表紙のイラストから、かわいくて気楽に読める獣人のお話だと思って読み進めたら、とってもシリアスな展開でびっくりしました。自分がゲイだということで苦しんでいる哲平と、先天性獣化症という病気で苦しんでいる祭とが出会い、互いに互いの苦しみを理解しよ
うとし、でも違う人間だから理解しきれずにさらに苦しむ・・というスパイラルに陥り、もがく姿が切なかったです。「みんな違ってみんないいじゃん」という単純な話ではなく、アンコンシャスバイアスを含めた人間の持つ「違う」ことに対する排除の意識を丁寧にストーリーに落とし込んでいます。祭の最大の味方である母親も、祭が男を好きになったと知った瞬間に「それはダメ」という意識を全面に出します。「哲平に出会えたから俺はこの病気でよかった」などというきれいな話のもっていき方はせず、「俺は普通に生まれたかったよ」と本音を吐露するシーンが胸に迫りました。「普通」であること、大多数であることは時に激しい暴力となってマイノリティを傷つけます。強さを身に付けることでしか生きられない現実世界を考えさせられるストーリーでした。
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