤さんが2020年6月にはすみとしこさんらを訴えた後、次のような投稿をした。

「具合悪そうだから介抱したのに急に『レイプされた』とか(※差別的な表現を含むため、省略)社会的地位を落としにかかってくるのトラップ過ぎるし、男にとって敵でしかないわ」

2020年6月24日には、「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」とツイートしたという。この投稿で大澤さんは、破産事件に関する官報公告の一部と思われる画像を添えた。債務者の欄には、「伊藤詩織こと」と通名が、その隣には本名とされる名前が記され、伊藤さんは外国籍だと解釈できるものだった。

伊藤さん側は「破産開始決定を受けた事実はなく、社会的評価を著しく低下させることは明らかで、被告はツイート前に事実関係を調べてもいない」と主張している。

なお、「伊藤詩織」は本名だという。

訴状はまた、大澤さんの投稿は、伊藤さんがはすみとしこさんらを提訴したことを中傷するもので「いわば『三次被害』ともいうべき」とし、「被った社会的評価の低下は大変深刻」としている。

杉田議員の事務所と大澤さんは、BuzzFeed Newsの取材に「訴状が届いていないため、コメントは差し控えます」とそれぞれ語った。

伊藤さんは6月、はすみとしこさんら3人に対して、計770万円の損害賠償とともに、それぞれ該当するSNSでの投稿を削除し、はすみとしこさんには謝罪広告を掲載するよう求めて裁判を起こした。

これに対しはすみさんは、Twitter上で「言論の自由や表現の自由を守るために徹底的に戦う」と争う姿勢を示している。これまでも複数回、「風刺画は完全なフィクション」「実際の人物や団体とは関係がありません」などとツイートしていた。

弁護団によると、伊藤さんを誹謗中傷する投稿の数は、Twitterだけでも約1万件に達しているという。