Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
ホーム >
コミュニケーション知恵袋 >
人間関係 >
自己中心的な人,病気,原因,対策

日付:

自己中心的な人,病気,原因,対策

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「自己中心的な人」です。自己中 自己中心的な人 対策

相談者
35歳 会社員 男性

お悩みの内容
自己中な人が多くて困っています。日常生活では毎回遅刻する人がいて、職場ではチームワークを乱して、自分勝手な行動をする人がいます。いつもイライラしてしまうので対策を知りたいです。

自己中な人の身勝手な言動に振り回されているんですね。職場やグループに自己中な人がいると、その場の雰囲気が悪くなることもあるため疲れてしまうこともあるでしょう。そこで今回は、自己中になる原因と上手に付き合う方法・対策を紹介します。

自己中になる原因

自己中心的になる原因は、以下のような複数の要因が挙げられます。自己中心的な人は、いろいろな要因が複雑に絡み合い出来上がっていると考えられています。

遺伝的性格

遺伝的な気質が、自己中の原因になっている場合もいます。私たち人間は、生まれながらに決まっている性格や障害があります。その行動傾向が、自己中に見られてしまう事があります。

自己中と遺伝や病気の関係

遺伝研究で有名な安藤先生の調査によると、協調性の遺伝率は46%あることがわかりました(講談社,2000)[1]。逆をいえば、協調性が無い自己中心的な人も半分くらいは遺伝が影響しているといえます。生まれながら決まっている気質から、自己中な人にみられがちな障害には次のようなものがあります。

自己中心的な人 原因 遺伝自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害の人は自己中心的な振る舞いが多く、他人の感情やニーズに無関心で賞賛や特別扱いを求める傾向があります。

反社会性パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害は他人の権利や社会の規範を無視し、違法行為や詐欺など反社会的な行動を繰り返すことが特徴です。

ダークトライアド
ダークトライアドは自己愛、マキャベリズム、サイコパシーを指し、他人に対して攻撃的で操作的な言動が多く、共感や道徳性に欠けます。

自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラム障害の人は自分の要求や感情を直接行動に反映し、自己中心的に見られることがあります。社会的なやり取りが難しいことが特徴です。

自己否定感

自己否定感が高い人は、自己中になりやすい傾向があります。物事をネガティブに捉えると、心に余裕がなくなり、他人にも厳しくなりがちです。自分のことしか考えられなくなり、他人に対して身勝手な行動が増えてしまいます。

自己否定感と他者否定感研究

細田ら(2009)[2]は、中学生305名を対象に、自己肯定感と他者肯定感の関連を調査しました。その結果、自己肯定感と他者肯定感は、正の相関になることが分かりました。自己肯定感が低い人は、他者肯定感も低い傾向があるということです。

自己否定と他者肯定感

この結果は、自己否定感でも同じことが言えます。自己否定感が強い方は、他者否定感も強いことが多いです。他人の思考を受入れることができず自分の利益だけを追求してしまいます。その結果、自己中な行動が増えてしまうのです。

ナルシズムと注目欲求

注目されたいという欲求が強くなると、周りへの配慮が不足しているにも関わらず、自分が目立てばよいという考えになりやすく、自己中になる可能性があります。例えば、集団で会話をしているときに、他人の発言を遮るようなことが出てきてしまいます。心理学の研究では自己愛(ナルシズム)が誇大な方は、注目されたいという欲求が強く、いことがわかっています。

注目欲求と自己愛研究

中山ら(2006)[3]は大学生309名を対象に自己愛の構造について調査を行いました。その結果の一部が以下の図となります。自己中心的な人 原因 注目欲求

自己愛が強い(誇大型)群は、自己愛が低い群と比べ注目欲求が高い傾向にあることがわかりました。自己愛が大きくなると、注目欲求が増え、自己中になる可能性が高くなると推測されます。

自己抑制力

自己中心的な人は、自分を抑える力が不足していることが原因の1つと考えられます。自分を抑える力が不足している方は、感情の赴くままに行動するため、自己中になる可能性が高くなります。

自己抑制力と迷惑行動研究

原田ら(2009)[4]は、高校生414名と大学生227名を対象に自己抑制力と迷惑行為の調査を行いました。その中で、迷惑認知・迷惑行為経験頻度・逸脱行為悪質性軽視の3つについて自己抑制力との関係が調査されました。その結果が以下の図です。

