アニメ「アイカツ!」の木村隆一監督とシリーズ構成・脚本の加藤陽一さん、初の対談インタビュー。後編ではメインキャラクター誕生の秘密や、クライマックス間近の2ndシーズンの展開などに迫っていきます。


(前編はこちら

何か引っかかりのある台詞が欲しかった

―――2ndシーズンから登場したライバル校のドリームアカデミーには、アイドルコース以外に、プロデューサーやデザイナーのコースもあるので、キャラクターの幅も広げられたのでは?
加藤 はい。ただ、1年目の子に比べてキャラが薄くならないように気をつかって、(音城)セイラの「あなたがドなら、私はレ」とか、(冴草)きいの「オケオケオッケー」とかの決めセリフ的なものを入れた結果、ちょっと変わった集団に(笑)。
木村 思った以上の個性派集団になりましたね(笑)。
加藤 後から、「クルクル キャワワ」の(風沢)そらも出てきますからね。ちなみに「クルクル キャワワ」は、そらが歌う「Kira・pata・shining」の歌詞にあったので面白いなと思ってシナリオにも使わせてもらいました。
―――あおい姐さんの「穏やかじゃない」も含めて、印象的な決め台詞のあるキャラが多いですね。
加藤 セイラやきいたちの台詞は、あおいの「穏やかじゃない」がけっこう楽しんでもらえたので、そういう引っかかりのある台詞が欲しいなと思って考えたんですよ。
―――でも、「穏やかじゃない」って中学生はあまり使いそうにない言葉ですよね(笑)。これは、どういうところから発想を?
加藤 「芸能人はカードが命」という言葉を2010年の企画段階に考えた時、バンダイさんの中でも爆発的に評判が良かったんですよ。その事が頭の中にインプットされていて。コメディを作りたいという事になった時、何か引っかかる台詞が欲しいなと思ったんです。あおいの「穏やかじゃない」については、あおいのアイドル博士っぽさや、アイドルの事が好き過ぎて盛り上がってる感じを表せて、引っかかりのある言葉という条件で考えている時に出てきた言葉です。
そういう台詞の裏話としては、きいちゃんの「オケオケオッケー」は、「うそうそうっそー」とかいろんな事が言えるようにしてたんですね。
―――「むりむりむっりー」とかもありますね。
加藤 でも、聴き取りづらい事が判明して、途中からは減らしています(笑)。
木村 いろいろやったけど、「オケオケオッケー」以外は何言ってるのか、かなり聞き取りづらかったんですよね。
―――あのシリーズ好きだったので、ちょっと残念です(笑)。2ndシーズン中盤で、1年以上活動を休止していたトップアイドルの美月が復活します。この展開は1stシーズンの最終回で美月がスターライト学園を去った時から決まっていたのでしょうか?
木村 実は、ゲームの方で美月が半年くらいお休みするという展開が先に決まっていたんです。
―――それも、ゲーム主導の展開だったんですね。
加藤 はい。だから、そのままアニメにも生かそうかなと。それに1stシーズンの最後では、話が終わったと思ったら、もう一つ「え!?」と驚くような展開を入れたいと思っていて。いちごがアメリカへ行った後、美月もいなくなるのは、ちょうど良いかなとも思いました。


