悩める公爵

愛し合っての結婚ではなかったと傍目に見えても、当人たちはそうではなかった。
穏やかに心の底から愛し合う二人は、信じられないほど結び付きが強くて、それでいて大変に控え目なのでどこかよそよそしい。互いに誠実であろうとしていろいろ考えてしまい、可愛らしいくらいに相手に大胆になれない。
読んでいるこちらはとても清らかなものを見せつけられたような気になってくる。
この夫が、自分の母親から、そして、ヒロインを抑圧する彼女の祖母から、自分が盾となり、実に気持ちよく妻を守るのだ。それだけで胸が熱くなる。

政略結婚であるかのように二人は自分達の婚姻が両家にメリットがあったことを認識している。
しかし、その点も、この夫は綺麗事で騙したりしておらず、寧ろ、清々しいほど堂々としている。ヒロインはと言えば、祖母の圧倒的支配を受けてきたせいか、どこか自然に振る舞えない処があった。それを気持ちよく優しさでほぐして夫は妻をより輝かせることが出来る。妻は愛されているとの自信を夫に植え付けてもらった。

ストーリーは、取って付けた上品さではなく、貴族階級の豊かな暮らしぶりを内側から描写し、同時に、どこでもいつの世でも変わらぬ、たちのよくない嫌みを言う人間や、陰険さをぶつけてくる人も登場。他人を貶めたり攻撃したりすることは、上流階級であろうと身内であろうと繰り広げられる、ということを見せつける。
そんな、時に、攻撃からかばい、ヒロインをとても大切にする姿は、最高の夫だろう。
当初一歩引いているかのような、醒めた人に見せておき、頁が進むにつれ、じんわりと妻を愛するところを見せつけるように構成されている。

如何せん、顔が私の好みとは言い難い。しかし、そこだけだ。服装の方はクラシックが似合う。
財力、資力などを豪邸の外観で打ち出す作品は多いが、本作は建物の内部描写が実に見事だ。繊細にして多様な内装・調度が手間を惜しまず描き込まれ、どれも歴史物に相応しい存在感があり、味もある。
巻頭のカラー頁の色使いがこれまた高い画力を伺わせ、ほかのも、カラー頁が見たいと思った。

ヒロインが可憐で愛らしい。控えめながら夫である公爵を心から愛している姿が本当に可愛い。
一方の夫も、美しく紳士的で男らしい。文句のつけようのないカップルなのだ。
絵柄がキレイで、ヒロインのドレスや室内装飾などが細かく描き込まれていて、貴族や王族の気品が漂う。
特に好きなのは、ヒロインの表情。可憐なだけでなく聡明な新妻が、夫に愛され、夫をサポートし、より美しくなっていく。そして二人の愛もより一層深まる。とても優雅で穏やかな愛の物語です。何度読み返しても深い味わいがあります。

最初ヒロインは貴族の妻とはかくあるべしと言うおばあ様の言葉にがんじがらめにされていました。
ヒーローもお金目的の政略結婚だったのでヒロインに遠慮してしまって、なかなか一歩を踏み出せずにいたのですが周りのうるさい人達の色んな意味のおかげで一歩を踏み出すことに。
お互いの心の内を吐露したおかげでラブラブになれました(≧∇≦)
絵もすごく綺麗で、話の進み具合も良かったです。
子供ができるくらいまであって欲しかったけど、ホッコリした気持ちになれたので良かったです(*^-^*)

うわぁ、なんて可愛い夫婦！夫に愛される妻は美しさが増すってこういう事でしょう。語学堪能で知性派な出来る夫婦。極甘でイチャイチャしてても、穏やかでゆったりした二人の世界の安定感。「恋が出来る幸運」を静かな空気に包んでおすそ分けされた気分です。

絵も美しいし、慎ましく芯のあるヒロインも、一途なヒーローも素敵でした！
酷い横やりなどもおらず、最後まで緩やかな展開ですが、エピソードの１つ１つが練られていて、二人が愛を深める素晴らしい展開には感動します。
オススメです！