自己中心的な人 原因 自己抑制力自己抑制力が減ると、自分が迷惑なことをしている感覚が減り、迷惑行為や逸脱行為が増えることがわかりました。つまり自己抑制力が減ると自分が悪質な事でもやっていいという感覚が増えてしまうのです。このことから自分を抑える力が不足している方は、自己中な行動が増えるといえます。

過保護な養育

自己中になる方の中には、過保護な養育環境が影響いている場合もあります。自分勝手に育てられた子どもは、自己中心的になりやすい傾向があります。必要以上に甘やかされて育てられると他人を思いやる言動が減ってしまいます。周りへの配慮に欠ける行動が自己中になってしまいます。

過保護な養育と思いやり行動の研究

戸田(2006)[5]は、幼児の母親176名を対象に調査を行いました。その中で、過保護な養育と思いやりの行動についての調査が行われました。その結果、過保護な養育と思いやりの行動には負の相関関係にあることがわかりました。

自己中心的な人 原因 過保護

つまり過保護な養育をすればするほど、幼児の他人を思いやる行動が減りやすいと推測できます。他人を思いやれない言動が自己中と捉えられてしまうのです。

経験不足

自己中になる人の中には、人間関係にもまれてこなかったがために、経験不足で人を傷つけてしまう方もいます。経験不足な方であれば、周りから指摘をしていくことで改善していく可能性が高いと言えます。

自己中な人への対処法

自己中心的な人への対処法を8つ紹介します。

①背景を考える
②期待値を下げる
③疑似体験作戦
④アイメッセージで主張する
➄きっぱりルール
⑥スルーする
⑦距離を取る
⑧助けを求める

ご自身の事情に合わせて組み合わせて活用ください。

①背景を考える

自己中な言動をする人と遭遇したら、その心理的、性格的な背景を考えてみましょう。自己中心的な人の中には、もともとの性格、抑うつ感が強い、自己制御力が無い、などの問題を抱えています。損をするような行動ばかりをしているのですから、実は辛い気持ちを持っている方は多いです。

たとえば、私があおり運転をされた時には「辛いんですね。大変ですね。」と考えるようにして、相手に道を譲るようにしています。このように自己中な人の背景を考えると静な気持ちでいられるのでお勧めです。

②期待値を下げる

自己中な人と接するとイライラする場面が増えるものです。人間の心理として、イライラや満足は、相手への基本的な期待が関連しています。例えば、以下のような事例が挙げられます。

3日後が納期の仕事を依頼した。3日後に納品してもらうのが基本的な期待。

  →即納してくれた     →感動
  →1日前に仕上げてくれた →満足

  →納品が3日後      →納得

  →納品が遅れた      →イライラ
  →永遠に納品されない   →怒り

このように、私たちが他人に対して、イライラするときは自分のなかで期待が絡んでいるのです。ここで自己中な人にイライラすることが増えたら、あらかじめ自己中を盛り込んで最初の期待値を下げておくことをオススメします。期待をそもそも下げておけば、自己中な人に振り回されることも少なくなります。

例えば、納期が1日くらい遅れる人であれば、1日遅れる「前提」で仕事を依頼するのです。このようにあらかじめ相手の自己中な行動を盛り込んだ上で、対処をしていく選択も大切になります。

 

③疑似体験作戦

自己中な方は、人の気持ちをくみ取ることが苦手です。そこで相手の気持ちを自分に置き換えてもらえるよう促します。例えば以下のような事例が挙げられます。

遅刻が多い、納期を守らない自己中な人
→「○○さんが納期を破られて仕事がすすまなかったらどう思う?」
と問いかける

お金に対してルーズ,返さない
→「もし貸したお金を返してもらえなかったらどう思う?」
と問いかける

このように、相手の気持ちの疑似体験を促すことで、周りの気持ちに気がつくケースもあります。嫌なことをされたら、「もし自分が同じことをされたらどう思う」という質問も使ってみてください。

④アイメッセージで主張する

アイメッセージで主張する方法は、「私は○○に感じる」「私は○○してほしい」と、自分を主語にして相手に主張する方法です。これにより、指示的にならず比較的穏やかに自分の要求を伝えることができます。