ファンをしっかりと見る事ができるのは大事

―――ここからは各キャラクターについて聞かせて下さい。主人公の星宮いちごは、どのように作り込んでいったのですか?
加藤 いちごも、1話を作りながら考えてましたよね。
木村 そうですね。
加藤 もちろん、前向きで明るいというざっくりとしたイメージは共有してはいましたけれど。お弁当屋さんの娘であるとか、弟がいるとかは、作りながらでした。
木村 能動的に動き回る子にはしたいと話していましたね。
―――いちごは天然だけれど、けっして鈍感ではない。そこが独特の魅力に繋がっていると思います。
加藤 それは1話から考えていた事です。いちごの家をお弁当屋さんにした理由とも絡んでいて。将来的にアイドルとして大成していくであろういちごにとって、ファンをしっかりと見る事ができるのは大事なんじゃないかなと。そこは、お母さんと一緒にお弁当屋さんを手伝いながら、お客さんの事をしっかりと見ていたという経験から結びついてる感じ。
だから、天然ではあるけれど、人の気持ちが分からない子ではないんです。
木村 親の七光りって言われないようにとも話してました。
加藤 そうですね。
木村 いちごは物語の中で、キャラクターとしてかなり振り幅があると思うんです。それをぎゅっとまとめてくれたのは役者の諸星すみれさん。
加藤 すばらしいですよね。
木村 いちごは、諸星さんがやってくれているから、まとまって見えているところが多分にあって。本当に、諸星さんと出会えて良かったと思います。
加藤 ある時から、「諸星さんなら」って気持ちを持ちながら作っているところはありますね。
―――いちごも憧れるスーパーアイドル神崎美月は、「アイカツ!」の物語を動かしていく存在でもありますね。
木村 美月はピリッと空気を変えてくれるキャラクターなので、(コメディの中で)シリアスなシーンになっても違和感がない。そこは本当に上手くいったなと思います。
台詞的にはかなりきつい事も言うんですけど、役者の寿美菜子さんがすごく上手く演じてくれるから嫌味にならない。人間味のある温かい温度も持っているキャラクターにしてくれました。美月も本当に役者に助けられたなと思います。
加藤 その逆もあって。美月にコメディっぽい事を言わせても、笑いに転がり過ぎる事なくちゃんとしたシーンの中で笑いを見せられる。ちょっと変わった事を言ってても、美月さんにはなってるんです。
―――最近の展開を観ていると、美月が一番「アイカツ(アイドル活動)」を楽しんでるんじゃないかなって、すごく思います。
木村 それは本当にそう思います。心からアイドルやアイカツが好きで、すごく真面目に向き合ってる。だから、ちょっと笑っちゃうようなデカい事も言うんですけど、美月だから説得力があるというか。ちゃんと真面目にも受け取ってもらえる。そういう振り幅のあるキャラクターになった気がしています。

加藤 その事自体が「アイカツ!」らしいですよね。
木村 そうそう。そうなんですよ。

劇場版は、2ndシーズンの延長線上のエピソード

―――すべてのアイドルについて聞きたいところですが、非常にキャラクターも多いので……。お二人の中で特に印象的なエピソードのあるキャラクターなどはいますか?
木村 みんな、そうなんですけどね……。
加藤 じゃあ、僕は、らいちを挙げておきましょうか(笑)。
―――いちごの弟でアイドル博士のらいちですね。
加藤 らいちの設定も1話を書きながら作っていったところはあるんですけど。ファンとして、ちょっと外野にいる感じとか、書いててすごく楽しいキャラクターになったなと思います。
木村 らいちがいてくれるから、ファン目線の話をしやすいところはありますね。
加藤 アイドルオーラの話(第22話「アイドルオーラとカレンダーガール」)とか自分でも、すごく気に入ってます。
―――らいちが臭いでアイドルを嗅ぎ分けられるようになる話ですね!
木村 あの話、良かったです。

