現在の高倍率ズームレンズ「28-300mm」や「18-200mm」は1本で単焦点レンズの4~5本分の焦点距離を実現するとともに、画質的にも遜色ない水準に達している。一眼レフ用交換レンズ全体の約90%以上はズームレンズといわれ、人気はとても高い。
ズームレンズの基本構造はレンズ群(複数のレンズのペア)がいくつも組み合わさっており、ズームリングを回すことでレンズ群がレンズ本体の中を移動し、広角から標準、望遠それぞれの焦点距離に変化していく。一般的に倍率が上がるほどレンズ群は増え、全長もより長くなり、重量も増す。また、レンズ本体にはカムと呼ばれる斜めの溝が切ってあり、これによってレンズ群をスムーズに移動させるようになっている。
「理論的にはズームは無限に伸ばすことができます。ですが、現実的には15倍程度が製品としての限界です」とカメラ・レンズメーカーの株式会社シグマは説明する。
レンズ群をどんどん増やし全長を伸ばし続けると、カムが重量に耐えられず、うまく滑らなくなってしまう。加えて、ズームレンズが数十キロ以上にもなれば撮影者の負担も大きくなる。一人で持ち上げ、三脚に取り付けるのが困難になるうえ、通常の三脚では支えきれないだろうという。
かといって、サイズ、重量を無理に抑えようとすると肝心の画質が低下する。「15倍程度が製品としての限界」といった意味は、レンズとして使いやすいサイズ、重量、画質、F値をクリアーできる技術的限界は15倍程度ということだ。
では、現在のズームレンズの倍率で打ち止めなのか。
「28-300mmのような高倍率ズームは15年前には『絶対不可能』といわれていましたが、コンピュータ導入による開発スピードの加速化、ガラス素材や工作機械の向上などの技術革新によって可能になったわけです。ですから、10年後にはさらなる技術革新で、20倍ズームが出てきても不思議ではありません」と同社。
ズームレンズが初めて登場したころは画質が悪い、重い、大きい、高いといわれ、ひとつもいいところがなかった。だが、今や主流はズームレンズ。10年あるいは20年後には、ひょっとするとカメラレンズはすべてズームレンズという時代になっているかもしれない。
(羽石竜示)