以下に、事例を交えながら説明します。

約束の時間に遅刻が多い友人
→「約束の時間に遅れると、私は待っている間不安になる。次回は時間通りに来てほしい」

仕事で納期を守らない同僚
→「納期が守られないと、私の仕事にも影響が出て困ります。期日までに完成させていただけると助かります。」

このように、アイメッセージを使うことで、相手を攻撃せずに自分の気持ちや要望を伝えることができます。これにより、相手も防衛的にならずに話を聞く可能性が高まります。

⑤きっぱりルール

アイメッセージで主張をしても、行動が直らない場合は、曖昧な言葉ではなくキッパリとルールを決めて伝えましょう。ルールは破った場合に起きる事とさよならラインも決めます。さよならラインとは、関係が終了するラインになります。具体例を挙げます。

いいかげんな取引先
→「次に連絡なく納期を破った場合は取引先から解消する」
 と宣言

恋人関係
→「1週間以上連絡が途絶えたら別れる事になります」
思い切って宣言

ルールは曖昧にせずけじめをしっかりつけておくことも大事になります。実際に破られたら関係を終了する勇気を持つことも必要です。なおルールの明確化については、心理学用語で「限界設定」と言ったりします。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

限界設定のやり方

⑥スルーする

短期的な関係で今後付き合うことが無い相手であれば、関わらない(スルーする)ことは有効な対策になります。

たとえば、
・あおり運転をされた
・SNSに匿名で悪口を書き込まれた
・電車で割り込まれた

このような場合は「スルーする」でいいでしょう。自己中な人に関わることで、自分の幸福な時間を吸い取られてしまうかもしれません。自分の大切な時間を使われてしまうのは非常に残念ですから注意しましょう。

⑦距離を取る

長期的な関係にある自己中な人に対しては、いったん距離を取ることが有効な対策となる場合があります。

例えば、以下のような方法が挙げられます。

・連絡の頻度を減らす
・一緒に過ごす時間を制限する
・自分の境界線を明確にする

このような場合、一時的に距離を置くことで、関係性を見直す機会を作ることができます。

自己中な人との関わりで疲弊してしまうよりも、一時的に距離を置いて自分の時間や精神的余裕を確保することが、長期的には良好な関係づくりにつながる可能性があります。自分の幸福と健康を第一に考え、適切な距離感を保つことを心がけましょう。

⑧助けを求める

自己中心的な人との狭い関係に閉じ込められると、いつの間にか非常識なことが常識になってしまうケースがあります。例えば、家庭内暴力の状況では、家庭内で独自のルールが作られ、それを破った時に暴力に発展することがあります。

このような環境に長期間さらされると、被害者は自分が置かれている状況の異常性に気づきにくくなります。これを防ぐには、自己中心的な人との狭い関係に閉じこもるのではなく、多くの人々とつながりを持つことが重要です。

例えば、

・信頼できる友人
・家族や親せき
・専門家

など、自分一人で悩みを抱え込まず、様々な人に相談することが大切です。多様な視点を得ることで、自分の置かれている状況を客観的に見つめ直すことができます。

自己中な人しか周りにいない…という方は、以下のコラムを参考にしてみてください。

ソーシャルサポートコラム

まとめ

当コラムの内容は動画でも解説しています。仕上げとしてご活用ください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

 ・自己中な人への対応,主張練習
 ・さよならラインの設定,限界設定の仕方
 ・期待値を下げる,アンガーマネジメント
 ・人間関係の対応力を向上させる練習

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

自己中心的な人,病気,原因や対策,コミュニケーション講座

助け合い掲示板

コメントを残す

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*出典

[1] 安藤 寿康 (2000).心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観 講談社

[2] 細田 絢・田嶌 誠一 (2009). 中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究  心理学研究, 57, 309-323. 

[3] 中山留美子・中谷 素之 (2006). 青年期における自己愛の構造と発達的変化の検討 教育心理学研究, 54,2, 188-198. 

[4] 原田知佳・吉澤寛之・吉田俊和(2009),自己抑制が社会的迷惑行為および逸脱行為に及ぼす影響-気質レベルと能力レベルからの検討-,Vol. 48, No. 2,P122–136

[5] 戸田 須恵子(2006),母親の養育態度と幼児の自己制御機能及び社会的行動との関係について,釧路論集:北海道教育大学釧路校研究紀要,第38号,P59-69