―――監督は、誰か特にエピソードのあるキャラクターはいませんか?
木村 いっぱいいるんですけど……。これはちゃんとウケるのだろうかと一番不安だったキャラクターは、(藤堂)ユリカなんです。
―――意外です。自称600歳の吸血鬼というキャラ設定とか、個性は際立っているので。
木村 他の子はみんな、面白く見えるだろうと思っていたんですけど。ユリカは正直、分からないところがありましたね。キャラづけとしては、出オチみたいなところがあるじゃないですか。
加藤 ある意味、ネタキャラですよね。
木村 それで良いとも思っていたんですけどね。実際には、僕らが思っていた以上にウケた。子供が本当に大好きなんですよ。
―――ユリカ様、子供人気が高いのですか? では、ファンのリアクションの大きさから、描き方に変化が出たりも?
木村 いえ、キャラクター自体は最初から固まっていたので。最初から使いやすいキャラクターではあるんです。
加藤 ワンショットで使いやすい子ですよね。台詞一言だけでも、ちゃんとユリカらしく聞こえるので。あともう一つは、「この時は、無理して(吸血鬼)キャラを作ってるんじゃない?」みたいな気持ちの揺らぎなども描きやすい。すごく良いキャラになってくれたなという感じです。
―――ユリカ様は、パートナーのかえでとのエピソード(第79話「Yes! ベストパートナー」)や、ファンとのエピソード(第89話「あこがれは永遠に」)のような感動的なお話が回ってくるキャラという印象があります。
木村 元々、二面性のあるキャラとして作ったので。そこを面白く見せられる子だなと思います。
加藤 本当、素直な良い子で。強気な吸血鬼キャラを演じ続けている真面目さもあって。良い話が生まれやすいキャラクターですよね。
木村 ユリカだからできる話や、言える台詞もあるようなキャラクターになりました。
―――2ndシーズンの中盤では、いちごに憧れる新人アイドル大空あかり、美月のパートナー夏樹みくると、新キャラクターが連続して登場しました。この二人は終盤に向けてもキーとなるキャラクターなのでしょうか?
木村 そうですね。後半戦も残り少しなんですけど、特にみくるは、美月と一緒にキーになるキャラクターです。
加藤 あかりは歌もダンスも全然できないと思っている。そこは今までのキャラクターの中には全然無いところ。そのあたりがどうなっていくのかも後半戦の一つの見所になると思います。
―――スターライト学園とドリームアカデミーのアイドルたちは、引き続き、美月とみくるのユニット「ダブルエム」に挑戦していく?
木村 そうですね。終盤に向けては、主にいちごとセイラに集約していく展開になっていきます。
―――楽しみにしています! 12月13日(土)に公開される「劇場版アイカツ!」の事も非常に気になっているのですが……。
木村 まだ、ほとんど何も言えないんですよ。言えるのは、いちごがメインのステージをやりますって事くらいですかね。
加藤 あとは……当然、2ndシーズンのラストまでの流れの延長線上にあるエピソードなので。まずは2ndシーズンを最後まで楽しんで頂ければ、という大人のコメントを(笑)。
―――ありがとうございます(笑)。では、最後に「アイカツ!」ファンへのメッセージを。
加藤 たくさんの方に楽しんで頂けている事もすごく伝わってきていて。僕たちも改めて「アイカツ!」の魅力というか、「アイカツ!」でしかできない事を発見しつつ、作っています。これからも初心を忘れず、常に前向きになれる作品を作っていきたいと思いますので、ぜひ今後も期待して、楽しんで頂きたいです。
木村 むしろ僕も観てくれている人たちに励まされながら作っている感じです。知り合いから、子供さんが喜んでいるという話を聞いたり。街の中を歩いていて「アイカツ!」の話をしてくれている子供に出会ったりもするんですよね。そういう事は、今まで経験した事がなかったし、本当にびっくりするような嬉しい事。もちろん、子供さんだけじゃなくて、お父さん、お母さんや、いろんな方が純粋に楽しめる作品を作っていきたいと思っています。これからも毎週、楽しみにしながら観て下さい。
(丸本大輔)

この冬、「アイカツ!」がついにスクリーンデビュー!

「劇場版アイカツ!」
2014年12月13日(土)冬休みロードショー

大人気作「アイカツ!」がオールスターキャストによる完全オリジナルストーリーで、劇場アニメ化! 8月9日(土)には、「劇場版オリジナルアイカツ! カード」付の前売り券も発売! 詳細は映画公式サイトで。

企画・原作:サンライズ 原案:バンダイ
総監督:木村隆一 監督:矢野雄一郎 脚本:加藤陽一 キャラクターデザイン:やぐちひろこ 副監督:小山田桂子
アニメーション制作:サンライズ 製作:「劇場版アイカツ!」製作委員会(サンライズ バンダイ 東映 ハピネット 電通 テレビ東京)
配給:東映
映画公式サイト:http://www.aikatsu-movie.net/

「アイカツ!」1stシーズン Bluーray BOX 1(2014年11月5日発売予定)

「アイカツ!」1stシーズン Bluーray BOX 2(2015年2月3日発売予定)
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