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金沢21世紀美術館が今見せるべき作品128点「コレクション展3」

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢21世紀美術館で2月1日から、収蔵作品全128点を展示する「コレクション展3」が開催されています。

同展は20周年を迎えた金沢21世紀美術館が特に力を入れている企画展で、4,000点を超える収蔵作品の中から「今見せるべき作品」をテーマにキュレーターが選んでいます。

大型のインスタレーション作品の収蔵が多いという同館の特徴を表す展示として、今回はラファエル・ロサノ=ヘメルさんの「パルス・ルーム」が13年ぶりに公開されました。


ラファエル・ロサノ=ヘメル《パルス・ルーム》2006

展示室全体を使ったこの作品は、2009年に作家が展示室にあわせて制作したもので、天井に300個もの白熱電球が吊り下げられています。

展示室には心拍センサー付きのスタンドが置いてあり、グリップを握るとその人の心拍のリズムが電気信号となって、白熱電球に伝わり光るという仕組みです。

心臓のリズムが目に見える光となって灯っては消え、移動していく様子は、美しくも儚い人間の命を表しているようです。

また、2024年9月に逝去したレベッカ・ホルンさんの作品「炎に包まれた8つの髪束」も追悼の意を込めて、展示しています。


レベッカ・ホルン《炎に包まれた8つの髪束》1993

学芸員の髙木遊さんは「現代美術の醍醐味は作家に直接作品について聞いたり展示方法を話し合ったりできることだが、亡くなったアーティストの作品とは今後どのように関わっていくべきか議論しながら展示した」と話します。

リクリット・ティラヴァニさんの「第八章: まだ見ぬ欲望に回帰し、より遠くのものは旅をし、より近いものは(疑惑へと)戻り行く、そして、もう一度、彼は木の下で目覚める」も不思議な作品でした。


リクリット・ティラヴァニ 《第八章: まだ見ぬ欲望に回帰し、より遠くのものは旅をし、より近いものは(疑惑へと)戻り行く、そして、もう一度、彼は木の下で目覚める》2013

本作は時間旅行をテーマにした8組の作品の最終章で、未来への旅に飛び立つためのゲートを表していると髙木さんは説明します。

ダーウィンが進化論を表すために書いた「生命の樹」と円、そして円柱に置かれたスポンジ・ボブ風のオブジェ。

スポンジ・ボブのアニメの中で未来を描いたエピソードに由来して、置かれているとのことです。

「日常性をアートの場に持ち込むことで人々の価値観に揺らぎを与え、歴史、システム、制度等、既存の枠組みへの疑義をユニークな方法で試みている(金沢21世紀美術館プレスリリースより抜粋)」と評されるリクリット・ティラヴァニさんならではの表現方法なのかもしれません。

展示ゾーンを出て、誰でも観覧できるデザイン・ギャラリーには、韓国人作家・ギムホンソックさんの「これはうさぎです」があります(います?)。


ギムホンソック《これはうさぎです》2005

広々としたデザイン・ギャラリーの中央にマットが引かれ、その上にうさぎの着ぐるみが寝転んでいます。壁に貼られたテキストには、着ぐるみの中には不法滞在の労働者が入っており、パフォーマンスを行っていること、パフォーマンスには報酬が支払われていることが書かれているそう。

一見かわいいうさぎの中身は一体何なのか、よく見ると着ぐるみも真っ白ではなく薄汚れているような、そもそも中に人は入っているのかいないのか…。

フォルムに隠された中身や存在意義、給料を払えば何でも誰でも正当化されるのかなど、実は様々な課題が浮かび上がる作品でした。

現代美術を熟知した金沢21世紀美術館が「今見せるべき」と示す興味深い作品は、今年のゴールデンウイーク過ぎまで観覧できます。

春~初夏の金沢旅行の1ページにもぜひ。

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コレクション展 3
場所:金沢21世紀美術館(〒920-8509 石川県金沢市広坂1丁目2-1)
期間:2025年2月1日(土) ~ 2025年5月11日(日)
前期:2月1日(土)~3月23日(日)
後期:3月25日(火)~5月11日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜日(ただし2月24日、5月5日は開場)、2月25日、5月7日
料金:一般 450円(360円)、大学生 310円(240円)、小中高生 無料、65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線、動画配信サービスのまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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