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ヤフーの展望は?メディア懇親会後、執行役員小澤氏に直撃

石郷“145”マナブ

高水準の成長が続くYahoo!ショッピング

高水準の成長が続くYahoo!ショッピング

 昨日、ヤフー株式会社(以下、ヤフー)は、メディア懇親会を開催し、その席上、Yahoo!JAPAN 2016年の振り返りと来年の展望について、説明があった。Yahoo!ショッピングにとってこの一年はどうなったのだろうか?ヤフーのショッピングカンパニー長 小澤隆生さんは、壇上に立ち、流通総額のグラフを指し示し、高水準の成長が継続されていることを強調した。上の写真の通り、2015年第二四半期が前年同期比30.2%増、2016年第二四半期が昨年同期比27.8%増と、昨年度と同レベルの成長率である。

 大局観でいうと、昨年、ヤフーは実は、ショッピングにかなりの投資をした。昨年で言えば、この時期は、宮川大輔さんによるテレビCMを打ち、誰でもポイント5倍と高らかに宣言した。それに対して、今年は静かである。それにはワケがあって、敢えてマーケティングを強化するのではなく、純粋に、サービスの質をあげて、どれだけ成長率を維持できるかを検証しているからなのだ。それで言えば、高成長を維持していることは、ある種、今の取り組みが正しいことを指し示していると言っていいだろう。

商品数が2.6億品で国内最高。いまや「ヤフーに来ればなんでもある」

商品数が2.6億品で国内最高。いまや「ヤフーに来ればなんでもある」

 では、サービスの質の向上とはなんだろう?それには、3つ挙げられる。
まず、商品数が2.6億品で国内最高となった点だ。出店料を無料にする「eコマース革命」から3年が経ち、小澤氏は、この3年で一区切りと捉えていて、そこでの成果を意識している。かなり前の段階で、出店数としては日本一の45万店舗を達成したが、大事なのは商品数。ようやく商品数でもナンバーワンになれた。「ヤフーに来れば、なんでもある」という事実が、小澤氏の描くヤフーの未来像において重要であり、これをフックに、次のフェーズに繋げていくことを示唆した。

 その上で、2つ目。今年うまくいったと考えられる施策として、セールを挙げた。説明の中で、「SoftBankホークスの優勝セールは優勝しないのに昨年より売れました」と小澤さんは、そう言って笑いを誘った。いい買い物の日も2年目にして根付いてきており、年末のウルトラセールも好調に推移しているという。それに加え「5のつく日(5のつく日はお買い得)」というのがかなり根付いていて、5のつく日に、売り上げの山が立つようになってきてきたと話している。お客様の間で、ヤフーで商品を買おうという機運が生まれている証拠であり、お店も、それに応える商売のヤマ場をどこで作ればいいのかをわかった上で、勝負をする環境が整ってきていることを指し示している。

ヤフープレミアム会員の利用者が増加傾向

ヤフープレミアム会員の利用者が増加傾向

 3つ目は、Yahoo!プレミアム会員の利用者増だという。ショッピング内で、プレミアム会員はポイント5倍(今は10倍)といった具合に、プレミアム会員の特典を強化していることが奏功しているようだ。ここで面白いデータがある。Yahoo!ショッピングの全体の売り上げの中で、プレミアム会員が占める取扱高は60%にも及び、日によっては70%を占めるまでになってきたというのだ。

 今までで言えば、「Yahoo!ショッピングをなぜ使うのか」という部分に対して、明確な答えがなかった。ただ、この事実は、少なからず、プレミアム会員にとって「最も買うべき場所」になったということを意味している、と小澤氏は説明する。やはり昨年と今年で、ヤフーが置かれている環境が変わっていることを、感じずにはいられない。昨年、「誰に対しても5倍」と言っていた段階から、多くのお客様が集まったからこそ、お客様を絞り込んで、丁寧にお客様を見据えた施策をするようになったという印象を受ける。去年と今年で、ヤフーが違った意味合いを持って、ショッピングモールを運営していることは、同時に、ヤフーが、先を見据えて、きちんとした戦略のもとで、動いていることをよく表しているように思える。

 2017年度は、小澤氏は、まさにeコマース革命の第2フェーズに入り、そのための準備を今からしていることを強調した。会員ベースで取扱い高が上昇していく状況に入ったことで、ストアの態度に変化が見えているのもYahoo!ショッピングの未来を考える上で好材料だ。広告の売上高も前年同四半期比にして2.2倍となっているというのだ。「ストアも売れるというものにはきちんと広告を出していただける準備があるんだなという実感があります」と小澤氏は話す。確実に売れる環境が築かれた今、ストアのヤフーへの信頼感が増している。まさに、ストアとお客様とYahoo!ショッピングのトライアングルが程よくいい関係で釣り合い始めていると言っていいだろう。

ヤフー小澤さんに直接、話を聞いちゃいました!

 最後に、説明の後、小澤さんに直接、お話を伺う機会があり、その中で、印象的だったのは、いろいろなモールがある中で、Yahoo!ショッピングのスタンスは?という質問についての答えだった。「私たちはあくまで、プラットフォーマーなのです」だと。例えば、YouTubeやブログで自己表現をする人がいるが、これはYouTubeやブログがそれをやるのにふさわしいプラットフォームたり得ているから、だという。動画で、文章で、自分の才能や個性を、YouTubeやブログを通して、発揮する人がいるのと同様に、ECで自己表現をする人がいたっていい。そこで出てくるのが、Yahoo!ショッピングなのだと。

 法律に違反するということは勿論、除外するとしても、我々の姿勢では、基本、あれこれと制約を課しません、と断言した。思う存分にECという手段で自己表現をして、それで勝てなければ、自然に消えていくというわけから、それでいいのではないかと。ただ、当然、自己表現しようという度合い、言うなれば、想いが強ければ、それにふさわしいサポートも必要だとヤフーはしっかり考えている。

 それが、例えるなら、PRオプションなのだ。PRオプションは特定のキーワードに入札して、ショッピング内で、入札額の高かった店舗が、そのキーワードを検索した時に、自分たちの商品を露出しやすくできるというものだ。だが、良心的なのは、かけた分のお金が実際に支払われるのは、商品が売れた時のみ。要は、成果報酬なのだ。フェアな形で表現の場を提供し、オプションを使うなどして、自らの表現の仕方が正しければ、売れて行く。まさに、プラットフォーマーという姿勢だからこそのこの施策であるように思う。場所を提供し、ヒントもあるのだから、あとは、ストアの気持ち次第ということになるだろう。

 今の例がそうであるように、ヤフー側で用意されているオプションは、きちんと小澤さんのいう“自分たちはプラットフォーマー”という軸に沿った形で提案されていることが、わかるし、だから、わかりやすい。ショッピングにおける考え方が、あらゆる企画やオプションと一貫していて、心地が良い。

 綿密な計算があるであろう、小澤さんに、山でいうなら、今のヤフーはどのくらいまできているのでしょうか。そう聞くと、答えは「まだ2合目」と返ってきた。どこまで登ろうというのか。ただ、その足取りは、しっかり着実なもので、足元がしっかり見えていて、一歩一歩とそこに沿って着実に登っている。地道にコツコツと。そして、その頂に見るヤフーの未来。大いに期待したい。
 さぁeコマース革命の第2章がもうすぐだ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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