菅義偉首相が任命した内閣官房参与の高橋洋一氏(嘉悦大教授)が、日本の新型コロナウイルス感染状況について、「この程度のさざ波」「これで五輪中止とかいうと笑笑」とツイートし、批判を集めている。
内閣官房参与は、非常勤の国家公務員。首相の諮問に答え、意見を述べる役職だ。一部では「更迭」を求める声もあがっている。
高橋氏は元財務官僚で、経済学者。2020年10月に菅首相によって、「内閣官房参与」に任命されている。「経済・財政政策」の担当者とされている。
そもそも、内閣官房参与とは何か。具体的な役割に関する政府の見解は、こうだ。
内閣官房参与は、必要に応じて内閣官房に置かれる非常勤の一般職の国家公務員であり、内閣総理大臣の諮問に答え、意見を述べることとされている。その選定については、その時々の内閣の重要政策等について優れた識見を有する者の中から、内閣総理大臣が、適任であるという観点から人選を行い、任命しているものである。
そのうえで、批判が集まっているのは、5月9日の以下のようなツイートだ。
日本の100万人当たりの新型コロナ新規感染者数を、インドやフランス、カナダ、ドイツ、イタリア、アメリカ、イギリスと比較したグラフを引用しながら、こう発言した。
「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」
内閣官房の見解は?
高橋氏はこの前日、五輪の中止を求める声が競泳・池江璃花子選手に寄せられているニュースに反応しており、こうした声に呼応した発言とみられる。
感染者が一部の国に比べ少ないとはいえ、医療状況は逼迫しており、都市部では緊急事態宣言も出され、連日数十人の死者が出ている。
そのような状況を「さざ波」「笑笑」などと表現したツイートには、更迭を求める声も含め、批判が集まっている。
内閣官房内閣総務官室はBuzzFeed Newsの取材に対し、発言について一部で報道があったことは把握していると回答。
人事を含む今後の対応についても問い合わせたが、「政府の立場としての発言ではなく、現状、対応を取る状況にない」と述べるに止まった。
一方、「さざ波」という表現に対しては、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が、「コメントを差し控える」と回答。
表現としてふさわしいのかという点についても、「感染状況についての評価は差し控えたいが、コロナ対策に全力で取り組んでいる状況」と答えた。
BuzzFeed Newsは嘉悦大学を通じて高橋氏にも見解を問い合わせており、回答があり次第、追記する。
UPDATE
高橋氏は5月10日夕のネット番組「文化人放送局」で 【高橋氏釈明】として、以下のように述べた。
「グラフを見てもらうと、確かにさざ波なんですね。他の国と比べると全然違う。このような状況で五輪中止というと、世界から笑われてしまうんじゃないのということをツイートした」
「それに対していろいろな人が、死者をさざ波っていうのかというんですが、感染者数ですので、英語をきちんと読んでくださいということです(笑)笑ってるのは死者の話じゃなくて、五輪中止というと笑い者になるんでしょというだけ」
そのうえで、日本側から中止を申し入れると賠償金を支払うことになるのではないかと指摘。
批判については「読まないで条件反射的に書いている。前後の話を読んでから言った方がいい」「さざ波はさざ波。中止と意見を言うのはいいが、今の段階で政治課題にはなりにくいのではないか」などと述べた。
UPDATE
高橋氏の発言と内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の回答を追記しました。